61~プラントルビーの余波~
お読みいただきありがとうございます。居眠り女主人公、起きてます。
キノコ狩りはどこ行ったのか。
気持ちのいい、秋晴れの空。
早朝だ。
いやし草をたくさん摘んで、ポーションづくりをしようと思う。
ほんとは秋の味覚狩りに行こうと思ったのだけど、思いのほか、庭のいやし草が伸びているから。
売り物じゃないから、たまる一方だけど。
シツジローくんが庭の手入れとともに、お手伝い中だ。
珍しくこの時間に起きられたのだから、やりたいことはいっぱいだ。
「師匠ー」
庭にサカイさんが飛び込んでくる。
昨日のバスケットだ。
なんだってのよ。
もう食べ終わったから、またほしいのかな。
「おはよう、サカイさん」
「おはようございます、師匠。・・・じゃなくて、なんですか!これ!」
バスケットを探って、プラントルビーを出してくる。
「何って、プラントルビーでしょ。まだ食べてないの?」
私は果実水にしてのんだけど、甘くておいしかった。
炭酸割もしたわ。
「こ・・・・」
だから何を言いたいの、この人。
「お嬢さま、どうやらサカイさんは、こんな貴重なものをといいたいようです」
そうだったのか。
サカイさんの言語中枢がいかれたのかしらね。
「プラントルビーは、私の使役獣からとれたのだから、気にしないで」
「そういう問題じゃないです!・・・て、使役獣?」
そうか。
カードには一応書かれていても、プラント母さんを見せたことはないな。
サカイさんが実際に見たことあるのって、キドナとウーマだけかもだし。
「私の使役獣、マザープラント」
「マザープラントまでも、使役しているのですか!」
「気づいていると思っていたけど、ここの垣根だって、プラント種だよ?」
「あ・・・いや・・・それはしっていますが・・・でも、マザープラントでは・・・」
「そのマザープラントの子供だよ」
なにかにきづいたのか、垣根が触手を振っている。
私も手を振り返した。
いい防犯だ。
「そういえば、食べないの?」
嫌いだったのかな?
「いえ・・・嫌いではありません。こんな貴重なもの・・・。ほんとに頂いてよろしいのでしょうか?」
「あげるために入れておいたんだし」
「プラントルビーなど、数十年前に王様に献上されたのが最後かと・・・」
「あまりなさそうだものね。ジュースはおいしいのよ」
窓から首を入れて、メイちゃんにジュースを持ってきてもらう。
赤く色づく炭酸水だ。
「飲んでみて」
サカイさんが震えた手で受け取る。
落とさないでほしいけどね。
飲んで、目を見開いたとこまで見たけど、もう飽きた。
さっさといやし草をかり終えないとな。
「し・・・ししょう・・・」
顔をあげると泣いていた。
おっさんのマジ泣き、気持ち悪いんだけど。
「泣いているのはあとにして、草むしりといやし草の刈り取り、手伝いなさいよ」
「はい!」
ひときわ大きな声だ。朝から元気だわ、この人。
ある程度終わって、シャワーを浴びたらご飯だ。
労働の後のご飯はおいしい。
仕事に行くサカイさんを見送って、今日はポーションづくりに励んでいた。
夕方には大量のポーション。
眠くて仕方ない。
夕飯も食べずに寝についた。
起きたのは、二日ほどたってからだった。
今日もいい天気だ。
昼過ぎているけど。
その間にサカイさんから、がるがるさんが冒険者ギルドに来てほしいとの連絡があったと、シツジローくんから伝言をもらった。
なので仕方ないから、冒険者ギルドに向かおうと思う。
何のようだろうか。
通された執務室のがるがるさんは、すごく難しい顔をしていた。
サカイさんもだ。
「こんにちは?」
「ん?ああ・・・アイリーンか」
「どうかしたの?がるがるさん」
「どうもこうも・・・、おまえがスーベニア・サカイ様に献上したプラントルビーのことだ」
献上?
なんのことだろう。あげた覚えはあるけど、献上なんてたいそうなことしないし。
「で?」
話が進まなくなるから聞かない。
「サカイ様はあれを国王陛下に献上なされたそうだ」
「だから?」
「その時にお前のことが出て、国王陛下が会いたいと」
「いや」
「・・・だよな。お前の言いたいことはわかる。だがな・・・」
「わかった。この国から出ていくよ。別にこの国にこだわりないし」
面倒くさいことにはかかわりたくないし、この国にすんでいるわけじゃないしね。
必要なら、ポータルで行けばいいんだし。
「ダメですよ、師匠!」
「ダメじゃないよ。私は面倒なことが嫌いなの」
「・・・わかっている。サカイ様もそのことを進言したらしい」
「それで話は終わりじゃないの?」
「終わらなかったから困っている」
がるがるさんがため息ついたけど、私は会う気ないし。
まだ一年たっていないけど、この国とはお別れかな。
「師匠、本気でこの国を出ていくことを考えてますね」
「考えてるよ。別にここにこだわっているわけじゃないし、嫌なことするなら、出ていくでしょ」
もし武力行使してきたら、この王都中央部は破壊していく気だけどね。
「わかった。もう一度、サカイ様や俺からも言ってみる」
「話は終わりだね。それじゃ帰るね」
「・・・ああ」
住み心地は悪くなかったけど、やっぱりこの国からはもう出ようかな。
精霊の命の木を、どうやって外に出すかも考えないとな。
早く運営さんが帰ってくるといいのだけど。
いい考えがあると思うのよね。
夕方にサカイさんがやってきて、出ていかないでほしいと頼み込まれたけど、返事はあいまいにしておいた。
この国にこだわりがないのは本当だからだ。
数日後、国王陛下が、会うのを断念したとの報告が入ったけど、運営さんが帰ってきて、木のことがどうにかなったら、ここから離れることには決めた。
お読みいただきありがとうございました。毎週水曜日更新しています。
一年はこの王国にいさせる気ではあったのですがね・・・
1回目のワクチン打ってきました。 利き手に打たれたのですが、震えてます。微熱も出てますので、今週も更新できてよかったです。




