38~なぜか扇風機~
いつもお読みいただきありがとうございます。
寝坊助女主人公、一応起きて作業をしております。
夏に入って十日ほどたった。
シツジローくんは、戻ってきている。
サカイさんはまだ行方不明だ。
だけど冒険者さんが見つけたらしく、しばらくいやし草を探しながら過ごしていると、運営さんが言ってた。
いやし草は、水気のある場所じゃないと生えないからなあ。
拠点の森のいやし草を、王都の家の、精霊の命の木の周りに植えてみた。
あっという間に繁殖しちゃったんだけど、内緒だ。
結構な量を使うから、どんどん繁殖してほしい。
精霊の命の木の周りの水が、いやし草には適しているようで、なぜか上物のいやし草となっている。
いいポーションもできやすい。
シツジローくんは一週間でたまっていた書類を片付けてきたそうだ。
さすがに優秀に作っただけある。
その間は、メイちゃんに食事をもっていかせてた。
一応二人は夫婦って触れ込みだからね。
シツジローくんの分だけではなく、ギルドマスターの分もだ。
後、おやつとして、甘い揚げドーナツなどを、ギルド職員の分も持たせた。
おかげで冒険者ギルドでは、扱いがよかったらしい。
気配り大事よね。
だけど早くサカイさんが帰ってこないと、また、シツジローくんを貸し出す羽目になるわ。
終わりの日も、職員さんたちが名残惜しそうだったし。
きっとおやつがもうもらえないからだと邪推しておいたけど。
「場所としてはどのあたりで採取しているのかしらね」
この辺りじゃ無理でも、門番街のほうなら何とか…ならないのかな?
いまだに雨が降らないから、どこもかしこもカラカラだけど。
あちらまで行くのも時間かかるか。
「西ではなく、さらに東のほうだな」
私たちが来たほうとは反対側か。
それじゃどこかはわからないな。
冒険者さん、探せたのだから、凄腕なんだろうな。
私たちプレイヤーは、すれ違えば登録されたりするから、すぐに場所が把握できたんだけどね。
「いつかは私たちも行きたいわね、東。隣の国にも行きたいし、ここら辺だってまだ回ってないとこ多いよね」
「君が寝るのを少し我慢すればいけないこともないだろう」
寝るのは大切なんだけどね。
わざと寝ているわけじゃなし、いいじゃないの。
けどほんと、夏が暑いわ。
室内にいるけど、暑さで溶けそうだわ。
「エアコンとかあればいいのに」
「ここは魔法が発達した国だ。魔道具は発達していないがな」
「そうよね。・・・風が出る装置が作れればいいんだわ」
エアコンみたいに、冷たい風が出る魔道具を作ろう。
そうと決まれば、ここより拠点のほうがいいわね。
「拠点に行ってくる」
みんなはおいて、一人でさっと行く。
やはりポータル魔法は便利だわ。
拠点は雨だった。
少し肌寒い。
この雨が王都中央部に来るまでにはどれほどかかるかな。
使役獣たちは、プラント母さん以外は家の中だ。
夏場が暑くても、雨に濡れるのは嫌なのね。
ああ、でも、ウーマは外で走り回っているのか。
シツジローくんに、きれいにしてもらわないとね。
ウーマは走るの大好きだからね。
それよりも、材料よ。
いくつかのインゴットを取り出す。
スキル想像力でできるわよね?
でも冷風を出すためのスライム核石は、どこに組み込もう。
冬には温風が出るようにしないといけないし、取り外し可能にしないといけないかな?
あまり大きなものだと、設置も大変だけど、小さいと意味ないよね。
各部屋の分も欲しいし・・・
ああ、材料が足りない?
まずは一つ作って、食堂につけておこう。
それからだんだんと作ればいいかな。
集中して、魔力を込める。
私の記憶にあるエアコンは、どんなのだったろうか。
部屋に設置されているので、まったく気にしてなかった。
それでもこんなのだというので作る。
・・・おかしいな?
これは扇風機だわ。
羽が五枚の、扇風機。
なぜこれができたのかな・・・
あ、これ、部屋の上のほうに取り付けるタイプのものだ。
エアコンは?
創造どころか見てたものだし、実物知っているのに・・・
「私の想像力に欠陥が?」
あり得るわ。
どこかで扇風機を思ってしまったのかな。
まあいいか。
これに氷のスライム核石をセットすれば、涼しい風が出るはずだし。
何個か作って、空間魔法に収納。
一つはここに残して、使役獣たちの部屋に設置だよね。
シツジローくん連れてこないと。
それより、スライム核石を作るために、スライムを探さないと。
ここは雨降りだから、川辺にいそうだし。
プラント母さんが、もしかしたら持っているかもだわ。
窓辺から顔を出すと、プラント母さんが寄ってきた。
触手で頭をなでてくる。
「プラント母さん、スライム核持ってない?」
いえば吐き出してくれた。
大量だ。
プラント母さんの食事のほとんどが、光と水とスライムなのだろうけど。
「ありがとう」
成長魔法をかけ、栄養剤を渡す。
もしかしたらこの森で一番高い植物は、プラント母さんになるかもしれない。
植物じゃないけどね。
プラント母さんの触手が、私の肩をたたく。
「どうしたの?」
触手が、水を出しながら回り続けるスプリンクラーを示す。
ああ、確かに雨の日はいらないな。
プラント母さんにスプリンクラーの止め方と付け方を教えておくの忘れてた。
使い方を教えると、全部のスプリンクラーが、触手で止められていく。
植物に水をあげすぎるのはいけないものね。
よく見ると庭が水浸しだ。
こちらはいつから雨だったんだろう。
「それじゃまたしばらくはお願いね」
プラント母さんに別れを告げる。
スライム核が手に入ったし、核石作らないと。
それにシツジローくんに扇風機を設置していってもらわないとね。
核石を入れ替えできるようにしたから、温風も出るんだわね。
冬でもこの扇風機は重宝しそうだ。
錬金室で作業に取り掛かる。
この時間が一番好きだ。
私は作るのが好きなのだと思う。
しばらくして氷のスライム核石ができた。
磨くのは苦手だけど、今はメイちゃんもシツジローくんもいないから、自分でやらないといけない。
「うう・・・ねむい」
集中して磨いているはずなのに、集中力が途切れる。
一休みとして、意識を手放した。
気が付いたら、ベッドで寝てた。
メイちゃんがそばで核石磨いてる。
寝てからそんなに時間がたっていないみたい。
「メイちゃん?」
「気が付かれましたか、お嬢さま。お帰りが遅いのできてみたら、作業場で寝ておられましたので、お部屋にお連れしました。丸一日お休みでございました」
そんなに経ってないわけじゃなかった。反省。
やっぱりどちらかについてきてもらう必要があるわね。
「石はこれですべてでございます」
「ありがと。これを壁に設置したいから、シツジローくんを呼んできて」
「承知しました」
少ししてシツジローくんが来た。
扇風機を従魔の部屋に設置させる。
使い方はしーちゃんに教えておいた。
王都の拠点に戻り、各部屋にも設置して、使い方を教える。
これで快適…とはいかないかもだけど、涼しく過ごせるはず。
夏はこれからが本番だ。
毎週水曜日12時に更新しておりますが、ちょっと忙しくなるため、更新が遅れるかもしれません。
読んでくださる方には感謝しております。




