89~サカイ様の頼み事~
集落に獣人の親子が住むことになりました。名前も何となく決めました。ほかの人たちは名前ないのにね。今回、少々短めです。
獣人の親子が集落に引っ越してくることになった。
とはいえ、連れてくるのは私たちなんだけども。
我が家のポータルを通ってすぐだ。
外ではジャムさんが迎えてくれた。
詳しいことはジャムさんが話してくれるだろう。
マークは、妹が元気になったと喜んでいた。
二人も新しい服に着替えてうれしそうだしよかったよ。
あんなぼろ服じゃ、雑巾のほうがましかと思ったよ。
家に案内すると、こんなきれいな家は使えないとか言ってたけど、獣人親子の家なんだから、使ってもらわないと困るな。
獣人一家は、ダンゴローさんというらしい。
ご主人の、ダンゴローさん、奥さまのチトセさん、息子のマークと、娘のナナ。
四人家族だ。
・・・なんで、獣人が日本人みたいな名前なのかな?
どう見ても、西洋狼ですよね、お二人とも。
狸獣人が、ジューノって名前なんだけど?
このあたりは運営さんに問い詰めたいとこだわ。
まさか土下座文化もそのせいじゃないでしょうね。
獣人は魔法力が少ないらしいけど、子供なら、どうにか増やせそうだな。
適正魔法は何だろうか。
前に来た親子の子供たちとも仲良くなれそうだし、よかったよ。
子供同士って偏見ないよね。
まあ、ここにいるってことは偏見持ってたら私が追い出しちゃうかもだけど。
そして、今は、私の目の前には、サカイ様。
王都中央部の私の家だ。
メイちゃんが、かいがいしくお世話している。
サカイ様が急に、何のようだろうか。
「ご無沙汰しております、アイリーン様」
「様はやめてください、サカイ様。…それで何の用ですか」
まるで、我が家にいるかのようにくつろいでるわ。
湯飲み茶碗に入れられた紅茶をおいしそうに飲んでるし。
緑茶があるってわかったから作ったのに、肝心の緑茶が手に入らないわ。
「実はですね、あと3組ほど、引き取っていただきたい家族がいるのですよ」
ひとごこちつきながら話し始める。
隣国から亡命してきた家族で、血族的なトラブルを抱えているらしい。
この国では問題がないが、隣国に見つかると、殺されてしまうかもしれない。
サカイ領でかくまっていたが、隣国とは国境が近すぎるのもあるので、王都のほうに住まわせたいのだそう。
一般市民なので、特別な場所ではなくていいし、でも安全な場所がいいということで、あの集落なら目立たないし、いいのではということらしい。
もし見つかることがあっても、王都内なので手を出すのは難しいし、集落の守りは安全そうだからとのこと。
確かに、内外の防犯は、あの垣根と魔獣で何とかなりそうだし、住民の居住区には外部の人間は入れないようにした。
だが、あそこは、老人ばかりだ。
何かのトラブルがあって、住民がひどいことになるのは困る。
「うーん・・・」
「ダメですかねぇ。名前も変えさせますし、魔力量も多いから、役に立つと思うのですよ。・・・それに、一組は、プレイヤーの養子の子孫なんですよ」
またか!
どうしてプレイヤーは養子取っちゃうかな?
後々のことも考えろよ。
「錬金術も、基本はできるようです。ポーションも、下級くらいなら、理論は知っているようです」
「錬金術の基本?」
「スライム核石とかいうのが作れるとか」
え、ほんとに?
あれは確かに、基本中の基本。
スライム核を取るグローブがないときついけど、その辺りはどうなのだろう。
「プレイヤーから受け継いでいるものがある?」
アバターアイテムを持っているのだろうか。
「グローブがあるそうです。そのおかげで、スライム核石が作れるのだとか」
「・・・わかった。引き受けましょう。後の二組は・・・ああ、やっぱりいいです。事情聴いても興味ないし」
プレイヤーの養子の子孫って、結構いるんだな。
もしかしたら、サカイ様自体は、隠していないのだから、それを頼って、プレイヤーの養子の子孫がサカイ領に行くのかもしれない。
「来週にはこちらの王都に連れてきますので、お願いします」
「わかりました。それまでに、集落への連絡と家の準備もしておきます。言っておきますが、優遇とかはしませんから」
「もちろんです」
お互い頭を下げる。
「ところで、アイリーン殿、この前食べたシルコというのはもうないのですかな?」
気に入ったらしいが、もうないんだよ。
食べつくすように食べるんだもの、ここの人たち。
私のお汁粉。
「またそのうち、どこからか手に入らないと、作れません」
「残念です」
ほんとに残念がっているのかわからないけど、プラントグレープはお土産に持たせた。
季節ものじゃないんだな。
シツジローくんに今度来る三組の集落への説明は任せよう。
メイちゃんもどうにか言ってくれるだろうし。
急に人が増えることで、集落の住民が、ストレスにならないといいな。
キドナップバブーンたちとも相性がいいといいんだけど。
人を増やすのは、気を遣うな。
精神疲れです。
おやすみなさい。
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