214~向かなかったんです~
領館につくまでの間は、宿場町がある、らしい。
うん。
街じゃない。
工房しかない。
「祖スーベニア・サカイが、錬金術師だったため、今でも一応、錬金術は調査されているんです。失われた技術を取り戻すためですけどね」
「サカイ、あなたが錬金術師になったんだから、それを伝えなさいよ」
「まだ、ポーションしか作れませんが」
そうだった、まだ先に進めない。
サカイは、魔力が少ないんだった。スズランのほうが、多い。
「それでも少しは多くなっているような気がするんですよね」
「そうね」
勝手に視るけど、確かに最初の出会いのころよりも増えているわね。
レベルが上がっているからだろうけど。
この旅で、少しずつレベルが上がっているサカイは、一気に上がるわけではないのでレベル酔いはしない。でも、代わりにレベルが上がっている自覚はなさそう。
スズランやエイトに比べれば、まったくもって低いんだけどね。
「なので工房も多いですが、祖スーベニア・サカイが、こぶしで戦うタイプでもあったため、拳術を教える道場などもあるのですよ」
「へえ・・・、あなたは剣よね」
「向かなかったんです」
やはり向き不向きってあるんだなあ。
私はどちらもむかない、というか、日本で習っていたわけではないから、ゲームスキルに頼りっぱなしだしね。
リーチを考えると、拳より剣のほうがいいような気もするし、結局は魔法使っちゃうし。
「今日はこの辺りで泊まりましょうか」
「宿あるの?」
「宿場町ですから、宿もありますよ。武器を買いに来る方も多いので、それなりに発展しているんですよ」
苦笑気味だ。
周り視てもそんな風に見えないんだけど、ちょっと外れると宿が並ぶとか。
料金は、サカイ領の方針で、一律らしい。
高くも安くもないんだそう。
代わりに高級さも安っぽさもなく、全部一律。
宿の従業員も、きちんと教育する施設があるそうで、そこから割り当てられるのだとか。
それもすごいな。
「宿泊紹介所です」
そんなのあるのか。
あれ?
王都中央部よりも発展してる?
「祖スーベニア・サカイが考えたそうです。というか、プレイヤー国にはあったのでしょう?」
「ああ確かに」
そうだった。
忘れてた感覚だわ。
紹介された宿は、一階が酒場で、二階が受け付け、三階が宿泊施設だった。
「簡易キッチンがついているようですので、食事を作ってまいります」
「いいよ、たまには酒場で食べよう」
たまに街に来た時くらい、お金を落としていくのが、旅行者のマナーよね。
うん、まあ、あまりおいしくないのと、ベッドのクッションがまあまあなのは、仕方ないか。
早く、領館、つきたいものね。




