232~宿は確保できた~
サカイ領よりは小さいけど、結構大きな街らしい。
入るときに身分証を呈示すると、何か話していた後、暴れないように、といわれた。
何それ。
私は暴れたことなどない。
ここに錬金術師が本当にいるのだろうか。
噂はあちこちであるらしい。
宿を決めて、その宿屋の食堂でもその噂が聞こえたから。
それは確かにすごいうわさ、ではあるけど、私としては疑わしいと思ってる。
だって、この世界、たくさんあるのに、プレイヤーはそんなに来ていないんだよ。
そして、今まで来ているプレイヤーたちは、ほとんど違うワールドに旅立っているという。
こんな簡単には見つかるはずがないよね。
でもそれより先に、サカイのスキル取得。
そのあとに見つけたいので、しばらくは滞在だと思う。
ご飯は、まあ、わかってた。
おいしくないよね。
ベッドも・・・クッション持ち込んだから大丈夫。
こんな硬いのはないわー。
お風呂は、馬車から、拠点に戻るでいいや。
だって、ここも、シャワールームもなく、お湯を有料でもらって体をふくというのがデフォだから。
はっきり言うけど、そんなの無理。
それなら、馬車泊で過ごせといえるのかもしれないけど、たまには宿などにも泊まらないとね。
この世界の文化というものも、味会わないといけないよね。
プラム郷だけじゃわからないよ。
プラム郷も発展しているよ。
鍛冶できる工房あるし、ミシンも作ってもらったから、洋服作る場所もある。
布が、ジューノさんに持ってきてもらうしかないのが、まだまだ課題だけど、機織りとか糸をつむぐとかの技術もあるようだから、糸を手に入れるところが問題なのか。
それは今度ジューノさんに相談しよう。
人手が足りないかと思ってたけど、いつの間にか住民が増えてたりしているしね。
知らない人が多くなったけど、人間も獣人も仲良く暮らしている。
宿の食事も人気らしいから、宿に泊まっている人も住人も、夜にはワイワイしているようだし。
・・・そろそろ私居なくても普通にやっていけそうかな?
でも、まだ、病気とかにはきちんと対応できないよね。
錬金術師が少ないから。
・・・おじいちゃんおばあちゃんと、ナナくらいだわ。
ほかの人たちも育てないとよね。
忘れていたわ。
そういう意味では、この街よりは発展していないよね。
料理はプラム郷のほうがおいしい。
でも、宿は一つしかないし、店として成り立つものがない・・・
宿と冒険者ギルドとジューノさんに委託したものの売上金で、税金は払えているけど・・・
物々交換ばかりで、ほぼほぼお金になってない?
これは将来的によくないわね。
そこも考えないとだわ。
「お嬢さま、その辺りは大丈夫なはずです。門前街まで必要なものを買いに行くものもいますし、きちんと報酬も支払われてます。・・・その辺りは、ジェヌ様たちが、きちんと管理しておりますので、ご安心ください」
そうだったのか。
私は全く考えてなかったからなあ。
「今一番お金があるのは、お嬢さまは当たり前ですが、ナナです」
「へ?」
「ポーションの値段を、ほかの偽ポーションより安くして委託販売しておりますが、ほとんどがナナの作ったものです」
「ナナは暇なの?」
そうとしか考えられないよね。
「友人と遊ぶ、勉強する、家の手伝いをする、よりも多くの時間を、会議所でポーションづくりに費やしているようです」
「なんで?」
まだ小さい甘えん坊さんなんだから、友達とはしゃぎまわってなさいよ。
どういうことなの。
「ナナはポーションづくりが楽しいようです。お金の使い方を知らないようですし、戦い方といえば、ボスが教えているようですが・・・あまり危険なことはさせないでしょう」
そりゃそうだよね。
ボスが森に連れてったりはしているようだけどね。
「ナナには冒険者登録しないようにきつく言わないとよね」
「そうですね」
あの子は自由だけど、箱入り娘だからね。
あまり危険な目にはさらしたくないなあ。
「ですが、錬金術師になるには、素材採取も自力ですよ」
「そうだけどさ」
ナナがもう少し大きくなったら、考えさせるしかないか。
今はまだかわいいモフモフのままでいてほしい。
ちらっと横を見ると、また魔力切れを起こしてうなっているサカイがいるけど、ほっておこう。
この街の探索は、明日からだな。




