228~サカイは静かに勉強中~
馬車の中で、う~・・・といううめき声が聞こえる。
うん。
うるさい。
「もっと静かに本を読めないの?」
「ですが師匠、難しいのですよ」
「それ理解できるまで私語禁止」
どうせシツジローくんが来たら教えてくれるでしょうしね。
私たちプレイヤーが、それの理論を理解しているかといったら、微妙だと思う。
だって、入手して、読む、という選択肢をクリックするだけで、覚えたものだから。
ゲームの中で身についたものに対して、理解できているとは思えない。
よくラノベで、あれこれ細かいこと言える転生者とかいるけど、すごいよね。
作者さん、ほんとにその知識が身についてて説明できているのかしら。
私は無理よ。
なんとなくしかわからないから。
ああ、でも、レシピを残したりしている人たちは、深いところまでわかっているんだろうな。
そこまで調べる気力なんて、転生前はなかったよ。今もないのだけどね。
うめき声が聞こえなくなったので、私は小さな鍋でポーションの製作中。
物質変換の理論の次は、スキルを発現させる修行をさせなければね。
スキル。
鑑定だ。
基本の色水じゃ意味ないので、すべて無色透明。
これで等級だけ違うポーションを作る。
プレイヤーはそんなことしなくてもスキルが手に入ったりしたけど、こちらの人はどうやって発現させればいいんだろうと考えた結果だ。
なので、一番わかりやすく身近にあるもの。
サカイ自身が手にしたことあるものとして、ポーションにした。
「うん。いい感じ」
少量を作ることってそうそうないから、手間だなあと思うけど、これでサカイにスキルが発現できれば、プラム郷の人たちにも同じことができると思う。
ああ、また暇だわ。
少し寝ようかな。
馬車はまだ隣の領にもつかなければ、矢印にもつかない。
この辺りの魔獣も、ほとんどウーマが倒しちゃってるし、ひとがいないところでは、シリウスたちもやってるし。
暇だなあ。
「私が起きるまでに覚えるのよー」
それではお休み。
ああ、このクッションはほんとにいい睡眠をもたらしてくれるわ。




