35~スライム核石、再び~
お読みいただきありがとうございます。
居眠り女主人公、起きてます。
王都の家に住むために頑張ってます。
宿は引き払った。
王都中央部での家での生活になる。
拠点との行き来もできるし、考えてみれば、作った当初からここでもよかったんじゃないかな?
池にも水がたまり始めている。
この水がどこに排水されるかが問題なわけだ。
あふれても困るけど、なくなっても困る。
「ほとんどの水は、周りの垣根と、精霊の命の木が吸い取るだろう」
「そうなの?」
「垣根はあのプラントの種なのだろう?」
そうだ。
プラント母さんは水のある場所に常にいるし、その種なのだから、垣根も水を吸い取ってくれるだろうな。
吸い取りすぎも困るから、垣根にもよく言っておかないとね。
「周りに芝も植えたいわね。池にも魚とかいるようになるといいな」
「魚の前にスライムが住み着きそうだな」
あり得るわ。
水辺って、なぜかスライムが多いのよね。
あとはおいしい果物とかも植えたいけど、それは拠点でいいか。
拠点のスライム、分裂してくれてないかな。
浄化槽に突っ込んでおきたいな。
「ちょっと拠点に戻ってくるわ」
留守番は任せて、拠点。
ちょこちょこと来ているけど、やっぱり自分の家って感じ。
浄化槽を除くと、なぜかスライムが巨大化していた。
浄化するものないから、なぜ巨大化しているのかわからないけど。
「王都の家にも起きたいので、分裂して」
半分の大きさになった。
こんなに大きいと、王都の家には無理かな。
でも、この半分のスライムを連れていくことにする。
各部屋の浄化槽やらに、分裂させて放り込めばいいんだし。
分裂すると、各々に核ができるのが不思議だわ。
使役獣だから、このスライムからは核を取らないことにしているけど、やはりスライムはすごいな。
見ただけでも、大きい核だわ。
プラント母さんに栄養をやり、ほかの使役獣たちにも、冷たいものをあげて、ブラッシングとかしてから、また王都の家。
早くここに連れてこられるといいな。
ウーマが見当たらなかったけど、きっと森を駆け巡っているのだろうな。
ウーマもブラッシングしたかったわ。
スライムには、さらに数匹に分裂してもらう。
池にも一匹入れておこう。
落ち葉とか食べてもらわないとね。
それでも核がないと次が進められないんだよね。
拠点でも少し、スライム核狩りしてくればよかったな。
ご飯づくりは拠点で。
というか、拠点で食べているんだよね。
みんなで。
王都はまだ使うことができないから。
やっぱりメイちゃんの料理はおいしいわ。
シツジローくんがさばいてくれた肉もおいしいわ。
魚も、プラント母さんがつってくれたし。
お野菜は少ないけど。
乾季になってから、野菜の値段が上がっているらしいと、メイちゃんがうわさで聞いてきていた。
別にいくら出しても構わないんだけど、枯れかかっている野菜に出す値段ではないという。
メイちゃんは立派に家計を守っているわね。
ゲームの時は気にもしていなかったけどな。
「乾季はだんだん移動しているのよね?」
「ふつうは全体的に王国内でなるものだが、強さが違うのかもな」
「ここのほうが乾いているのはどうして?」
「世界に満ちている魔法の力のせいだろう。ただ暑いだけだ」
暑さか。
確かに暑いし、夏も近い。
でもこれだけ水が足りないと、夏に雨が降らなかったら、危険だな。
「スライム核石、普及できるといいのにね」
「錬金術は、結局広まらなかったからな」
膨大な魔法力を保持しているプレイヤーだからこそ、それができるのだという。
でも、スライム核石くらい、作れるでしょうに。
水の核石、売れるかな。
でもスライム狩りが横行しそうで嫌だな。
私が作るだけでも、100匹単位は必要なんだから。
やっぱり現実はゲームみたいにはいかないな。
「普及はやりたい人にだけにするわ」
私の好きなようにしていいって言ってたし、そうしよう。
運営さんもうなずいてくれているし。
「どうせ普及させるなら、おいしいものがいいよね」
そう。
マヨネーズよ。まだまだ改善の余地ありだけど。
メイちゃんが作ってくれたわ。
もちろん、攪拌させるには、手だと疲れるだろうから、魔法使ってやったけど。
電動ハンドミキサーほしいわね。
電気ないけど。
これだってスライム核石セットすれば使えるものだろうし。
ああ。
早くスライム来ないかな。
* * * * * * * * * *
依頼してから一週間。
冒険者ギルドの外にいる。
ついてきているのはシツジローくん。ウーマの馬車を引き連れている。
メイちゃんと運営さんは、それぞれやることやってもらってる。
目の前にいるのは、確か、ギルドマスターがるがるさん。
なんでそんなへんな名前なんだろう。
あと、サカイさん。
「来たか、アイリーン・プラム・シュガー」
「お久しぶりです・・・がるがるさんとサカイさん」
「誰ががるがるだ。ガルガンギ=ガージスだ」
おしい。
ちょっと覚え違いしてたみたい。
ま、いいか。
「ご依頼されました、スライムは、裏におります」
「ありがとうございます」
サカイさんが案内してくれる。
いい人だな。
ギルドの裏の倉庫の前に、ネットがいくつか置いてあった。
生け捕りなので、倉庫の中に入れられないらしい。
ネットがうごめいている。
「全部で138匹だ」
ちょっと少ないな。
いろいろ使いたいことあるし。仕方ないか。
受け取った後、受取証と、そのほかいろいろと書類を書いて、ギルドを出る。
と。
サカイさんが、近づいてきた。
「アイリーンさん、お願いがあるのですが」
「はい、なんでしょう」
「そのスライムたちはスライム核石になるのですよね?」
「この前も言いましたが、そのために捕まえてもらったので」
「図図しいかもしれませんが、作っているところを見せていただいてもよろしいでしょうか」
サカイさん自身は、血が全くつながらないけど、プレイヤーの子孫。
見てみたいのだろうな。
古代魔法と呼ばれてしまっている、技術を。
「いいですよ。うちに招待しましょう」
「ありがとうございます」
「その代わり、スライムから核を取り出すところから手伝ってもらいますよ」
それくらいはやってもらいたい。
でも、家帰ってすぐ作業始めるけど、この人いつ来られるかな。
「帰ってすぐ始めますけど?」
「実は午後は半休もらっているので、大丈夫です」
抜け目ないな。
それじゃ、一緒に帰るとするかな。
すぐ支度してきます、と、サカイさんは去っていく。
数分もしないうちに、帰り支度なのだろうものを持ちやってきた。
スライムを馬車に乗せ、私とサカイさん、シツジローくんも乗り込む。
ゆっくりの足取りだ。
全く馬車の振動がないことに、サカイさんは驚いていた。
あったら、いたくて乗れないからね。
拠点でやっていただろう、昼食の支度。
王都の家のほうに並べられている。
急遽サカイさんが来たから、ここで食べることにしたので、メイちゃんが運んできた。
まずは食事だ。
スライムは、ネットごと、倉庫に置いてある。
ものすごい勢いで食事をしていくおっさんに引くわ。
メイちゃんがシツジローくんの伴侶だと紹介しておいてよかった。
嫁にくれと言い出しそうだし。
おかわりも何回するのよ。
よくたべるわね・・・・
見ているだけで胸焼け起こしそう。
「おいしかったです」
「よかったですね。お茶したら、作業に取り掛かりますよ」
食休みは大切だわ。
お茶をすすりながら、スライムグローブを取り出す。
説明して、サカイさんに渡す。
スライムグローブも知らないらしい。
「この世界には失われたものが多いのでしょうか」
「プレイヤーの国には当たり前に存在するけどね」
失われたわけじゃなくて、元からないんじゃないかな?この世界には。
それをプレイヤーが持ってきてただけだと思う。
さて。
一休みすんだら、スライム核を手に入れなければ。
攻撃しなければ攻撃してこないスライム。
そこに手を突っ込んで、素早く引き抜くだけ。
見せれば誰でもできる。
サカイさんもコツをつかんだころには、スライムが残っていなかった。
「この池のとこにいるスライムは・・・」
「それは私の使役獣よ。核を抜いたら…わかるわね?」
脅しは大切だ。
はっきり言うけど、使役獣のほうが大切だから。使役するつもりなくても使役している従魔だ。
「ちょっとたのしかったです。この抜け殻はどうするのでしょうか」
まだうごめいているスライムの核のない抜け殻。
池のスライムのとこにいれたらくっついた。
あとはスライムに任せておこう。
あ、分裂した。
「増えた分のスライムは、拠点に戻しておいて」
シツジローくんが、分裂したほうのスライムを、数匹抱えて、家に入っていく。
家のスライムに任せれば、くっつくだろうな。
あちらが本体だし。
「ここからが、スライム核石を作る本番です」
私の部屋の隣。
錬金部屋だ。
この世界ではほぼ見たことのない機器で埋まっている。
複製だけど。
弾力性のある核を切り刻む。
もちろん手伝わせる。
はかりに乗せ、重さをはかる。
水と火のスライム核石を作るのだから、その比重が大事だ。
魔法陣に乗せる。
石ができる。
後は、これを割って、研磨する。
研磨は、私は苦手なので、サカイさんにもやらせてみた。
なかなか器用らしく、きれいな核石ができてる。
「それはあげるわ」
「えっ!」
「初めて自分で作った核石だし、何かに使えるでしょ」
使い方も教えておく。
これだけでも使えるのだ。
火と水の核石。
どちらの性質も持つ。
「水に入れて、魔力通せば、お湯もできるわよ」
小さいかけらを水に入れて、魔力を通す。
すぐに沸騰したお湯ができた。
「すごいです。こんなすごいものだなんて・・・」
「なんだと思っていたの」
「技術は伝わってきてませんでした。プレイヤーのみが作れるものだと思ってました…」
「確かに、生きたスライムからしか核をとれないし、錬金道具がないと作れないわね」
「いくつかの錬金道具はございますが、何分、使い方がわからないのです」
おいていったのか、サカイ。
「ある程度魔力がないと作れないわよ」
「確かにそうですね。・・・家にある錬金道具もまだまだ使い方はわかりませんし、この魔法陣もわかりません」
仕方ないよね。
だからこそ錬金術は残っていかない技術だから。
もう夜だ。
夕飯の支度がされていた。
作られた核石で、キッチンもトイレもお風呂も使えるようになった。
夕飯を食べながら、サカイさんのよくわからない感動話を聞く。
プレイヤーにあこがれていたらしい。
いつの日かプレイヤー国に行きたいからと、冒険者になり、いまだにかなわない、と。
いけるわけないしね。
夜もとっぷりと暮れて、サカイさんは上機嫌で帰っていった。
私は疲れたわ。
お風呂入って、さっさと寝たいわ。
長い一日だったな。
「おやすみなさい」
今回はいつもより長くなりました。
誤字脱字も多いかと思います。




