215~おっさんが増える~
またゆっくりと、領内をめぐる。
サカイがいると、その領内の街のお偉いさんがあいさつに来るので、うっとうしい。
「サカイ、別行動してほしいわ」
「師匠!ひどいです!」
ひどくないわよ。
こちらはゆっくりと見回りながら、領館まで行きたいんだし。
領都っていうんだったかな。
そこで落ち合えばいいんじゃないかな?
「別々に行って、落ち合う日が遅くなるのは煩わしかろうに」
空の人の言うとおりか。
仕方ない。
それにしてもほんとにどこに落としたのよ。
空の人たち、卵落としすぎなんだし、反省してよ。
「ゆっくりいきたかったですけど、いそぎますから」
それならいいか。
私は馬車の中でダラダラしているだけだしね。
この領はおおきいようで、しかも馬車の速度も決まっているから、領都につくのに、日にちがたっている。
だけどやっと着いたのかな。
領都の入り口のとこに、なんだかいい馬車が停まってる。
「いやな予感がするわね」
「現スーベニア・サカイである父が迎えに来ているのですよ」
「うざっ」
あ、本音が漏れてしまったわ。
迎えなんて来なくていいのに。
ああ、でも、あいさつはしなくてはいけないか。
お土産になるもの、何も持ってないわね。
「シツジローくん・・・」
「用意はしておきました」
「ありがとう」
できる執事は違うわね。
使えない弟子の世話しているこちらがいたわってほしいものだけどね。
先に馬車を降りたサカイが、豪華な馬車の中に話しかけてる。
あ、もう一台、あんまり豪華じゃない馬車が来た。
「おおー、アイリーン殿ー」
豪華じゃない馬車から、サカイ様が下りてきたわ。
この人、王都中央部に行ってていないんじゃなかったのか。
「話を聞きつけたので、すぐさま帰ってきましたよ」
あ、そう・・・
まあいいか。
知らない人よりも知っている人のほうがいいし。
豪華な馬車の人は、降りるタイミング失っているようだけどね。
「サカイ様、久しぶり」
「ほんとですなあ。この前プラム郷に行ったら、ナナがお菓子がないって騒いでましたぞ」
大笑いしてるけど、いやいやいや。
あんなに置いてきたのに、もう食べつくしたの?
困った子だよ。
「それより行きましょうか」
「ちょ・・・おじいさま、ダメですよ!まだ父が!」
「なんだ。まだ挨拶もしていないのか。ほんとに行動力が遅い」
いや。
あなたが無視したんじゃないかな。
威厳を持って出てきたかったかもしれないじゃない。
まあいいや。
気を使うこともないか。
降りてきたみたいだし。
「師匠、こちらが父の現スーベニア・サカイです。父上、この方が、わが師匠であり、祖スーベニア・サカイが友人、プレイヤーのアイリーン・プラム・シュガー様です」
サカイの紹介で、私は挨拶をする。
向こうのおっさんも挨拶してきたし。
しかし、おっさんばかりだわ。
私もいい年だけど。
「息子と父がお世話になっているようで、申し訳ありません」
あ、常識人のおっさんだ。
この親と子を持って、苦労しているんだろうか。
「うちの馬車に乗られませんか?」
「あ、ダメですよ、父上。師匠はこの馬車以外、乗れないと思います。そりゃもう、まったく乗り心地が違うのですから」
ああ、確かにね。
普通の馬車は乗れないわ。
スーベニア・サカイだって、きっとそうだったよ。
「さようですか。・・・では、馬車の後についてきてください」
頭を下げるおっさん。
いや、それよりも、サカイ様のほうが、こちらの馬車に乗る気満々なんだけど。
まあいいか。
「サカイ、サカイ様の馬車のほうに乗って帰る?」
「いやです」
ああ、そう。
まあいいか。
ゆっくりと馬車が進んでいくなあ。
いや、二台の馬車の馬が、ウーマを怖がっているから、いつもより早いらしい。
しらないわ、そんなの。




