25~炭酸池~
寝坊助主人公は相変わらず寝てましたが、集落からは出ました。
起きたら昼だった。
わかってる。
しかも翌々日だったけど、原因はわかっているんだ。
夜中に起きてたからだよ。
ジューノさんは送り届けたらしい。
そして、馬車はもう、王都中央に向かって走っている。
隠れ身の魔法で、素早いよ。
この辺りは森と畑の風景だけだった。
だからすばやく移動。
でも、進んでいる風圧とかで気づかれないのかな?
気づいた時にはもう去っているけどね。
飛ぶ風景を観ながら、お茶してる。
揺れないっていいねぇ。
途中で出会う魔物もいないのは、やはり、門の中だからなんだろうと思う。
弱いものしかいないし、ウーマは、ほかの魔獣より強いから、避けているのだと思う。
「どこか、湖でもないもんかな」
そろそろスライム核石が欲しいなぁ。
武器とかつくりはじめたいし、そもそも、暇だ。
「湖ですか…。確かこの先の森に、小さな池があった気がしますが、それくらいでしょうか」
「じゃ、そこに行こう。それしかないのじゃ、仕方ないよね。運営さんもいい?」
「すきに行くといい。まずはこの世界を見て回るのが君の旅だろう」
確かにそうだ。
シツジローくんに言うと、ウーマにも聞こえたらしく、速度が落ちてきた。
もうすぐ森につくのだろうか。
森は少し枯れかかってた。
水がある場所よね、ここ。
土の問題なのかなぁ。
池に来た。
池というには広い気がするけど、きっと分類上は池。
ぼこぼこと、泡が出ては消えていく。
なんだここ?
ちょっと鑑定。
炭酸水の池。
飲むとおいしい。
意味わからない鑑定結果だな。
もっと詳しく知りたいんだけど。
でも飲むとおいしいって…
ここ、うちの庭に欲しいな。
「運営さん、ここって持って帰れないのかな?」
「この広い池をか?」
「ダメかな?」
「この地質自体がこの池の水なんだろうから、池を持って帰ってもだめだろう。似たようなのを作るのはできそうだな」
そうか。
似た感じの作ればいいのか。
でもおいしいっていうのは、もったいないな。
この辺りは人が来そうにないし。
ジュースとかにしたら絶対おいしいよねぇ。
「この池も雨季になれば普通の池みたいに濁るぞ」
「そうかー。もったいないね」
雨が降れば濁るか。
少しでいいからうちのほうにも持っていきたいなぁ。
「水を汲んでいけばいい。おいしい飲み物ができるのだろう?飲んでみたい」
「果汁を入れればジュースになるよ。楽しみね。ちょっと持っていくわ」
魔法で湖の真ん中を切り取る。
うん。
便利な魔法もあったもんだ。
空間切除。
下の土も切り取れたから、少しは炭酸水が持続するかなぁ。
「そんな使い方があるのか…」
あれ?運営さんがあきれてる。
みんなやらないのかな?せっかく空間が切り取れるなら、やりたいよね?
<その魔法自体がレベルが高くないと使えないのだから、やれるものがいるはずないだろう>
それもそうか。
この魔法は限界突破二回目で覚えたのだし、この世界の人では無理だろうな。
メイちゃんもシツジローくんも使うことはできない。
切り離した湖は、収納した。
あとはここの水を少しコップに入れる。
「メイちゃん、何か果汁入れて?」
甘いのがいいなぁ。
「ではこちらなどいかがでしょう」
ピーチアップルだ。
これなら桃味だね。
おいしいよねぇ。
果肉をすりおろして、絞る。
桃のジュースの完成だ。
それを炭酸水で割る。
「おいしい!」
何これ。
こんなおいしいの?
ほんとにこの水自体がおいしいし、ピーチアップルもおいしいし、素晴らしい組み合わせだ。
シュワシュワの中に、ちょっとトロっとした感じがあって、これなら、商売している人なら売りたくなるかも。
私は商売人じゃないけど。
ジューノさんとかなら食いつきそうだわ。
運営さんも飲んで頷いてる。シツジローくんもメイちゃんも、いい笑顔だ。
ウーマにも飲ませてみた。
喜んでる。
こんなおいしいものが手に入るなんて、いい旅だわ。
「炭酸水は、料理にも使えるのよ。かたいお肉も柔らかく早く煮込めるの」
「ほう。料理をしない割には知識はあるのだな」
「一言余計よ。時短知識よ。この世界では料理しないけどね」
魔獣の肉がいっぱいだし、調味料もあるし。
角煮みたいなのがいいなぁ。
「承知しました」
メイちゃんが鍋に水をくんで、どこかに行く。
拠点である家に帰ったのかな。
料理は向こうでやったほうがいいしね。
しかし、この辺りは空気が薄いのかな。
少し息苦しいな。
<炭酸は炭酸ガスだからな>
そうか。二酸化炭素だよね。
そういう知識あるんだね、運営さん。
<知識は様々なところで吸収できる。地球に関して学んだことも多い>
なるほど。
化学は発達しなかったけど、それを生かす魔法はあるんだもんね。
その魔法の成り立ちが分かればいいのになぁ。
<魔法も科学の一つだ。そういう研究をするものは少ないがいることはいる。だがあまり優遇はされておらぬな>
そうか。
水兵りーべなんて、ここじゃ覚えないもんね。
化学も魔法もどちらも基礎は同じなんだなぁ。
「この森の外でお食事にしましょうね。空気薄いとおいしいものも感じなくなるわ」
まだメイちゃんは来ないだろうし。
馬車をウーマにつなげて、森から出た。
もうすぐ夕方だ。
夕日が沈んでいくさまが見える。
明かり球を浮かべると、ちょうどメイちゃんが馬車を降りてきた。
いい匂いだ。
「肉を炭酸水で煮込み、シチューにしてみました」
今日はほかに人がいないから、おいしい料理もそんなに量はない。
私たち四人だけだしね。
お肉柔らかい。
おいしい。
魔獣肉ばかり食べているけど、これって、イノシシだよね。
豚肉のシチューなんだわ。
おなか一杯になると眠くなる。
ああ、でも、炭酸池の切り取った部分を家に持ち帰りたいわ。
でも眠い。
あとでいいかな。
お湯を浴びて、さっぱりして、寝る支度。
「おやすみなさい」
「もう寝るか。早いな。お休み」
明日はもう少し中央部に近づくだろうな。
読んでいただきありがとうございます。まだ続きます。




