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ワールド・ガイア  作者: 水野青色
79/281

79~夕方なのにせわしない~

お読みいただきありがとうございます。

居眠り女主人公、寝てません。前回の続きです。


 雪かきもしないといけないだろ集落も、もう雪が積もってた。

そんなに深くはないけど、固まったら滑るよね。

今までって、ジャムさん一人でやっていたのかな。


 水魔法使える人たちが、各家の玄関前の雪はどけてくれるらしい。

今までもそうやって生活してきたそうだ。

土魔法使いの人たちが、乾かしてくれる。

私が借りている家も、雪かきされていた。

でも、雪下ろしはどうしよう。


「屋根の雪は火魔法と水魔法で何とかなるから安心しろ」

「そうなのね。よかったよ」

「それより今日はどうした」

「初雪が降ったら王国祭なんでしょ?こちらは雪が積もっているし、一足先に王国祭やろうと思って」


そのためにトライデントタウロスを、狩ってきたのだし。

ジャムさんに会場を用意させよう。


そうだ。

ジューノさん夫婦も呼んだらいいかな。


「シツジローくん、メイちゃん、ジューノさんたち呼ぼうと思うのよ」

「かしこまりました。お連れします」


あとは・・・


「サカイは呼ばないのか」


ああ、忘れてたわ。

運営さんはよく覚えているな。


「どちらかはサカイさん迎えに行ってきて」


二人が去るのを見る。


「運営さんは誰か呼びたい?」

「知り合いがいないな」


そうなんだよね。

私たちって、こちらに知り合いってほどの人って、そういないのよね。


「拠点でフルーツとかもとってこようかな。ガラスハウスにあったよね」

「あるな。どうせ会場は広場だろうし、メイが戻ってこなければ支度もできないだろう、行っておいで」


運営さんに見送られて、拠点に行く。

ポータルは便利よね。


先ほども来たけど、やはり寒いな。


外に出ると、プラント母さんが、キドナに分け与えながら、トライデントタウロスを食べていた。


「プラント母さん、おいしい果物持っていきたいの」


ガラスハウスも任せているから、おいしいのは選別してくれるよね。


ぬっと、弦が伸びてきた。

そこには、なぜか、プラントルビー。

ん?

輝きが違う。

この前もらったのより、少し大きい?


「鑑定」


プラントシャイニーグレープ


 王国一つを飲み込むほどの栄養を蓄えた、災厄級のプラント種から取れるといわれている、幻のグレープ。

 ルビーのように赤いが、黄金の輝きを放つ。

 ものすごい甘い。


おお!

すごい奴だ。

甘いんだ。

楽しみ。

しかも、いっぱいある。


ほかの弦が、プラントシャイニーグレープを取っては、目の前に積んでいく。

もちろん、ガラスハウスの果物もだ。


プラントシャイニー、三桁収納できちゃったよ。

そんなにあるの・・・

プラント母さんは、災厄級のプラントなんかじゃない、気の優しいプラント種だけど、ここでいっぱい魔獣を食べていたんだね。


「かあさん、ありがとう」


イッセーシュリンプを数匹おいておく。

海のほうの食材は、母さんには縁がないからね。


「キドナ、森の近くの集落に行くけど、来る?」


キキッ


キドナが私の肩にのる。


「母さん、キドナ連れていくね」


触手の弦になぜられて、拠点を去る。

いいものいっぱいだね。


集落に戻ると、なぜか外が騒がしかった。

何かな?


「帰ってきたのか、アイリーン」

「運営さん、何かあった?」


運営さんが家の中でのんびりしているのだから、大したことは起きてないとは思うけど。


「外に魔獣が出たとのことで、ジェヌが門のほうから外に出たのだが、門番の弦にその魔獣とともにつかまっている」


は?

なんて?


「門番プラントに、なんでジャムさんまでつかまっているの?」


意味が分からない。

でも、運営さんは大したことだと思っていないようだし、行ってみるか。


「キドナは寒いからおうちでまってて?」


なぜかキドナが首を横に振る。

さむがりの赤ちゃんのくせに。


外に出たら、キドナが門のほうに駆け出して行ってしまった。

しかたないな。


急いで門に向かう。

門前には、集落の住人がみんな集まってた。


「なにがあったの?」

「ああ、おじょうさん、かえってきたのかい」

「門の外に、キドナップバブーンが出たんだよ」


キドナップバブーン?

あ、キドナが外に飛び出た。


「ちょっとごめんなさい」


門番弦が覆う、門の外。

確かに、門番弦が、キドナップバブーンとジャムさんを縛り付けてる。


「門番ちゃん、はなして」


するりと一人と一匹が、弦から解放された。

にらみ合っているけど、また弦に絡まれるのが嫌なのか、動かない。

キドナが、キドナップバブーンのほうに向かった。


「ん?キドナのとこのボスじゃない」

「なんだと?アイリーン、知っている魔物か」


魔物の知り合いって何よ。

いや、そうだけど。


「キドナのいる群れのボスよ。・・・どうしたの?」


キドナがじゃれついているけど、ボスは焦っているようだ。

よく見ると、前に上げたカバンがぼろぼろだ。

何かあったのだろうか。


「キドナが通訳できるわけないし・・・どうしたのかな?」


困ったな。

ここにはウーマもいないし。


「食料が足りなくなったの?」


首を横に振る。

違うのか。


「群れに何かあったの?」


どうやらビンゴらしい。

門番弦が、キドナップバブーンのボスに、何か聞いてくれた。

紙を渡すと、樹液で文字を書いてくれた。

すごいな。

文字がかけるよ、このプラント。


群れが人間に襲われたらしい。

ボスが何とか追い返したが、皆、傷だらけだという。

それで、キドナの飼い主のにおいがするここに来たというわけだ。


「傷薬渡すね。・・・あ、シツジローくん」


ちょうどシツジローくんが、サカイさんを連れて戻ってきた。

いいタイミングだ。


「シツジローくん、ウーマ連れて、このボスと一緒に、森に行って薬をあげてきて」

「かしこまりました」

「あと・・・ジャムさん、このキドナップバブーンの群れ、この集落においてくれないかな?」


魔物だけど、そんな悪いものたちだとは思えない。

確かに、子供さらって食べるとかいうけど、私が視た限り、この群れはやってないと思う。


「集落を守るのが俺の仕事だ。集落の者たちに聞かないとだな・・・」

「そうだよね」


集落の人たちはみなここにいる。

でも、魔物と暮らすのは怖いだろう。


「いや、わしらはいいぞ。この命は、おじょうさんにすくってもらったのだ。同じ仲間が来るようなものだろう。わるいことさえしなけりゃ・・・なあ」


そうだ、そうだ。


集落のおじいちゃんおばあちゃんがうなずいてくれる。

野生だから人間になれるかどうかもわからないのに・・・


「キドナップバブーンのボス、あなた、群れをきちんとしつけられる?この集落でおとなしく暮らせる?」


キーキー


承諾できたようだ。


「それなら、傷薬で治ったら、ここに来て」

「それでは行ってまいります」


相談していた間にウーマを連れてきたシツジローくんが、ボスと一緒に森のほうにかけていく。


「ありがとうございます」

「なあに、いいんじゃ。それより、群れがどれくらいかわからないけど、住む場所を決めんとな」


ああ、そうか。

その辺も考えないとな。


「家ができるまではうちに置いておくから」


それしかないよね。

大きくないけど、あの群れが住むくらいはあるし。

返ってくるまでは、メイちゃんがご飯の用意もしてくれるかな。

お読みいただきありがとうございました。毎週水曜日更新しています。

誤字脱字報告、評価もいつもありがとうございます。

12月もあと半分。

健康にだけは気を付けて、お過ごしください。

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