65~ほかで育ててみようかな~
いつもお読みいただきありがとうございます。毎週水曜日更新しております。
居眠り女主人公、いろいろ考えているようです。
気持ちの良い秋空。
拠点で果物狩りしながら、こちらでもいやし草を植えてみる。
ここは、プラント母さんが面倒見てくれるから、野菜も果物もおいしい。
冬の間はどうなるかわからないけど、それまでにどれほどか生えてくれると嬉しい。
王都中央部の家に戻る。
朝から刈り取られているはずのいやし草は、もう伸びてる。
ここでは成長が著しいからね。
「ねえ、メイちゃん」
「はい」
「ここや拠点でなくても、いやし草は育つのよね?」
「森に生えているものですから」
「だよね・・・。栽培ってどうなのかしら?」
いやし草が貴重なのは知っている。でも栽培しているところがあってもおかしくないよね。
偽ポーションがあるのだし。
サカイさんは森の中に採取に行っていたけども。
「栽培権利は誰が持っているのかな?」
「申し訳ございません、お嬢さま。存じ上げません」
「そうよね・・・」
知るわけないよね。
ここでこんなに勝手に栽培しているけど、大々的に栽培できれば、貴重品ではなくなる。
錬金術師も増やせるだろうし。
「サカイ様にお尋ねしてはいかがでしょう」
「ああ、そういえば、サカイさんは一応お国の役人の一人だったわね」
いつもただ飯食べに来る、押しかけ弟子としか思ってなかったけど、あの人冒険者ギルドの副ギルドマスターだわ。
夕方まで待てばいいってことね。
夕食時、当たり前のようにサカイさんがいる。
メイちゃん特製の夕飯を、勢いよく食べている。
加齢臭のするおっさんだけど、きれいな人だと最初は思ったけど、ダメ男だよね。
食後のお茶は、いやし草の乾燥させたものを飲む。
体にはいいのだ。
「ねえ、サカイさん」
「はい」
「いやし草の栽培権利ってどうなっているの?」
「栽培権利ですか?」
「そうよ。ここでは当たり前に栽培して作れるけど、本来誰かが持っているものなの?」
「栽培はこの国ではされていませんね。他国からの輸入と、自生しているものが出回っているものです」
「輸入?」
「ほかの国には、いやし草を栽培できる環境があるようです。昔プレイヤーが教えたとか」
「ああ、そういう・・・」
栽培環境を整えることが大事なのか。
「それじゃ、どこで作ってもいいのよね?」
「ほんとにこの国の中で作れれば、それは公共事業となります」
公共事業なのか。
なんだかいやだな。
「私はね、あの集落にいやし草を栽培させたいのよ」
「あそこにですか」
「そうよ。先になるけど、冒険者ギルドの支部もできる。人々が来るようになるでしょう。集落もにぎわうようになれば、今は老人ばかりだけど、若い人や集落から出た人が戻ってくるかもしれない。でも、あそこには、麦しか生産がないのよね」
未来がない。
近くにあんなににぎわう街があるが、過疎化しているのだ。
「だから、いやし草をですか」
「そうよ。そこで作れるようになれば、いい収入になるでしょ。偽ポーションだって、いやし草が必要なんだから、錬金術師がいなくても必要でしょ。冒険者もいつでもポーションが買える状況ができれば、ポーションの値段も安くなって、もっと広まるでしょ」
「・・・わかりました。ギルドマスターに相談して、あちらの集落とも掛け合ってみます」
「よろしくね。ジャムさんにも一応私からも聞いてみるわ」
「はい」
あとは、水と土と木の魔法使いを育てるだけだな。
あちらの老人にもいたよね。
水はあのご夫婦の奥さんで何とかなるとして、ご主人や上の子供は何の魔法が使えるだろう。
「師匠、時間がかかると思いますよ。すぐとは言えないです。あちらに行くにも、転移魔法陣を使わなければですから」
私が何か考えているのが分かったのか、サカイさんからくぎを刺される。
大丈夫なんだけどな。
ポータルで移動するし。
「冬っていやし草は育つのかしらね」
「雪の下に少量なら生えますが、やはりあまり・・・」
「そうなんだ。そこも考えないとね」
難しいかもしれないけど、あの集落に未来を残さないとな。
「師匠、今日はこれで失礼いたします」
「うん。頼んだわ」
「承知しました」
まあ、あてにはしていないよ。
公共事業にしないといけないようなら、長くかかりそうだし。
これから冬だからな。
ここから出るための支度の一つだけど、まだかかりそうだわ。
春には出られるかな?
運営さんも帰ってきてないしな。
お読みいただきありがとうございました。
ほんと秋は日が暮れるのは早くなりましたね。
残暑も厳しい。




