92~集落も少し動き出した~
お読みいただきありがとうございます。
集落の発展も、春になり、少しずつ始まります。
雪が解けた森は、落ち葉ですごい。
だけど、この腐葉土が必要だ。
畑の肥料の一つだと思う。
私が来ているのは、畑のためじゃなく、この集落の森でとれるだろう、植物のため。
ここには、桃リンゴの木がいくつかある。
冬の間は実っていないけど、春になって実りがあるはずだし、もう一本ほどは集落に持ってきておきたい。
集落の宿屋にでも植えておこうと思っている。
この集落の名物料理の一つにでもなればいいと思うから。
私と一緒に来ているのは、キドナップバブーンたちのボスと、シツジローくん。
ボスが案内してくれている。
いつも食べているから、わかるのだという。
今までの冬の間は、どうしていたのだろうか。
野生のことはよくわからない。
活動している魔獣もいるから、強いほうがかっていたのだとは思いたい。
通る人間もいないからね。
目当ての木がすぐに見つかり、安心する。
やはりまだ実を付けてないけど、キドナップバブーンにはわかるのだね。
魔力を使って引き抜く。
空間収納して、あとは、帰るだけ。
でもせっかくだから、周りの植物も採取しておこう。
鑑定をかけると食べられそうなものや、錬金術に使えそうなものが生えているし。
・・・ヨモギがある。
前の時は気づかなかったし、この森に入ることってそうそうなかったから気づかなかった。
ヨモギがある。
・・・もち米はない。
あ、いや、ヨモギってほかに使えるよね。
なにかな・・・
ああ・・・
コメが欲しいよ。
一応採取。
いつかコメが見つかれば、使えるしね。
パンに練りこんでもいいよね。
料理はメイちゃん担当だから、メイちゃんに教えればいいよね。
あの料理レシピをアップした人は、本当に優秀だと思う。
あ、おなかがすいた。
「シツジローくん、ボス、帰ろうか」
メイちゃんのご飯が食べたいわ。
お昼過ぎだしね。
集落、もとい、プラム郷。
ジャムさんが、宿屋の近くの土地で、何か住民に指示している。
「ジャムさんどうしたの?」
「サカイ様から連絡があって、冒険者ギルドを建設するための予定地を、地ならししておいてほしいそうだ」
「そうなんだ。頑張って」
「お前もやってくれよ」
「おなかすいたからヤダ」
この集落の住民のための発展の一つなんだから、住民のみんながやればいいよ。
地ならしが終われば、職人さんたちも来るだろうし。
「シツジローさん、手伝ってくれ」
「お嬢さまが許可をくださいましたら」
しれっとしているけど、自分から手伝う気はないようだ。
「あのね、ジャムさん。シツジローくんが手伝えば、あっという間に終わるけど、それじゃ住民の魔力向上にはならないんだよ?やらないといけないよ」
ジャムさんもやればいいんだよ。
それだけの話だし。
「たしかにな。すまなかった」
わかればよろしい。
私はメイちゃんのご飯のほうが大事。
「お前にも通信がきてたから、うちに寄ってくれ」
「なんでジャムさんの家に?」
「集落の長の家だからな。本来なら、役所みたいなとこに置くけど、この集落にはないからな」
自宅兼仕事場ということなのかな。
仕方なくよると、通信玉とかいう、水晶を渡された。
魔力を流せば、音声が聞こえるらしい。
『アイリーンさん!聞こえてますー?親の許可取りました!』
それだけ入っていた。
短いな。
ああ、でもこれって確か・・・サカイさんの姪っこのえーと・・・花の名前の子。
えーと・・・スズランだったかな。
こちらに来るのかな?
がるがるさんもよく許可出したな。
この子の住む場所も考えないとか。
いくつか作ってある空き家でいいよね。
若い人が入ってくれば、それだけ活気づく。
問題も山積みだけど、これからの集落が楽しみだな。
採取してきた桃リンゴの木は、宿屋の庭に植えてみた。
栄養剤も振りまいたし、根付くだろう。
池も作ったから、水の供給もできるしね。
家に帰って、メイちゃんのご飯。
そのままお昼寝。
今日はよく動いたほうだし、もうしばらくは動きたくないけど、頑張ろう。
ああねむい。
お読みいただきありがとうございました。毎週水曜日更新しています。
誤字脱字報告、評価もいつもありがとうございます。
アイリーンを案内したということで、キドナップバブーンたちも、メイちゃんから、ご飯もらいました。メイちゃんのご飯は、人間にも魔獣にも好評です。




