93~道は厳しい~
およみいただきありがとうございます。 居眠り女主人公、プラム郷で、のんびりしています。
「お嬢さま、コレは何ですか」
今、私は、メイちゃんに指摘されたものを見る。
うん。
なんだろうね、これ。
おかしいな。
「いいですか、お嬢さま。食材を無駄にしてはいけません。ましてやプラム郷の住人が一生懸命育てたものです」
「はい、ごめんなさい」
見るも無残なこれは、私がダメにしたおやつだ。
話しは、少し前にさかのぼる。
いつものように、広場にテーブルと椅子を出し、メイちゃんの作るおやつ待ちをしながらお茶を飲んでいた。
ここの住人はみんなあくせく働いているけど、私はのんびりだ。
率先してやらないといけないことって、そうそうないからね。
メイちゃんやシツジローくんに任せてる。
そこへ、獣人一家の妹のほう・・・名前は忘れたが、が来た。
兄もお手伝いで忙しいから、つまらないのだという。
「おじょーさまもひとり?」
「ん?どうしたの?」
「みんないそがしいから、ひとりであそんでいなさいって」
「そっかー。それならここで一緒にメイちゃんのおやつ待とうか」
椅子をもう一脚出す。
妹ちゃんはうれしそうによじ登ってきた。
そこにメイちゃんが、私と妹ちゃんの分のおやつを出してくる。
私には茶請け程度の量のクッキー。妹ちゃんにはさらにいっぱいのクッキーだ。
いいタイミングだ。よくわかっているようだし。
「メイおねえちゃんのおやつ、うれしい」
そうでしょう、そうでしょう。
メイちゃんの料理はピカ一だからね。
小さいとはいえ、獣人らしく、食欲は王政のようだ。
すぐに自分の分を食べ終わったらしい。
私が食べている分も見ている。
「たべなさい」
渡すとすぐほおばった。
うれしそうだ。
今まで六にご飯も食べていられなかったらしく、まだ体が小さいけど、食欲はすごいな。
あっという間に皿が空っぽだ。
「たりない・・・」
そうだよね。
子供とはいえ、獣人には少なかったのか。
でも、メイちゃんは、ほかの作業に移っているし、どうしようかな。
「おじょーさまは、おりょうりできないの?」
「ん?」
「いつもたべてるだけだから、おりょうりできないの?」
なんてことを言うんだ、この仔。
私は料理スキルは低いだけで、できないわけではない。
しかも、この前、少しずつ手伝った成果で、スキルレベルが3になったんだぞ。
料理のスキルが3になると、普通の料理ができるようになる。
たいていの主婦の奥様方は、3とか4だ。
つまり、その辺の奥様方並みにはできるはずだ。
「私にもできるわよ」
「ほんと?」
うっ。
そんな目を輝かせても、困るわ。
メイちゃんほどおいしいのは期待されても困るし。
「そうね、妹ちゃんもいずれはお手伝いとかでお料理も作るでしょう。今からでもやりましょうか」
年長者の私がついているのだから、大丈夫よね。
「ナナだよ」
「ん?」
「わたしのなまえ、ナナ」
「そうかー、ナナちゃんかー」
よし、覚えておこう。
しかし、獣人の子供はかわいいな。ああ、頭撫でて、もふりたい。
「今から、ここに、調理器具とか出すから、ちょっと待っててね」
空間魔法から出し、セット完了。
簡単なものでいいよね。
おやつ・・・
パンケーキかな。
これならナナちゃんにも混ぜるとか手伝わせることできるしね。
焼くのは私の仕事だね。
材料は、家に戻って取ってきた、小麦粉と砂糖と卵。
ベーキングパウダーがないけど、まあいい仕方ないでしょ。
「まずは、このボウルに卵を割り入れます」
ナナちゃんと一緒にやる。
卵でかいのよね、ここの。
まあいいか。
コンコン、グシャ・・・
あれ?
おかしいな。
きれいに割れないな。
「おじょーさま・・・からがはいってる」
うん。
卵の殻がほぼ粉みじんになってはいりこんじゃったよ。なんで?
「か・・・カルシウムよ」
「かるしうむ?」
「そうよ。健康にいいのよ」
ごまかしておこう。
「つぎは、これをまぜまぜします」
泡だて器でいいよね。
ナナちゃんに渡すと、一生懸命ぐるぐるしてる。
かわいいな。
「そろそろいいかな?そしたら、小麦粉と砂糖を入れます」
あ、グラムはかってきてないや。
適当でいいか。
・・・・
なんでかボウルに、こんもりしちゃったけど、卵も多いし、何とかなるよね。
「これもまぜまぜするの?」
「そうだよ」
今度はへらを渡す。
一生懸命やっているけど、おかしいな。
粉っぽさが消えないな。
まあでも大丈夫でしょ。
「これをフライパンに流し込んで、焼きます」
コンロに魔法で火をつけて、豪快に流し込めなかった。
かたいな。
まあ、ヘラで入れればいいや。
「あとは焼けるのを待つだけだよ」
「わあい」
待つこと数分。
ちょっと焼き上がり遅いな。
強火にするか。
魔法で火を強くして、あ、そうだ。
ふたをしておけば早くできるよね。
フライパンにふた。
・・・なんだか、黒い煙が上がってきているな。
焦げ臭いし・・・
「おじょーさま、へんなにおいする」
「うん・・・もう焼けたかな」
焦げている感じがするけど、まあ最初はこんなものだよね。
火を止めて、まだあついから少し待とう。
「もうちょっとだよー」
「わあい」
そろそろいいかな。
ふたをあければ、おいしいパンケーキだ。
・・・
「お嬢さま、コレはなんですか?」
「ごめんなさい」
そして、冒頭に戻る。
おかしいな。
何が間違ったんだろう。
そして今、なぜメイちゃんに怒られているんだろう。
ナナちゃんは泣いちゃってるし。
パンケーキが、焦げてフライパンにくっついているし、どう見ても食べられるものじゃないし、よく見ると中は生焼けらしい。
パンケーキは?
どうしてこうなった?
「お嬢さまはお料理をしないで下さいと、あれだけ言い聞かせましたよね」
外だから、いいじゃん。
おうちで爆発させたわけじゃないし。
「二度と!いいですか?二度と私がいないとこでの料理は禁止です!」
「はい・・・ごめんなさい」
料理の道は厳しいな。
スキルレベルが上がっても、できないものはとことんできないようだわ。
メイちゃんが、おなかをすかせているナナちゃんのためにパンケーキ作ってくれた。
ナナちゃんも泣き止んだし、よかったよ。
・・・材料がそろっていなかったのも原因だよね。
ミルクがなかったんだね。
水でもよかったと。
なるほど・・・
メイちゃんのいないところで作るのは禁止は、守ろうと思いました。
ちなみに、失敗作のパンケーキはスライムのご飯となりました。
ごめんよ、スライム。
お読みいただきありがとうございました。毎週水曜日更新しています。
誤字脱字報告、評価も、いつもありがとうございます。
全開の続きのミュゲのこと書こうと思いましたが、今回は、急に思いたって、おやつになりました。
アイリーンの料理スキルはまだまだです。




