27~ニードルは痛そうだ~
残酷描写あります
居眠り主人公は起きてます
朝は起きられた。
うん?
チェックアウトの時間ぎりぎりだったけど、朝だよ?
集落の入り口も出口も同じ。
昨日の広場に行って、また買い占めだよ。
といっても、そんなに買うものないなぁ。
肉はまだいっぱいあるし。
野菜も買ったし。
朝市らしいから、見てまわるだけでもいいか。
ふらふらとみてると、卵を売っている店があった。
生卵だと?
確かに卵は常温保存できるけど、生では食べられない。サルモネラ菌がいるからな。
殺菌方法が確立しているのかな?
「すみません、この卵って生食用ですか?」
「はあ?おまえさん、なにいってんだ?卵は生で食べるものじゃないぞ」
あ、やっぱり殺菌できてないのか。
生卵…
ああ、でもたまごかけご飯に必要なコメがないのに、私ったら。
「ですよね。・・・ふたかごください」
卵料理のレパートリーはある。
私の料理スキルの低さではだめだが、メイちゃんに教えよう。
しかし、鶏より大きいみたいだけど、なんの卵かな?
「これってなんの卵ですか?」
「クケッコに決まっているだろう」
クケッコ?なんだ、それ。
「クケッコって何ですか?」
「おいおい、嬢ちゃん、嘘だろう。クケッコをしらないとか、何喰ってんだ?」
そんなこと言われてもなぁ。
そんな魔物いなかったよ。
「お、ちょうどいい。あれがクケッコだ」
卵売りのおじさんがさすほうを見る。
どう見ても、鶏だ。
いや・・・鶏より凶暴そうだ?
しかもとさかついているし。
「あれがクケッコ?」
「そうだ。あれはオスもメスもないから、かっていれば卵産むし、繁殖も勝手にするが、飼育が難しくてな」
「まもの?」
「魔獣の鳥の危なくないやつを掛け合わせたらできた、食用だ。ただし、あの肉自体はそんなにうまくないから、卵用だな」
「卵用…」
「産まなくなったクケッコはつぶして、魔獣寄せの餌だな」
冒険者ギルドで買ってくれるそうだ。
雌雄両性なのかな。
クケッコ。
いなかったなぁ、ゲームには。
ねぇ、運営さん?
<長い年月が経っている。品種改良もし始めているのだろうが、魔物肉は結局新鮮ではないとすぐ腐敗する>
そうなんだ。
熟成とかもないのかな。
イノシシがいるから豚もいるかと思ったけど、いないしね。
牛の魔物肉はないのかなぁ。
「牛はいないのかな、おじさん」
「うし?うしとはなんだ?」
ここでは牛って言わないのか。
こういう感じだと絵を見せる。
「ミートカウか」
「ミートカウ」
食用なんだろうな。名前からして。
「あれはクケッコよりも凶暴だぞ。冒険者に依頼を出せば手に入るだろう」
「そうなんだ?野生なんだね」
「魔獣だからな。ここから出て、丘を上っていけば、ミートカウが時々やってくる水場があるぞ。だが、あれは狂暴すぎるから、ある程度ランクのある冒険者に頼まないと危険だぞ」
「わかりました。ありがとうございます。・・・卵、全部ください」
やっぱり買い占めよう。
卵とミートカウ。
もう決まりだよね。
牛カツだわ。
米がないのがわびしいけど、おいしいおかずは大切よ。
パンにはさむもよしだよね。
小麦も買って、いざ、この集落から去りましょう。
目指すは丘の上にいる(はず)のミートカウ。
門に行くと、昨日の門番がいた。
「お世話になりました。門番さん、ミートカウのいる丘ってどちら側?」
「ミートカウ?それなら、ちょっと戻ったところに左に向かう道がある。それが丘に向かう道だ。・・・お前さんらなら、大丈夫だろうな。プレイヤーだしな。もしたくさん狩れたら分けてもらいたいもんだな」
「わかったわ。ミートカウ、いっぱい狩ったら、少しはあげるわね」
門から出て、馬車を出す。
少しすると、シツジローくんがウーマを連れてきた。
ついでにほかの子たちの様子を見てきたらしい。
おうちのほうは乾季が始まっているらしく、川の水かさが減ったようだ。
それでもプラント母さんには関係ないようで、いつものように、周りの植物の世話をし、ほかの子たちの面倒も見ているらしい。
プラント母さんに任せれば安泰だね。
たまには行って成長魔法かけてあげないとな。
馬車で道を少し戻ると左に上っていく道があった。
緩い上り坂だが、周りは畑だ。
ところどころに人が見える。
集落の人だろうか。
ゆっくり上って、小さな水場に出た。
いないなぁ。
「お嬢さま、水場に来るのは朝だと思われます」
なるほど。
この辺の草も食べられている跡があるし、もう、ミートカウはいなくなっているのか。
「じゃ、今日はここで野宿しましょ。ウーマはおうちに連れて帰ってね。ウーマがいるとミートカウが来ないかもしれないし」
強い魔物には寄らないものね。
今のうちに昼寝して、明日に備えよう。
朝は結構早かった。
まだ日がきちんと出ていないけど、ぶもーっという声がして、起きた。
外に出ると、うごめく何かがいる。
「お嬢さま、ミートカウです」
戦闘の支度をしたメイちゃん。
シツジローくんもいる。
運営さんも起きてた。
みんな冷静だ。
「13頭ほどですね。全部狩りますか?」
「どうしようかな。この辺のミートカウってこれしかいないのかな?」
全部かって生態系を崩すのもどうかな。
「今日来ているものとは別の集団もいるから大丈夫だろう」
「そうなんだ。じゃ、全部狩りましょう。試したい魔法があるんだ」
私が試したい魔法。
それは、ツタをニードルにして、頭と脳を貫く魔法。
人に向けるのは危ないし、どのくらいの威力かわからない。
手加減魔法として開発してみた。
ツタはプラント母さんからもらったんだけど。
ツタに魔法をかける。
ミートカウの中に投げ込んだ。
ザシュッ!
ツタに生えてたとげが、細長いニードルとなって、周りのミートカウを襲う。
五頭の脳を貫いた。
貫かれた穴から、血が噴き出す。
ブモー!
ひときわ大きい声で倒れていくミートカウ。
周りのミートカウが、一斉にこちらを向いた。
「メイちゃん、シツジローくん」
「「おまかせください」」
二人がさっそうとほかのミートカウに襲い掛かる。
あっという間にミートカウが倒れた。
「ん?」
一頭残っているなぁ。しかも大きい。
うごかず、こちらをじっとみている。
鑑定。
グレートミートカウ。
Lv38。
群れの長。
肉は極上品。
いつも思うのだけど、この鑑定魔法、おかしくないかな。
でも、極上品か。
「メイちゃん、シツジローくん、私がやるわ」
群れの長だけ残ってもしょうがないよね。
どちらが強いかなんて、見てわかるだろうけど、あのグレートミートカウは、逃げないようだし。
「血抜きしておいて」
「「かしこまりました」」
二人にほかは任せて、私はグレートミートカウに向かう。
相手も思い切り走りこんできた。
牛だからだろうか、まっすぐだ。
それをよけて、剣を抜き、一閃。
首を切り落とした。
グレートミートカウの体は少し先でそのまま倒れ、切られた首は転がり、血が舞う。
「いい戦いだったよ」
私の血肉にするから、成仏してよね。
って成仏っていう感覚があるのかな?仏教じゃなくて神様だもんね、この世界。
水場は血だらけだ。
ほかの魔獣も来そうだな。
さっさと撤収するか。
「一頭だけ、門番さんに届けるよ」
馬車に乗り、集落に戻る。
門番にミートカウを渡すと、ものすごい喜んでいた。
解体は自分でどうにかしてもらいたい。
今日は肉と卵で牛カツだなぁ。
早くおコメがこの世界でも見つかるといいな。
この集落からはもう去るけどね。
ミートカウは、今日のお昼に食べられるかな。
年内の更新はこれで終わりです。
よいお年をお迎えください。
新年も見放さないで読んでください。




