204~わかっていたよ~
うるさい矢印。
近づくにつれ大きくなるけど、なんでマップではなくて、目の前に見えるのかな?
普通、マップ表示で見えるものじゃないの?
現実で見えたら邪魔なだけだよ。
いや、ゲームの中でも、矢印がフィールドに表示されてたっけ。
魔物出てきても、気づかないほどに大きくね。
まあつまり、目の前に魔物がいるんだけどね。
まあ、シツジローくんとサカイとBランクがそれに対峙している。
一匹なら、サカイやBランクが対応でもよかったんだけど、十匹はいる。
あ、イノシシかあ。
久しぶりに見たな。
思い出すなあ。
炎で燃やして焦がしたっけ。
おいしくなかったなあ。
なんて思っているうちに、イノシシ、対峙されているわ。
「昼食はイノシシ肉を使いましょう」
そうね。
今は調味料あるものね。
なくてもおいしく作れるのが、メイちゃんだけど。
「おぬしは何もせんのじゃな」
「やってもいいけど、この辺り一帯が燃えるよ」
「燃えるとは?」
「前、炎使ったら、イノシシだけじゃなく、周りも焦げたから」
「手加減せんか」
「いやぁ?手加減できてるはずだよ?」
私の中ではね。
手加減しているけど、わからないよねえ。
処理が終わったから、馬車でまたしゅっぱーつ。
ゆっくりだけどね。
ここが卵のある場所に近いし。
昼食・・・のまえに、ついた。
湖?
の中心に、矢印あるんだけど。
水に潜るのか・・・
「この下にあるのか・・・」
泳げないわけではないし、まあいいか。
入るわ。
「ちょ・・・師匠?」
「ん?」
「何、当たり前のように、なんの準備もせずに、水に入ろうとしているんです?」
準備?
あ、水着とかに着替えるってこと?
着替えないけど。
このままで平気だし。
「いやいやいや。水中で、呼吸できないでしょう!」
あ、そうか。
忘れてた。
ゲームの中でも、何も考えずに、水中に入ってたからね。
呼吸・・・
してたかな?
「私にそれが必要か、というなら、答えは否だな」
「なぜですか」
「プレイヤーだから、かな」
プレイヤーのそのままの体だから、水中だろうが、呼吸を必要としない。
「それじゃ行ってくるね」
いつも着ている服は、別に濡れても大丈夫だし、水着もあるけど、着替えるの面倒だしね。
水に入っていく。
あ、靴は水につかると重くなっていくね。
まあ関係ないけど。
あるく。
泳がない。
ただただ水の中だ。
だけど見える。
普通に見える。
あ、魔物もいるなあ。
私ひとりだから、ただ、中に続いている矢印に向かうだけ。
サカイの心配している呼吸はしていない。
やっぱり呼吸の心配も、水の抵抗もないんだ。
私はゲーム仕様なんだろうな。
結構長く歩いた。
その間に襲ってくる水痛の魔物を倒す。
うん。
ただの雑魚だ。
どのくらい歩いたろう。
何かに触れた。
ああ、これは、竜の卵から出ている、結界。
そうだよね。
魔物に襲われたらたまったものじゃないから、自分より弱い魔物は入れないようになっているのか。
タマゴのレベルって、どうなっているんだろう。
プレイヤーの魔力。
それに反応して、この結界は解かれるはず。
ゲーム知識だけど。
両手を結界に触れさせ、魔力を込める。
魔力だけは豊富だ。
パチン
何かがはじけた音がした。
うるさいな。
水の中だから結構響くのかな。
消えた結界から、また少し進む。
あった。
私の体の半分くらいの高さの卵。
両手で抱えられる。
タマゴを持ったら、やることは一つ。
この場所で、足に魔力付けて、猛スピードで浮いていく。
魔物?
追いかけてくるけど、追いつけない。
ばしゃん
すごい勢いで湖面から浮く。
外は真っ暗。
結構時間が過ぎていたらしい。
入ってきた陸はどちらだろう。
「んー?」
あ、あった。
光が見える。
あ、焚火かな。
そちらに向かって飛んでいく。
あー。
やっと着いた。
おなかすいたー
「ただいまー」
「師匠!」
サカイが初めに反応した。
いや、シツジローくんもメイちゃんも気づいていたのだろうけど、ご飯作ったりしていて、手を止めないね。
空の人は持っている卵に目が釘付けだ。
そして、落胆した表情。
まあわかってたよ。
湖になっているくらい昔にできたクレーターだよ?
違うのはわかっている。
タマゴはとりあえず馬車に保存。
それでいいか。
今日はここでご飯だー。
あと何個あるのかなあ。
矢印がまだあるからね。




