80~夕方なのにせわしない 2~
いつもお読みいただきありがとうございます。居眠り女主人公、一日が長いですね。
全開の続きです。
メイちゃんが戻ってきた。
ジューノさん夫妻はもう少ししたらまた迎えに行くという。
王国祭のため、今は門前街が少し暇なのだそうだけど、まだ店をやっている時間だからだとか。
「それなら、準備に入りましょう」
牛の丸焼きとイッセーシュリンプがメイン。
ジャムさんに広場を提供してもらう。
メイちゃんが丸焼きのための窯を魔法で作っている。
丸焼きのイメージが違ったけど、くくってぐるぐる回すのを見るのはちょっと嫌だからいいか。
「何頭くらい食べるかな?」
「おい・・・何頭いるのかわからないが、牛一頭でも、この集落の人間だけじゃ、多すぎるぞ」
ジャムさんの言う通りかもね。
年を取ると食欲減退だものね。
私も30過ぎたら食欲がなくなってきた。
油ものってちょっと…になったし。
ジャムさんとサカイさんには通じない気がするけどね。
「キドナップバブーンもいるし、二頭は焼きましょう」
「ああ、魔物がいるからな。いいだろう」
窯が大きいものが出来上がって、火魔法使いが手伝って、中に火をつけている。
高温で蒸し焼きらしい。
「師匠・・・朝からいないと思ったら、なんです、これ・・・」
「ん?トライデントタウロス。見たことないの?」
「ありませんよ、そんな高レベルの魔物!」
何か怒っているな。
年を取って怒りっぽくなったのかな?
「10頭くらいとってきたから、一足早い王国祭ということで、集落で食べようと思ってね。サカイも招待してあげたんだから、感謝しなさいよ」
「いやいやいや・・・おかしいですよ。本来なら、こんな魔物は、王城での晩さん会でしか食べないと聞きますよ」
「ああ、そうなんだ?スーベニア・サカイ様も、呼ぶ?」
そうだよね。
せっかくだから呼んであげよう。
プラントシャイニーもおすそ分けしたいものね。
「サカイ、呼んできて」
「いや、そんな急には来られないかと・・・王都の屋敷にはおりますが」
「よんできて」
命令だよ。
「わかりました。一応お伺い立ててみますが・・・」
「これなかったら、サカイも来なくていいよ?実はこんなものもとってきたけど、食べられないね」
イッセーシュリンプを出す。
「それはイッセーシュリンプ」
さすがにこれはしっているようね。
「それは、おじいさまの大好物です。めったに獲れないらしく・・・」
「いっぱいとってきてあるから、食べ放題」
シャイニーグレープと同じくらいあるのよね。
三桁超えてたし。
「幼いころに少しだけいただいたことがあります。とても美味でした」
やっぱりおいしいのか。
私は食べたことないけど。
「ああ、でも、サカイさんを戻すのに、メイちゃんは今、食事の準備中だし、シツジローくんもいないし・・・」
運営さんは返ってきたばかりだから、あまり働かせたくないな。
今日だって、朝からいろいろ連れてってもらったものね。
私が行くしかないか。
「お嬢さまどこに出かけるつもりですか」
私が立ち上がったことに気付いたメイちゃんが声をかけてくる。
「スーベニア・サカイ様を迎えに」
「お供します」
「だめだめ。メイちゃんはお料理作ってくれないと」
「お嬢さまを一人で出かけさせるわけに参りません。サカイさんでは心もとないです」
おおう。
サカイ、うちのコたちからの信頼低いな。
「せめて、デュース様をお連れになってください」
「え?運営さんは今日はいっぱい動いてもらったから、休ませないと」
「それならば、やはり私が」
メイちゃんの過保護。
困ったな。
「一緒に行こう」
運営さん、いいの?
つかれてない?
「デュース様がご一緒ならば安心です。お嬢さまをよろしくお願いします」
あれ?
もしかして、私が一人で出歩くのが心配なの?
私、ものすごく強いのに・・・
<アイリーンのところのドールは心配性だな>
わたしもそう思う。
「じゃ、行きましょうか。早くしないと暗くなるしね」
「ではここから貴族街まで転移しようか」
それ、神様の力であって、プレイヤーの力じゃないから。
ダメでしょ。
<プレイヤーによって、違うことができると説明すればいい>
そういうものなのかな?
それならそれでいいけど・・・
「サカイ。今から、その貴族街の入り口に飛ぶ。転移酔いは大丈夫か?」
「転移酔いは致しません、デュース師匠」
「ではいくか」
一応、ほかの人に見られると困るということで、家に入る。
運営さんがすぐに転移させてくれる。
あれ以来一度も来たことないけど、ここはサカイ家、の門前。
サカイの姿を見て、すぐに門の警備の人が、執事さんを呼びに行った。
「ブルーム様、いかがなさいました」
「あー・・・師匠がね、おじいさまにご用があると・・・大丈夫かな?」
「しばしお待ちください。とりあえず中へどうぞ」
応接室へと通された。
外でまたせるのなら、さっさと帰りたくなっちゃうしね。
サカイ様はすぐにやってきた。
「ようこそ、アイリーン様、デュース様」
さま漬けはやめてほしい。
私たちは一般人だ。
「スーベニア・サカイ様、実は今日はサカイ様をお誘いに来たのです。私は世話になっている集落で、ちょっとした食事会をするのですが、もしよろしければ、サカイ様もいかがでしょうかと。もちろんお忙しいのが承知しておりますけれど」
ああ、言葉がめんどくさい。
もう、丁寧な言葉使うのなんて、忘れちゃったよ。
「なんと!それはぜひにも!」
「ご当主様、いけません。もうすぐ王国祭です。その準備があるではないですか」
「やっておいてくれ。いいか?覚えておくように。陛下よりもプレイヤーのほうがはるかに重要なのだ。しかもこの方々は、先祖スーベニア・サカイのご友人。その方のお誘いは何よりも優先すべきことだ」
「しかし・・・陛下への贈り物もまだ届かないことですし・・・」
なんかグダグダ言ってるな。
「おくりもの?」
「陛下のご生誕のお祝いに冒険者に頼んでいるものが、まだ届きそうにないのです」
あらら。
間に合うといいけど。
「なにをおくるの?」
あ、聞いていいことなのかな?
「オークキングの毛皮ですな」
「何そのザコの毛皮」
雑魚でしょ。
そんなので喜ぶの?
それなら、シャイニーグレープのほうがいいじゃない。
めったにないものだし。
「スーベニア・サカイ様、いいものありますよ」
サイニーグレープを10房ほど出す。
素敵な金色の輝きだ。
「こ・・・これは・・・」
「プラントシャイニーグレープです。よろしければ、これを」
「いいのですか!」
「もちろん。・・・時間経過なしのかごに入れておけば、新鮮なままですよ」
「ありがとうございます」
ものすごい感謝されてる。
かごも、前の時のがあるらしい。あげたのは中身だけだったか。
執事さんが、すぐにかごを持ってきて入れている。
あのかごごとあげちゃってもいいと思うのだけどね。
「贈り物のためのかごをすぐに手配いたします。・・・行ってらっしゃいませ、ご主人様」
連れてっていいらしい。
え?この人って、貴族だよね?
確か高位の。
護衛の人とかいないのかな?
「さあさあ、行きましょう。何、戻ってこなくても、息子や孫息子がこの家でやれますから」
「ふつうに帰しますよ。・・・行きましょう」
いけそうかな?運営さん。
<大丈夫だ>
「スーベニア・サカイ様は転移酔いとかしませんか?」
「ここに来るときは、たいてい転移陣を通るので、慣れてますよ」
そうなのか。
ん?
転移陣?
「先祖サカイが残していったもので、サカイの養子にした子供の血筋ならば、だれでも使えるのが、屋敷の奥にあります」
マジか。
スーベニア・サカイ、なかなか考えたのだね。
サカイさんは使ったことがなさそうだけど。
「おじいさま、その存在は初めて知りましたよ!」
「家を継ぐ者にしか教えないが、お前はアイリーン様の弟子だから、大丈夫だろう」
このおじいちゃん・・・
まあいいか。
「それじゃこのまま行きますか。外は寒いから、防寒着着てください」
「少々待っててくだされ」
防寒着のスーベニア・サカイ様も交えて転移。
集落はほんとに寒い。
「ここは・・・」
「私がお世話になっている集落です。もう雪が積もっていますけど、一応王都内」
「門前街から二日ほどのところにある集落です」
「ここが・・・」
何か知っているのかな。
まあいいや。
ジャムさんがやってきて、スーベニア・サカイ様と話をしている。
まだシツジローくんも戻ってないし、ご飯もできてない。
ああもう真っ暗だな。
お読みいただきありがとうございました。毎週水曜日更新しています。
誤字脱字報告、評価、ありがとうございます。
12月も後半。風邪をひかないように気を付けたいですね。
年末って忙しい。




