39~ミルクアイス~
いつもお読みいただきありがとうございます。
寝坊助女主人公、たまにはデザートづくりしております。
夏の暑さに負けるから家から出ない。
これが一番大事。
扇風機の風がいい感じで部屋を循環している。
拠点でふっていた雨はまだこちらまで来ないかもしれない。
扇風機を設置してからは、あまり外出していない。
生命の木の周りの草取りだけして、あとはいやし草がのびほうだいなのを、収穫しておいてもらう。
ポーションを作るためには必要だからだ。
でも、今必要かというと、そうでもない。
出かけないし、けがしないしね。
それよりも暑いのをどうにかしたい。
「アイス食べたいわ…」
「あいすですか?」
そうだったな。
つくらせたことないから、メイちゃんにレシピが入ってないんだ。
「生クリーム…いや、ミルクアイスでいいのよ」
「みるくあいすですか」
ミルクアイスなら私でも作り方は知っているわ。
昔何度か作ったし。
「ミルクと砂糖と卵が材料よ」
早速作るわ。
・・・メイちゃんがね。
私?
料理スキルが底辺の私は卵を割るところから始めないといけないんだよ。
もちろん、そういうのはやるけど、あとはメイちゃん任せだよ。
クコッケのたまごと、なんの動物のかわからないミルク、あとは砂糖を用意。
卵黄と砂糖を混ぜて、滑らかに。
牛乳は弱火で煮て、そこに先ほどの卵黄と砂糖を混ぜたものを入れる。
中火にして、ちょっと煮たら、氷水で冷やしながら、かき混ぜる。
あとは泡だて器でよく混ぜて、冷凍庫に入れる。
凍ればアイス。
ここまでの過程が、私のスキルではできない。
混ぜ合わせるはできるけど、火加減がまだ無理だから。
世の主婦の方々は、料理スキルが高いのだと思う。
なので、ここはメイちゃん任せで、混ぜるのは私。
氷だって魔法で出しちゃうし。
早くできないかな。
今が夕方だから、明日には食べられるかな。
おいしいアイスになっているといいな。
朝は少しさわやかだ。
まだ暑さがひどくない。
早朝。
庭になぜかサカイさんが立っていた。
珍しく起きたので、庭に出たらいたのだ。
垣根にいるうねうねとした触手は、サカイさんは、うちのものだと判断しているようだ。
「ただいま帰りました、師匠」
「師匠じゃないし。まあ、お帰りなさい。いやし草は、とれた?」
「はい。とはいえ、袋にこれほどだけです」
小さな麻袋に入ったいやし草。
これだけでも、水気がない場所でならいいのかもしれない。
「そう。そりあえず、中に入りなさい。そんな汚い格好じゃ、奥まで入れたくないから、お風呂入って」
私よりも先に起きているメイちゃんが、すでに準備を終えたらしく、現れた。
こういう気が利くところが、ドールのすごいところだ。
「ありがとうございます」
サカイさんを窓から浴場へ通す。
庭に群生するいやし草には気づかなかったようだ。
汚れている衣服の代わりに、シツジローくんの服を貸し出し、まだ早いが朝食の準備に取り掛かる。
サカイさんが入浴している間に、メイちゃんが作っていたからだ。
シツジローくんはこの時間は、拠点に戻って、庭や使役獣たちの世話をしてくれている。
もう戻るだろう。
並べたころに運営さんも食堂に来て、シツジローくんも戻ってきた。
「いただきます」
いうが早いか、サカイさんは勢いよく食べ始めた。
よほどおなかすいていたのかな。
あっという間にカラになる皿。
メイちゃんがパンのバスケットをサカイさんの目の前に置くと、次々にパンが減っていった。
「すごいわね」
運営さん、サカイさん、ご飯食べてなかったのかな?
<そんなことはないはずだが、長く離れていたから、食料品も不足していたと思われる>
しかし見ているだけで胸焼けしそうだわ。
大体、どこにそんなに入るのかな?結構痩せているのに。
「ふううううう」
大きく息をついて、サカイさんの食事は終わったようだった。
メイちゃんが出してくれたお茶を飲んでいる。
「ごちそうさまでした。久しぶりに食べました」
「そ・・・そう。おなかが膨れてよかったわ。それで、どこまで行ってたの?」
「王都の東まで行ってまいりました」
王都の東側。
中央部からは、実は東のはてとなる場所がすぐらしい。
大きな崖になっていて、中央におりるのも上るものできない場所で、その周辺が森になっているという。
崖を超えれば、一面の砂漠なのだという。
その森の中に入って、採取をしていたらしい。
とはいえ、水場がなく、しかもこの夏の暑さで、どこに行っても木々が枯れかかっている。
森も深いためか、道に迷ってしまったらしい。
しばらくして、冒険者が探してくれたという。
その冒険者たちと森を探索していたら、洞窟があったのだとか。
その洞窟を拠点としている魔獣に遭遇し、何とか勝って、しばらくは洞窟を拠点として、いやし草を探していたという。
冒険者たちとは、王都中央部に帰ってきて、そこで分かれたのが、今朝方だという。
「その足で、そのまま師匠の家に来ました」
「だから、師匠じゃないから。でも無事でよかった。ギルドマスターがるがるさんにも、報告きちんとしなさいよ」
「もちろんです。心配かけましたからね」
なぜかうれしそうだ。
やはり疑惑だわ、この人。
「それより師匠、あのいやし草の量で、どれほどのポーション作れますか?」
「師匠じゃないから。あれじゃ、あなたの腕次第で、ダメポーションが結構できると思う」
ポーション作るには足りないだろうけど、うちに群生しているからいいでしょ。
「そうですか」
「いやし草、庭に生えているわよ」
「は?」
「生えているわよ。育ててみたの」
育てたというより、育ったが本音だけど。
「自由に使うがいいわ。それより私たちは出かけるから、もう帰って」
出かける予定なかったけど、せっかく早く起きたのだから、朝市行こうっと。
「はい。午後にまた来ます」
来なくていいけど、仕方ないよね。
サカイさんを帰らせて、朝市へ。
ジャムになる果物ないかな。
ミルクアイス、たのしみ。
おいしいジャムをかけたいな。
毎週水曜日更新しています。が、おくれたらすみません。




