243~どうしてよ~
洞窟に入ったところで、手に持っているものに、魔法をかける。
ポウ・・・と小さく先のほうがともる。
洞窟に行くまでの魔物は、ほかの冒険者さんたちが結構倒しているので、ほぼ会うこともなかった。
だからか、なぜかその途中で、サカイに小枝を渡された。
「なにこれ」
「師匠に持たせる武器です」
「なんで小枝?」
「剣を振り回されたら、洞窟が壊れるかもだからです」
失礼な。
確かに加減をするのがまだ苦手だけど、そんなことしないと・・・いえないな。
ゲームの中なら、壊れなかったけど、それはあくまでシステムだから。
ここで振り回したら、もしかしたら壊れるの?
「今、あちらのほうは誰もいないと思いますので、小枝を一振りしてください」
「はあ?・・・わかった」
失礼極まりないんだけどなあ。
あとでしばく、サカイめ。
小枝を振り下ろす。
ビュオオオオオオオ・・・
バキバキバキ・・・
え?
なんで目の前の大木がなぎ倒されていくの?
いや、加減したよね?
小枝もボロボロなんだけど・・・
サカイもシツジローくんもメイちゃんも空の人もため息ついているし。
「師匠・・・絶対に剣を振るようなことはやめてください。小枝もだめです」
「ええ・・・」
まあ、はい。
それはこの状況を見て思います、はい。
何が起こったんだろうって思うよ、ほんとに。
なぎ倒された木々は、空間魔法で収納させてもらいました。
「師匠は麦の穂でも持っててください」
なぜかサカイが麦の穂を渡してくる。
なんでこんなの持ってきてんのよ。
「何か振り回したくなったら、それ振り回しててください」
「いや、子供じゃないんだから・・・」
そこまで何かやりたいわけじゃないよ、うん。
「あと、もし鉱石とか取りたかったら、こちらに言ってください。ご自分で採取しようとしないでください。鉱床屈が壊れます」
失礼だな、ほんとこいつは。
だけど、ちょっと思う。
ゲームでやってたことが、ここではできないのか。
加減、真剣にできるようにならないとかな。
そんなわけで、麦の穂が灯り代わりになってる。
振り回すつもりはないけど、なんだか頭が弱い子に思われたと思うのよ、門番さんに。
この中、灯りなくても見えるのだけど、雰囲気ということで。
あ、でも、ちょっと揺らすと、きれいだから、楽しいかも。
麦の穂も悪くないかな。




