227~すごいうわさ~
サカイ領に戻ると、サカイが準備も終わって待ってた。
いろんなこと教えようと思ってたのに、結局プラム郷ですごしてしまったから、今あるものもほとんど教えてあげられなかったな。
「サカイ、ごめん」
「なにがです?」
まあ、本人は何も気にしていないようだからいいか。
サカイ領は思った以上に大きいみたいだし、隣まで行くのも時間かかりそう。
この矢印の先にあるものが、目的の卵だといいのだけどね。
ウーマがのんびり歩きだす。
メイちゃんが御者台で、シツジローくんは、まだ拠点にいる。
余っている木材を詰め込んで、ジューノさんに相談に行ってもらう予定。
プラント母さんがすっきりしている・・・といいたいとこだけど、すぐ伸ばせるようだし。
なぜかいくつか遊具ができてたから、暇だったのかもしれないと思う。
キドナのためのものかもしれないな。
母さんは素敵なお母さんだわ。
街が過ぎるとのんびりした田舎道。
でもまだサカイ領。
ここを過ぎれば、門があり、そこから先は違う場所。
まだ先に続いている矢印。
ほんとにいくつなくしたのかな。
竜、自分の子供がいつまでたっても生まれてこないのに疑問に思わないほど、気が長い生き物なのかしら。
今度運営さんに聞いてみようかな。
「そういえば師匠、すごいうわさを聞いたのですよ」
「すごいうわさ?」
「隣の領には、銅をミスリルに変える
だから何だ、と思う。
私もそれくらい変えられる。
物質変換は、錬金術の基礎の本、85巻あるうちの一つだったはず。
「師匠・・・もしかしたら、ほかのプレイヤーがいるかもしれないじゃないですか」
「ああ、そういう・・・」
確かにそうだ。
私以外のプレイヤーが、その量で活躍している可能性もある。
すっかり忘れてたけど、この世界にいるはずなんだわ。
「しかし、銅をミスリルなんて、すごいですよねえ」
「サカイ?あなた、私の一番弟子を名乗っているのだから、もちろん、全部の本を読んだのよね?」
基礎の85巻全部、こちらの言葉に直したものを、コピーして、サカイには渡してあるはずだ。
ほかのコピーも、プラム郷にはある。
「あ・・・いや・・・その・・・」
「もう何年、あなたは弟子をやっているのかしら?もしかしたらナナのほうが、もう、あなたより上かもしれないわね」
「そんな・・・」
「・・・そうね。この馬車の中で特訓しましょうか。大丈夫よ、材料も何もかも、すぐに取り寄せられるし。まずは、物質変換の巻を読み込みなさい」
「え・・・ここには持ってきてないです」
「うちにあるから大丈夫よ。すぐに持ってくるから」
「・・・あ、ありがとうございます」
全く怠慢もいいところだわ。
この分じゃ、鑑定のスキルも出てきてないね。
困った弟子だ。
時間はあるし、修行させないとね。
ああ、めんどくさい。




