58~秋の一日~
いつもお読みいただきありがとうございます。
女主人公、季節が変わっても気づかずねてました。
雨の音がする。
起きたら夏が終わってた。
何を言っているのかわからないだろうけど・・・
いや、わたしだからこそ、それは納得できるのかもしれない。
何日寝てたっけ?
魔力は一割ちょっとしか使っていないはずなんだけどなあ。
秋になったのかと思う。
雨季じゃないと、運営さんも言っているし。
実りの秋。
本来なら、おいしいモノがあふれるはずだけど、夏の間に雨が降らな過ぎて、どこも食糧不足だ。
この雨と乾いていく天気で、実りがあるといいんだけどね。
雨のせいで起きたくないけど、朝は一応起きないといけない。
メイちゃんが支度を手伝ってくれて、部屋を出ると、雨に中だというのに、サカイさんが外にいた。
「おはよう。何をしているの?」
「師匠、おはようございます。この大きな木を見ていました。なんだか安心できるので。ここだけは水不足ではないせいか、生き生きしていますね」
「水不足関係ないんだよ、それ」
精霊の生命の木は、切られてしまうと寿命が短くなっていくらしいけど、水不足はそんなに関係なかった。
周りのいやし草は、水気がないとだめだけどね。
「この木は実りがないのですか?」
「この木は実がならないよ」
「師匠の庭は、使うものや食べられるものばかりなのに、珍しいですよね。この木の葉も使わないし」
「これはそれ以上に重要な役割があるからね。ここに住んでいるのもこの木を守るためだから」
「存じませんでいた。この木はそんなに重要なのですか」
「この木を知りないのなら、王立図書館のエルフを訪ねるといいよ」
「エルフですか。同じ王都にすんでいますが、交流がほぼないですね」
「そうなんだ」
私には関係ない話だけどね。
「それにしても大きな木ですね」
「この王都にずっとあるはずだけど?」
「そうだったのですか」
サカイ曰はく、住宅街のはずれなどに大きな木があったのは、知られていないらしい。
でも、ここって、役所からの紹介で、この区画を買ったのよね。
そのたびに何度もきられているってはずだし。
切られた気がすぐに大きくなるのも、知られていないってどういうことなのだろう。
「サカイさんはあまり世間に興味がないとか?」
「いえ・・・そうではなく、この木自体が、ある程度の範囲から外への認識が阻害されるようにできているのでしょう」
確かにこんな大きな木なのに、だれも気にしていないな。
やはり生命の木という特別な存在だからだろうか。
いつかこの木を抜いて、エルフの里に植え替えることができるといいんだけどね。
「ちなみにこの木のおかげで、ここにいやし草がうっそうと茂っているのよ」
ほんとに、手にれしてもだめだったし、癒し草の在庫がどんどんたまるわ。
木の周りのいやし草の背丈が、すごいことになっているんだけどね。
やっぱりプラント母さんに来てもらったほうがいいかなあ。
<それはだめだといっているだろう。垣根にいるものにどうにかしてもらえ>
運営さんからのだめだし。
ああ、そういえば、垣根にいるのは、プラント母さんからもらった子たちだったわ。
でも、侵入者の捕獲で忙しくないのかな。
たのんでみるかな。
門のところに行くと、にょろりと触手が出てきた。
「頼みたいことがあるんだけど」
私の言葉に触手が上下する。
癒し草の剪定をお願いしたいのだ。
垣根の剪定もしているものね、この子達。
ものすごいプロ並みだ。
「今からでもいいけど」
それには左右に振られた。
どうやら夜にやるらしい。
それでいいか。
成長魔法をかけておく。
心なしか喜んでいるようだ。
庭に戻ると、メイちゃんがご飯だと呼びに来た。
でもその前に、体が冷えているだろうから、入浴だという。
自室の風呂に入って、さっぱりして出てくると、もう、お昼も過ぎていた。
温かいスープで一息つく。
実は料理には毎回いやし草が入っているんだよ。
だから疲れもとれるし、いつも健康だ。
それより今気づいたのだけど、サカイさん、仕事どうしたの。
「あ、今日は、この前の報酬のことで、師匠を呼びに来ました」
今言う?
外でボーとしてて、お昼ご飯食べて・・・きっと朝ごはんも食べに来てたと思うけど・・・肝心の用事を言うの、遅くない?
「わかった」
冒険者ギルドに行けばいいんだよね。
「この前の虫はもうないんでしょ?」
「状態が良いので、皆、買取させていただきました。その報酬もあります」
「ついでにいくつか買い取ってもらいたいものもあるし、行くかな」
「よかったです」
よかったもなにも、直接サカイさんが来なくても、手紙の一つで呼び出せばよかったじゃないかと思うよ。
昼食はつつがなく終わり、雨の中の外出。
まだ降るか。
<今日は一日降り続けるだろう>
そうか。
枯れた土地が潤ってくれるといいな。
冒険者ギルドには、もう、依頼を受けてた冒険者たちが集まっていた。
がるがるさんの執務室だ。
白金貨五枚の中から、それぞれに等分して以来量が渡されていく。
そのあとは、蛍の素材料金だった。
私は数が多かったので、白金貨一枚分近くになった。
ちょっともらいすぎじゃないかな?と思ったのだけど、結構な数があったらしい。
後半凍らせたままのばかりだったし、数えていないからね。
虫汁は気持ち悪いし。
そのあとは、熊やらいのししやらの、拠点の魔獣の肉以外の素材を買い取ってもらう。
どうやらこれも質がいいらしく、金貨が増える。
せっかくジャムさんのとこに大金送ったのに、あまり減らないな。
川も骨も魔石も使える素材らしい。
確かに錬金術でも多少は使うけど、うちの従魔たちがそれ以上に取ってくるから、在庫過多なんだよね。
虫よりもいい金額だよ。
虫汁ないしね。
解体も家でおえているから、ほんとに素材だけだ。
がるがるさんが、肉も卸してほしいとか言ってたけど、うちの従魔のご飯はあげられないよ。
私達も食べているし。
肉より野菜が食べたい。
肉を焼いたたれで、コメが食べたい。
やっぱりコメはないのかな。
報酬をもらって帰路につくと、もう夕方だ。
メイちゃんのお買い物に付き合う。
雨の日は屋台が出てないから、広場は閑散としているね。
家について、お風呂。
急に寒くなってきたからね。
一息ついたころには、夕食だった。
当たり前のようにサカイさんが来ているのだけどね。
秋の美味しいものを願って、眠りにつきます。
「おやすみなさい」
お読みいただきありがとうございます。
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アイリーンの所持金は、白金貨で数えてもものすごい数です。が、白金貨どころか金貨でさえ崩さないと、屋台でのお買い物には向きません。




