49~久しぶりの再会~
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
居眠り女主人公、頑張って起きています。
一週間はすぐにたった。
朝からサカイさんが来ている。
「おはようございます、師匠。これからご案内いたします」
まだ眠い時間だというのに、元気だ。
わたしは寝ぼけ眼でにらみつけているのだけど、本人はわかってないようだ。
大体、早すぎなんだよね。
何をそんなに張り切っているのかな。
「蛍狩りだっけ?」
「そうです。蛍です。師匠は見たことありますか」
「ないわ」
ゲームの中でも前世でも、蛍なんて実物見たことないわ。
蛍って、あれよね?
はかない光で飛んでる虫。
源氏か平家だかとかいう虫だったと思うのだけど。
それに蛍狩りって、ホタル観賞のことだった気がする。
ちがったかな?
でも高位冒険者にしかでない依頼ということは、私の知っている蛍狩りとは、違うのかもしれない。
「冒険者ギルドから、その場所に行きますので、冒険者ギルドに向かいます」
サカイさんに連れられて、冒険者ギルドに来た。
結構な人数の冒険者がいる。
どうやら、皆、この蛍狩りの冒険者らしい。
高位冒険者なのだろう。
ギルドマスターがるがるさんの指示で、地下室へ向かう。
地下室には大きな魔法陣があった。
「今から依頼の場所までは二、三日かかる。小さな集落だがそこを拠点として、蛍狩りを実行してくれ」
がるがるさんのことばに、「おう」という、野太い声が聞こえる。
帰っちゃダメかな。
行きたくないんだけど…
「ちょっと聞きたいんだけど、ここからどこかに飛んで、さらに数日かかるのよね?そこまで何で行くの?」
「ん?向こうに馬車が用意されているから、それでだ」
「・・・自分の馬と馬車、連れてっちゃダメ?」
「ん?いいだろう。…一時間ほどしたら、こちらにまた来い。ほかにも自分の馬車を連れていきたいものは、それでもいいぞ」
がるがるさんの許可は取った。
「サカイさん、一度家に帰るわ」
「はい、師匠」
いやいや・・・
あなたはここに残りなさいよ。
「お嬢さま、馬車とウーマを連れてまいります」
シツジローくんが礼をしてすぐ外に出る。
わたしは上に戻って、待つことにする。
馬車は収納しないといけないしね。
でも、ウーマはどうやって中に入れるのかな?
少しして、シツジローくんが、ウーマを馬車につなげてきた。
ほかの馬車になんて乗りたくないしね。
馬車から外し、馬車は空間魔法で収納。
ウーマは戻したかったけど、それっだとどこから?みたいな騒ぎになると嫌だから、連れて外で待機。
サカイさんが外に迎えに来た。
裏に回ると、地下に入る扉があった。
使役獣連れ用なのだそうだ。
最初からそこを教えてほしかったよ。
何人かは、馬車も外に持ってきていたようだけど、どうするのかと思ったら、冒険者ギルドのギルドマスターがるがるさんが、馬車を片っ端から、マジックバッグに収納している。
馬は自分で連れて行けということなんだね。
再び魔法陣の部屋に集まると、何人かの冒険者ギルドの職員が来ていた。
魔法を魔法陣に流し込んでいるが、恐ろしく遅い。
転移魔法陣にこんな遅くていいのかな?
魔法陣の中に押し込められている状態だけど、遅さでつかれる。
<普通の人間はそんなに魔力がないものだ>
そうなんだ?
それじゃ手伝ってもいいのかな?
「がるがるさん、中から魔法陣に魔力流していい?」
「お?なんだ。手伝ってくれるのか?やってくれ」
よし来た。
眠くなるのが難点だけど、たまには魔法も使わないとね。
某漫画みたいに、両手をついてみる。
魔力を流し込むと、転移魔法陣が急速に光りだした。
あとは、目的の場所を知っている人が、転移術を唱えればいいだけだ。
「ではいくぞ」
がるがるさんが叫ぶと、体が一瞬浮遊した感じがした。
気が付くと、同じような地下の、同じ魔法陣が書いてある場所についていた。
「ここが目的地まで、二日ほどの距離にある門前街の冒険者ギルドの地下だ」
がるがるさんが言う。
門前街・・・って、たしか、ジューノさんがいる場所だったような?
ああ、それより少し眠いわ。
ギルドの地下から出ると、やはり、見覚えのある門前街だった。
ギルドの宿舎にこの日は泊まっていいらしい。
まだそんなに時間がたってないのになんで?
と思ったら、転移酔いをしている冒険者のためらしい。
高位冒険者だからといっても、転移になれているわけではないようだ。
連れてきている馬たちは、冒険者ギルドの裏手に厩があって、預かってくれるそうだ。
ウーマは一度そこに預けられた。
「この後は副ギルドマスターのサカイが仕切る。俺は帰るからな。依頼が完了するであろう10日後にまた来る」
地下にがるがるさんが戻っていく。
がるがるさんは自分で飛べるのかな?
「あー・・・アイリーン、頼みがある」
「・・・シツジローくん、行ってあげて」
やっぱり魔法陣に魔力流すの足りないのか。
なんで一緒に来たのよ・・・
数分もしないうちにシツジローくんも戻ってきた。
サカイさんが案内してくれて、宿舎に泊まることになった。
眠い・・・けど、そんなことしている場合じゃないわね。
わたしは、重大なことがある。
そう。
ここが門前街だというなら、ジューノさんの店に行って、根こそぎ調味料を買い占めないと。
やっぱりここにポータル置こうかな。
眠気覚ましの薬瓶を開け、あおる。まずい。
でもこれでしばらくは眠くならないはずだ。
魔力は戻らないけど。
置く荷物はないけど、部屋だけは確保させて、メイちゃんに部屋の片づけをお願いしておく。
運営さんとシツジローくんを連れ、ジューノさんの店に行こう。
「師匠、お出かけですか?」
「ここにいる知り合いの店に行くのよ」
「ご一緒します」
「仕事はどうした」
「明日、皆さまを案内するのが仕事です」
ほんとに仕事しないな、この男は。
まあいいや。
冒険者ギルドからしばらく歩くと、商店街が見えてきた。
ジューノさんの店も見える。
「すみませーん」
「はーい。いらっしゃいませー」
あ、奥さまが出てきたわ。相変わらずのきれいなきつね獣人だ。
「あら?あなたは確か、主人の命の恩人さんのアイリーンさんじゃないですか!」
覚えていたらしい。
「今、主人呼びますね」
あ、買い出しに行ってないんだ?
奥様が奥に呼びに行って、ジューノさんがやってくる。
恰幅のよい、狸獣人だ。
「おお・・・!これは、アイリーン殿ではないですか!」
満面の笑みだ。
「お久しぶりですね、ジューノさん」
「ああ、やっと会えましたよ。王都中央に行ってもみつからなくて」
「来てたのですね。今度の時は冒険者ギルドに聞いていただければ・・・サカイさん」
「副ギルド長のサカイと申しますお見知りおきを」
しばらくは話で盛り上がったところで、今回の目的を言う。
調味料全部と食品は買い占めておいた。
横でサカイさんが変な目で見ているけど、気にしない。
またどうせ仕入れに行くだろうし。
「あと、お願いがあるんですよ」
「なんでしょう。何でも力になりますよ」
やった。
ジューノさんと奥さんを手招きして、ポータル設置をお願いする。
サカイさんに知られるのはよくなさそうだし。
「こちらへどうぞ」
「ありがとうございます」
奥さんが促してくれて、わたしだけついていく。
トイレとかそういうものだと思ったのか、サカイさんはこちらを見なかった。
運営さんとシツジローくんはわかっているしね。
店の裏手に出た。
ここもジューノさんの家の敷地らしい。
そこに小さな納屋があり、隣との仕切りの壁と納屋の隙間に入り込む。
ポータル魔法の出口の一つをここに設置。
これでいつでも門前街に来られる。
初めて来たときに設置できなかったけど、よかったわ。
ジューノさんの店を辞して、ギルドの宿泊所に戻る。
お昼も過ぎて、もう夕方に近い。結構長居したわね。
買ってきたもので、メイちゃんにおいしいご飯作ってもらったら、今日はもう寝よう。
蛍狩りの目的地は、まだ先だ。
お読みいただきありがとうございました。
毎週水曜日更新しています。
ポータルを設置した後の奥様との会話です。
奥さん 「このぽーたるとかいうのは、わたしでも使えますか?」
アイリーン「魔力流せば、王都にあるうちの倉庫につながります」
奥さん 「魔力ですか。獣人は少ないんですよね」
アイリーン「時々メイちゃんを派遣して、王都に連れてきますよ」
奥さん 「ほんとですか!楽しみです」
ちなみにジューノさんには内緒です。




