4~おうち、建てました~
やっと家できます。
家キット
と呼ばれているものがある。
ゲーム内で、家を建てる時に買う、運営さんが販売してたものだ。
私が最後に建てた家は、二階建て、屋根裏部屋と地下室があり、広めのテラス、飼育小屋併設の、大きなログハウスだった。
サイズはLサイズのログハウス。
資金もとてもかかったが、長くゲームをしてただけあって、余裕で一括で払った。
このログハウスも、空間魔法の中に入ってる。
取り出すと、キットのままだった。
運営さん?
お家が、ばらけてるんだけど?
〈そのままいれることはできない。ゲーム内でも、引っ越す時は、キットに戻っていたはずだが〉
たしかにそうだけど…
家具も中にあるのね。
仕方ない、やるか。
家づくり。
土地にキットを置いたら、キットの一つである、水晶玉みたいなものに、魔力を注ぐ。
満タンになれば、家がだんだんと作られていくのだ。
一つの家を建てるのに、ゲーム内では、半日ほどだった。
私はその間は、ログアウトしてたし、現実世界では普通に仕事してた。
今は、こちらが現実。
何時間かかるだろう。
集中して、魔力を注ぐ。
透明な球が濁り、最後には光を放った。
これで満タンになったようだ。
うわっ、半分も魔力、持ってかれてる。
家の大きさで魔力を注ぐ量が違うとはいえ、こんなに消費するなんて…
そんな大きな家だったかなぁ?
玉に、文字が浮かんだ。
どうやら、完成までの時間らしい。
カウントダウンしてる。
完成まで15時間。
こちらの世界の言葉らしいけど、普通に読める。
運営さん、この時間て、この世界の時間でなの?
〈そうだ。この星の時間だ〉
そうなんだ…
この世界も1日が24時間だ。
でも一年が300日しかない。
ひと月が30日。
春、2か月。
夏、2か月。
秋、2か月。
冬、2か月。
あとの2ヶ月分は、乾季、雨季が、それぞれひと月ずつ、どこかの季節の変わり目の時に入る。
春の始まりが、1年の始まりだ。
しかし、15時間か。
今日もお家では、寝られないなぁ。
2人に伝えて、今日もテント。
2人は、私と同じテントだなんてと、恐縮してたけど、お家ないんだからと、説得。
少し離れたとこに、テント出して、私は早速寝に入る。
魔力使ったし、特性の惰眠が発動してるようだし。
「おやすみなさい」
挨拶大事。
ぐっすりと寝ますね。
「…さま。お嬢さま」
声に起こされて、目覚める。
メイちゃんだ。
「お目覚めになられましたか?お嬢さま」
「うん?…もう少し…」
「お屋敷が完成なさいました」
お屋敷?
テントは消えてるので、寝袋から這い出た。
目の前には、巨大なログハウス。
えー?
こんな大きいの?
ゲーム内ではもっと小さいと思ってた。
たしかに、お屋敷って言えるわ。
魔力を注いだ玉は、玄関口の上に光ってる。
柵付きテラスは、柵に開閉扉がついてて、そこからも出入り可能だ。
「おお…じゃあ中に入りますかね」
入ってすぐは、床より少し低くなってる。
これはこだわりで、家キットを買った時の、カスタマイズだ。
玄関だ。
私は、日本人だったから、靴のまま上がるのが嫌だ。
何もない玄関だけど、空間内からスリッパをとりだして、並べた。
3人分。
メイちゃんとシツジローくんも、違和感なく履き替えてる。
靴箱を出すと、シツジローくんが、素早くそれを定位置に置いた。
ゲーム内で、靴箱があった位置だ。
玄関を入ってすぐのエントランスに、空間内にあったものを次々にだした。
疲れ知らずのドール2人は、どこの部屋に、何があったのか把握しているようで、次々に運び込む。
私はそれを、エントランスに置いたソファに座って、必要なものを出し続けるだけだ。
どのくらい経ったのか、2人がそろってやってきた。
「お嬢さま、水回りの核石が、使えないようでございます」
なんてこった。
それは予想がついててもよかったことだった。
2人の核石がエネルギー切れなら、ほかのとこに使っている、低級の核石なんて、壊れてるはずだ。
「スライム、探さないと」
もう何日もお風呂はいってないよ!
トイレは、川のとこでしてたし、水浴びもしたけど、お湯がいいよ!
「スライムってどこにいるかな?」
「森の中には、森スライムがいると思いますが」
なんでも消化すると言われてるスライムは、どこにでもいる。森だろうが、水の中だろうが、街の中にさえいる。
スライムは、その体の粘液で、なんでも溶かしてしまうから、掃除屋と言われてる。街にはスライムを使役して、掃除の仕事をしている人もいる。
「ここの川にも水スライムがいましたよ」
「それじゃ、スライムを捕まえにいきましょうか」
お家完成まで、まだ先だ。