217~スーベニア・サカイ家~
領館を出て、少し歩く。
うん?
広い庭ですね。
普段歩かないと疲れそうだわ。
案内はサカイ様とサカイ。
どちらもサカイなのでややこしい。
連れてこられたのは、日本家屋だった。
うん。
私の家とおなじ感じがする。
そういえば、ゲームの拠点での家って、いろいろ選べたけど、一番人気は日本家屋の庭園だった。
私も何件か持っている。
門扉をくぐると、少しだけ次元が違うのを感じた。
サカイたちはわからないようだけど。
これは、ゲームの仕様の家だからだと思う。
庭の中は、枯山水だった。
縁側で、ぼんやり眺めて居たくなるよね。
生まれ変わる前には、実行もできなかったけど。
「ここ、変わっているじゃろ。祖スーベニア・サカイが好きだったらしい」
「ああ、枯山水、つくるのたいへんだったろうけど、まあ・・・」
ゲーム仕様だと、どれだけ足を踏み入れても、いつの間にか戻ってたものね。
「かれさんすい?」
「枯山水。そういう名前の庭のつくりなのよ」
スーベニア・サカイも、ここを見ながらいろいろ思いを巡らせていたかもしれないな。
「プレイヤーの国にはよくある庭だったわ」
「師匠の家にはないですよね」
「まあね」
家屋シリーズが違うから。
いつか、だれも来ない場所でなら、作るかもしれないな。
玄関に入る。
靴を脱ぐ。
サカイやサカイ様は、そのまま入ろうとしてる。
家では脱がせるけど、ここでは脱ぐ習慣がないのか。
「二人とも、この家も靴を脱ぐことが前提で作られているのよ、脱ぎなさい」
えっって、驚いた顔されても、うちと同じようならそれに思い至っても、とは思うけど、長年の習慣は無理なのか。
掃除はしているっぽいけど。
「メイちゃん、先に掃除をしてて頂戴。二人にまず、スリッパ出してあげて」
足クサそうだから、廊下を歩いても欲しくないんだけどね。
「かしこまりました」
めいたyンが先に入って、すぐに掃除用具を出して、掃除を始めている。
クリーン魔法も使うから、すぐに終わるだろう。
それまでは、玄関先で立っていることにする。
「もしかしたら、靴を脱ぐ習慣がなく、ここでは脱がなければいけないというのが分からなかったのかもしれないけど、これからは伝えていきなさいよ。汚れてたら、それこそスーベニア・サカイが帰ってきたとき、がっかりするわよ」
「アイリーン殿の家は、脱ぐ習慣があったな。・・・そうか。祖スーベニア・サカイもまた、同じプレイヤー。ここはそういう家なのじゃな」
「そうよ。これからは、掃除をする人にも、スリッパはいてやるように言いなさい。後、枯山水の庭にごみをはき捨てることはしないようにね」
「言い聞かせます」
まあどうせ、ごみを捨てても、すぐにきれいに戻るんだけど。
廊下からも、枯山水がよく見える。
ここで座って、ぼんやり眺めるのは最高だろうな。
中は温度調整されているようだし。
「疲れたときとか、ただぼーっとここで庭を眺めるのは最高でしょうね」
思いが口に出てしまう。
いい思い出があったわけではないけど、前世のことは考えることもあるな。
「お嬢さま、一通りの掃除を終えました」
「ありがとう。・・・開かずの間はあった?」
「開かずの間かは、わかりませんが、こちらかと思われます」
サカイ家には扉は見えないといっていたし、どこだろう。
プレイヤーだから見えるのかもしれないしな。
廊下の途中。
引き戸があった。
「ここか」
「師匠?何もありませんよ」
「プレイヤーにしか見えないから」
つまりはここは、スーベニア・サカイの私室、あるいはポータル専用部屋だろう。
引き戸を開ける。
ああ、やっぱり、ポータル専用部屋だった。
しかも、ワールドを超えるためにポータルの部屋だ。
私の拠点にもある。
他には何もない。
ここから行って帰ってこられるだろう。
引き戸を閉める。
「アイリーン殿?」
「ああ、ごめんなさい。ここの部屋は、見せてはいけないものだったわ。まあ、見ることもできないでしょうけど。教えることもできない」
「そうですか。ほかにもあるのですが」
「そちら行きましょう」
今日は、サカイ家探訪だわ。




