261~その頃のプラム郷 2~
ジェムはなんとなく予想していた。
アイリーンが、期日を守るはずがない、と。
家の用意もできたというのに、くる気配がない。
おかしいと思っていたところに、サカイからの連絡だ。
アイリーンが起きないので、まだプラム郷にいけない。
わかっていたが、なんだそれ、だった。
アイリーンがよく寝るとは思っていたが、自分で言ったことすら、寝ていて破るとは。
連絡をもらって、小さくため息をついて、家に急いで家具を設置している住民たちに声をかける。
「アイリーンが寝坊してるらしいから、今日は来られないようだ。ゆっくりでいいってよ」
その言葉に、住民たちは大笑いだった。
アイリーンお嬢様だものな。
それが住民たちの総意だからだ。
「おじょーさま、まだこないの?」
「ナナ、二、三日したらくるだろうから、お前はしっかりお菓子を片付けておけって。いっぱい入れてあるんだろ」
「ひとりじゃたべきれない」
「いや、その鞄に突っ込んだけ。なんで食べる前提なんだ」
「⁇」
心底不思議そうな顔のナナに、ジェヌは呆れ顔だ。
「とりあえず、鞄にいれとけば、誰にも取られないだろ」
「うん、わかったー」
集会所に走っていくナナを見送り、あらかた作業を終えた住民たちに、ボックスの中にあったナナのオヤツを、お茶菓子がわりにだす。
少し減ったからといって、ナナは気づかないだろう。
それだけたくさんおやつがはいっていた。
メイはいったいどれだけの菓子を、ボックスに入れて行ったのだろう。
みんなで食べる分もあるとはいえ、ナナが毎日食べているのに、減っていたようにも思えない数字だったのだ。
今度くるという、ライオンの獣人兄弟は、どんな人だろうと、皆が話をしているのを横目に、ジェヌは門番としての仕事に戻って行った。




