81~まだこれからご飯なんだね~
いつもお読みいただきありがとうございます。今週もまだ続きです。
暗い。
冬だから、夕方も早々に、真っ暗だわ。
外だからものすごい寒いし、水魔法使いと土魔法使いの住民が、広場の雪は溶かしてくれていたみたいだけど、それでも、まだのこってる。
メイちゃんが、窯で牛を焼いてくれているから、まだ、ご飯の時間にならないな。
そのほかにも、住民のおじいちゃんおばあちゃんが、椅子やらテーブルやらを用意してくれている。
ジャムさんも手伝っているな。
私はやらない。
暗くなると最近眠くなってくるんだよね。
でもおなかすいているから、早くご飯にならないかな。
「ここは・・・」
スーベニア・サカイ様は、初めてじゃないみたいだけど、変な表情だ。
「どうかした?」
「住民がこれほど少ないとは・・・」
「ああ、私が初めて来たときは、ここは病が蔓延していてね。少し奥に行くと、お墓があるんだよ。間に合わなかった人が結構いたと思う」
新しい墓がある。きっと病に倒れた人だろう。
病だけでなく、飢えてもいたのだ。
「それにここは、若い人が皆、出て行ってしまったらしいですよ。人がいないのよ」
それでも、家族がここに来てくれたから、少しは増えたのだけど。
未来がないのは今も変わらない。
「スーベニア・サカイ様は、ここのではないんでしょ?知らなくても仕方ないよ」
王都内は王族の管轄だ。
スーベニア・サカイが知らなくても仕方ないと思う。
自分の領では、こんなことないようお願いしたいものよ。
まだ焼けない牛のにおいが鼻をくすぐる。
そうだ。
イッセーシュリンプも出さないと。
「メイちゃん、これも焼いておいて」
「かしこまりました」
海鮮類を出す。
おいしい海鮮も焼いて、早くご飯にならないかな。
食事を作っている合間に出してくれるお茶だけじゃ、寒いのよね。
キキキッ
ん?
キドナの声だ。
帰ってきたのね。
「ま・・・魔獣が」
スーベニア・サカイ様には説明してなかったか。
サカイが説明しているからいいや。
「お帰り、シツジローくん、どうだった?」
「傷は癒してきました。ボスが説得して、こちらに来ましたので、40頭くらいでしょうか・・・」
結構いたんだね。
「それと、途中でどうやらこのキドナップバブーンの巣を襲った冒険者がまだうろついていましたので、眠らせて連れてきました」
深い眠りの魔法なのだろう。
後ろのキドナップバブーンに引きずられている5人の冒険者は、起きる気配がない。
「その辺に捨て置いて。それより、大丈夫なの?こんなにいて・・・」
「ボスとキドナが説得してくれまして、ボスの奥方がまとめてくれたようです」
どのコミュニティも女が強いのだね。
「ボスの奥さんて、どのこ」
「あの、キドナがくっついているキドナップバブーンです」
見ると、キドナとさらに小さな子がくっついているメスざるがいる。
「こら、キドナ!迷惑かけないの!」
どう見ても、その小さいこのお母さんでしょうが。
キドナのお母さんは私がやっちゃったんだけどさ。
「すみませんね。そしてありがとう。ここの住人たちと仲良くしてほしいよ」
私の言葉が分かるのか、キドナップバブーンたちはうなずく。
集落の住民も全くおびえてないしね。
おじいちゃんいわく、長生きしているので、いまさら何があっても動じないようです。
シツジローくんは、そのあと、ジューノさんたちを呼びに行ってくれた。
ほんと気の回る執事だわ。
「そろそろごはんできますよ」
メイちゃんの声で、やっとご飯だ。
キドナップバブーンたちも、一緒にご飯。
寒いけどなんだか楽しい。
そのうえ、おいしいよ。
トライデントタウロス。イッセーシュリンプ。
いつも狩るだけの側だったけど、こんな味なんだね。
スーベニア・サカイ様が、イッセーシュリンプばかり食べているな。
ほんとに好物のようだわ。
牛があっという間に骨だけになったけど、その骨も、キドナップバブーンたちにはごちそうらしい。
食べているよ。
「しかし、こんな場所で、トライデントタウロスをたべられるとは」
「とってきたからね。おいしい」
欲を言えば、もう少し違うものも欲しい。味が単調になってきた。
まだ残っている調味料で、違う料理も作り始めるメイちゃん。
私は作れないからね。
「あとは、シャイニーグレープでの締めのデザートだよね」
汁粉も作ってもらったけど、どうせなら食べないとね。
肉と海鮮と果物。
たくさん食べたわ。
「ここはすごいとこですな」
「なにが?」
「魔獣を受け入れてしまう。ブルームに聞きましたが、いやし草も作っておられるという」
「国営になったらいやだけどさ、ここを終の棲家としている人たちのためにはね」
「なるほど・・・」
何か考え込んでいるけど、そろそろご飯も終わりだし、連れて帰らないとだよね。
イッセーシュリンプがまだあるし、手土産に持たせるかな。
「スーベニア・サカイ様、そろそろ帰る時間ですよ」
「そうですな」
運営さんと一緒に送っていく。
シツジローくんとメイちゃんは片付けとキドナップバブーンたちの過ごしてもらうためのおうちの片づけ、ジューノさんたちを送っていってもらう。
40頭は、私の家のほうにはちょっと無理だものね。
ガラスハウスに行ってもらおう。
早めに住める場所作らないとね。
私も今日はもう、おなかいっぱいだから寝よう。
おやすみなさい。
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御身体を大事にして、よいお年をお迎えください。




