40~真夏の夜の~
お読みいただきありがとうございます。
前話の午後です。
居眠り女主人公、起きてます。
ミルクアイスをやっと食べられます。
朝市で、果物を見つける。
桃の味のリンゴと、レモン、ベリーが結構あった。
ベリーはイチゴじゃなくて、キイチゴとクランベリーだと思う。
樽でベリーは売っていたので、樽の量で買ってきた。
もちろん、買い占めたわけじゃないよ?
中くらいの酒樽ひとたる分くらいだよ。
しかも、分けられていないから、ベリーの割合はわからないけど、ベリージャムは作れる。
ジャムの作り方、メイちゃんに教えてあったかな?
家に帰って早速ベリージャムだ。
材料は、買ってきたキイチゴ、この前買ったレモン、砂糖だ。
この世界は塩も砂糖もきちんとあるのに、胡椒とかないんだなあ。
今は使わないけども。
キイチゴは洗って、へたを取って、砂糖とレモン汁を入れてしばらく置く。
水分が出てきたら弱火で煮る。
あくが出てきたらすくって、ジャムのような粘りが出てきたら、火を止めて冷ます。
ジャムの出来上がりだ。
え?
わたしじゃないよ?
メイちゃんが作ったんだよ。
レシピはきちんと教えたよ。
見ているだけでスキルレベルが上がるといいのになあ。
「メイちゃーん、ミルクアイスできてる?」
「ご用意してあります」
夕食後にはアイス。
昨日作ったのだから、おいしくできているといいのだけど。
りんりんりん
玄関の来客ベルが鳴った。
あれ?
初めてじゃないかな?
サカイさんなら、勝手に仲間で入ってきて、いるかどうか聞くしね。
シツジローくんが玄関に向かい、戻ってきた。
「サカイ様が、ガージス様を連れてまいりました」
「だれ?」
「ギルドマスターのガルガンギ=ガージスさまです。お会いになられますか?」
「あ・・・ああ、そうだ。がるがるさんの名前だ。うん、いいよ、通して」
しかし、ご飯の時に来るとは、なかなか抜け目ないな。
本来なら失礼じゃないかな。
メイちゃんが二人分を追加して作っている。
というか、一人分か。
サカイさんの分は毎日のように用意されていたからな。
家にすんでいるわけじゃないのに。
「師匠、突然すみません」
「師匠じゃないし。まあいいから、座って。これからごはんなの」
食卓に案内して座らせる。
少ししたら、運営さんも来た。
運営さんは神様としての仕事のために、午後になるとご飯の時以外あまり姿を見せない。
話しかければ答えてくれるんだけどね。
「話は食べ終わってから聞くわ」
私にとっては、こんな人たちよりも、アイスとジャムよ。
それより、暑いけども、窓を開けてほしいわ。
メイちゃんがさりげなく消臭剤を部屋に置いているのだけど、二人は気づかないな。
シツジローくんが、乾季のためだという理由で、窓を開けた。
夕方の風は少し涼しい。
今日の夕食は、冷たいものを堪能したいがために、温かいものにしてみた。
口に入れるだけで、汗が出る。
プレイヤーは、ドールと同じなのに、あせをかくとか、ほんとに細かいわ。
その夕食後の、お茶のお供として、アイスが出る。
この世界に来てはじめてのアイス。
何でないのか不思議だわ。
「おいしい」
何百年ぶりですか。
何年たっているのかわからないくらい、なくなってから経つんだけど。
百年以上はたっているんだよね。
みんなも食べて、おいしさに驚いている。
「これはすごいな」
「おいしいです。さすが、師匠です」
「師匠じゃないし。ああ、もういいや。それで。・・・そういえば、なんの用だったのです?」
毎回言うの疲れるし、もういいや。
そのうちサカイさんが飽きるでしょ。
「そうだった。サカイも戻ってきたし、そこの執事を貸し出してくれた報酬を持ってきたんだ」
かわ袋をどさりと置く。
どうやらお金が入っているらしい。
「サカイが冒険者とともに倒した魔獣の報酬の、サカイの分と、貸し出してくれた分の報酬で、金貨30枚だ」
「いらないわ」
「は?金貨三十枚だぞ?」
「別に要らないわよ」
私の財産は、プレイヤーとして稼いでいた時のものが、白金貨で数十万枚ある。
減らないんだな。
プレイヤー国では当たり前のプレイヤー同士の取引だったから、白金貨数十万枚なんて、少ないのかもしれない。
でもここでは、白金貨一枚でも、多すぎるのだ。
だから当たり前のように散財してみているんだし。
「いやいやしかしな・・・」
「それなら、サカイさんちにあるという錬金道具持ってきて。みてみたいわ」
「それはもちろんです、師匠。しかし大きいもののため、動かせないので、ご足労をおかけしますが、見に来ていただいたほうがよろしいかと思います」
おおきいんだ?
誰なんだろう、プレイヤー、サカイ。
そして、何を作ったんだろう。
「明日にでもおいでいただけますよ」
「それじゃ明日行くわ。迎え来て」
「もちろんです。あさからまいります!」
何か興奮しているわ、この人。
きもいおっさんだ。
先祖の使っていたものが何か知るのがうれしいのだろうか。
帰りぎわ、アイスをくれというがるがるさんに、もうないと断り、また作った時にと約束した。
この加齢臭親父が食べる量が多いから、せっかく大量に作ったミルクアイスが無くなったんじゃないの。
私の暑い日の楽しみなのに。
メイちゃんがしれっとからの入れ物を見せていたから、メイちゃんもちょっと怒っているのかもしれない。
ま、いいや。
夜は少し涼しかったから、トイレに行く回数が増えたけど、またアイスは大量に作りたいな。
私じゃなくて、メイちゃんが作ってくれるってわかっているけども。
それより、明日はサカイさんのおうちか。
「メイちゃん、何かお土産作っておいて」
「承知いたしました」
夜にキッチンから音が聞こえていた。
その音とともに、いい眠りについた。
毎週水曜日更新中です。
不定期になりそうですが、まだ頑張ります。
次の更新は、サカイさんちにいったお話です。




