222~驚きなのは~
サカイの錬金部屋から持ち出したのは、小さな投影機だった。
「師匠、これは何ですか?」
「投影機。真っ暗な部屋ないかな?」
「部屋が暗くなるのは、夜にならないと・・・」
だよねぇ。
こっちって、そういうものだった。
「それよりも、プラム郷に連絡したら、ナナがいじけていると連絡が」
「ええ?」
ああ、そういえば、おやつが足りないって連絡来たっけ。
「ちょっと、プラム郷に行ってくるよ」
「え?どうやって?」
「あー・・・。ポータル使って」
「・・・ああ・・・」
サカイも納得したようだし、馬車に戻るか。
メイちゃん連れてかないとねぇ。
シツジローくんも。
・・・あ、シツジローくん、拠点のほうに行ってるのか。じゃあいいや。
こっそりプラム郷。
家の中なんだけど、あれ?誰かの気配・・・
「おじょーさま!」
ドアを勢い良く開けて、ナナ。
なぜ帰ってきたの気が付いているのよ。
野生の勘?
いや、この子は、それはなさそうだね。
「ナナ・・・」
「おなかすいた~」
わがままに泣いている。
メイちゃん視て、ウルウルしているし。
はあ・・・
「メイちゃん、おやつ作ってあげて」
「はい」
ナナはもう、椅子に座っていい子にしている。
それにしても、あの量を食べつくしたのか。
「ナナ…そんなにすぐに食べ終わる量だった?」
「あのねぇ。みんなで食べたの。メイおねーちゃんのご飯、みんな大好きなのに、いないともらえないでしょ?」
あれ?
ナナがきちんと話してる?
「ナナ・・・、大人になって・・・」
なんだか目頭が熱いわ。
「ナナ、おねえちゃんだもん」
胸を張る。
うん。
まだおこちゃまだわ。
メイちゃんのおやつができると、ナナはすぐに飛びついた。
飢えているのか、といえるほど。
「ある程度食べたら、外行くかな」
「うん。みんなまってるよー」
「まだ正式に帰ってきたわけじゃないんだよ?」
「でもみんなまってるよ?」
ここのみんなは私を受け入れてくれているものね。
うれしいな。
「ママにあってー」
「ん?わかった」
なんだろう。
チトセさん、何かあったのかな?
「お嬢さま、私は集会所でおやつ作りしてきます」
「あ、お願い」
まだ旅が続くしね。
いっぱい作ってきてもらおう。
外でこっそりと思ったけど、無理だった。
すぐに見つかって、なぜかジャムさんが来ている。
「アイリーン、帰ってきたのか?」
「まだ。ポータルで帰ってきただけよ。ナナのおやつ作り」
「ああ・・・」
ジャムさん、呆れた顔しないでよ。
ナナはすぐ飢えちゃうでしょ。
マークとビイトも返ってきているみたいね。
「あ、ねーちゃん」
「久しぶり。最近どうなの?」
「それそれ。ねーちゃんに頼みがあるんだよ」
「頼み?」
「そう。・・・あ、忙しい?」
「あー・・・チトセさんに会いに行くんだけど」
「あ、ちょうどいい。母さんにも関係するんだ」
マークも頷いている。
ん?
チトセさんにも関係していること?
なんだろう。
ジャムさんの用事はチトセさんのあとね。
ということで、ダンゴロー家族の住む家。
ダンゴローさんはお仕事、ではなく家にいる。
「ああ!お嬢さま!」
ダンゴローさんが駆け寄ってきた。
「お久しぶりです。お変わりないですか」
「あああああ・・・・ナナが連れてきてくれたのか!」
「おとーさん、おちついて」
「だって、なあ」
「おじょーさまが、驚いているよ」
うん。
驚きよりも、あぜんとしているんだけどね。
何?
「そうだ。ああ、こちらに」
チトセさんがベッドに寝ている。
え?病気なの?
「チトセさん、だいじょうぶなの?」
上級ポーションならすぐにあるし、だせるけど。
「あ、お嬢さま、お久しぶりでござます。私なら大丈夫ですよ、病気ではないです」
「ああ、そうなの」
「じつは、妊娠しまして・・・」
赤くなりながらチトセさん。
おろおろ淡々しながらダンゴローさん。
え?
妊娠?
思考が停止した。




