237~せっかく噂のもとがいたのに~
噂が聞こえたのは、さらに、数日たった時。
もういないのかと思ったのに、どうやら、広場に来たらしい。
「いくわよ」
期待はしていないけど、でももしかしたら、会ったことのないプレイヤーかもしれない可能性。
だってフレンドほとんどいないから。
広場ではフードを目深にかぶった男性二人が、小さな魔法陣が書かれた布の上に、石を置いている。
「この何の変哲のない石ころを、今からオリハルコンにして見せましょう」
おお。
物質変換するのね。
私もできるけど、見世物にする気はなかったなあ。
こういう街頭パフォーマンスで、錬金術を広めていくのか。
でも、オリハルコンか。
どんなもんだか。
パフォーマンスをまじかで見てる人たちが多いけど、フード男の一人が、危ないから下がってとか言ってる。
まあ、魔法陣に触れたら危ないかもだけど、そうでもないけど・・・
一瞬、まばゆい光の後、石ころが金属になってた。
うん?
発動してないな。
そして明らかに量がおかしいよね。
おおきくなってる?
「シツジローくん・・・」
「あれは、光で皆さんが目を細めた瞬間に、そでから出したものと交換していました」
さすがドール。
光なんてなんのその。
あーあ、やはり詐欺だったか。
見学客の多くが称賛しているけど、こちらはため息よ。
本物じゃない。
でも、あのオリハルコンは本物だなあ。
パフォーマンスでお金もらって、サクサクと引き上げか。
「メイちゃんシツジローくん、あの二人のことちょっと調べてくれない?」
「「かしこまりました」」
私はサカイと空の人連れて宿に帰る。
「師匠、すごかったですね!」
「だからあんたはいつまでたってもポーションの区別ができないのよ」
「ええ?」
「すりかえだって。魔法陣が発動しなかったでしょ」
「そうなのですか?」
「あなた、いつまで、ぼんやりと錬金術やっているのよ。きちんと発動するときの魔力の流れも勉強しなさいよ」
そのための本を渡しているというのに。
「すみません・・・」
「まあ、それじゃ、あれが偽物だって分かったし、メイちゃんとシツジローくんの結果待ちで、街を出るわよ」
「はい・・・」
こっちも期待してたんだよ、少しだけ。
錬金術が細々とでも息づいているって。
それをただの詐欺じゃ、ないわー・・・
早く街を出て、卵探そう。
そのほうがいい気がしてきた。
でも今日はもう寝よう。
イライラすると眠くなるわ。




