20~奥様は・・・~
やっとジューノ雑貨店に行きます
朝。
朝市。
ではなく、今は昼。
わかってましたよ。
私は起きられないって。
メイちゃんとシツジローくんと運営さんが言ってきたらしい。朝市。
昼までやってればいいのに。
野菜と肉を買ってきていた。
食器類とかもあったそうだけど、使う分なんて作っちゃえばいいからいらない。
大量の食材は、馬車から拠点に戻って、保存しておくそうだ。
いろいろな野菜の種も買ってきていたから、家に戻ったら育てるのかな。
プラント母さんに任せれば、虫とかは取ってくれるだろうしね。
顔を洗って、朝食兼昼食。
昨日の子が呼びに来たらしいけど、まだ寝ているからと断ったそうだ。
朝市はその子が案内してくれたのだという。
やはりメイちゃんの料理はおいしいな。
ここで料理を作っている人には、だれも文句言わないのかなぁ。
安かろうまずかろうじゃ、ダメだと思うの。
食事がすんだら、今日はジューノさんの雑貨屋だ。
といっても、新しいものはないんだろうけどね。
二階まで降りると、恰幅のいいおばさんがやはり受付にいた。
ジューノ雑貨店の場所を聞く。
ここから1ブロックほど先らしい。
歩いていける距離だ。
酒場は昼間は静かだった。
といっても、ちらほらお酒飲んでいる人もいるし、ご飯を食べている人もいる。
この宿のいいところは、酒場と宿屋の場所が仕切られているところだと思う。
入り口は同じでも、宿屋への廊下と酒場が壁で仕切られているから、酒場の酔っぱらいがこちらに絡んでくることはない。
外に出ると、結構通りが盛んだった。
当たり前か。
「ウーマの様子を見てきます」
シツジローくんはここで別れた。
私たちはジューノ雑貨店だ。
雑貨店までの道のりはいくつもの店・・・ではなく、全部宿屋だった。
なんだここ・・・
暇そうに外に出て呼び込みしている人もいる。
確かに門外のあの混み用なら、これだけあっても足りないのかな、宿屋。
宿屋ばかりの場所を過ぎたら、商店街だった。
様々な商品が、通り道に見えるように並べられている店もある。
武器屋も防具屋もあるなぁ。
あ。薬屋さんだ。薬草あるかなぁ。
「寄って行かれますか」
私の考えが読めたのだろうか。メイちゃんから声がかかる。
ちょっと寄っていくかな。
ガラス戸でできた扉をくぐる。
薬草なのか様々なにおいが混ざったにおいが鼻についた。
「うっ」
顔をしかめるが、店の人は気づいていないようだ。
それどころかこちらを見もせず、何かをしている。
店内に並べられた薬草類をひそかに鑑定。
Fばかり。しかもしおれているし。
・・・ゴミじゃないかな・・・
「あの、すみません?」
声をかけると気が付いたようだ。
こちらに顔を向ける。
モノクルをかけた気位の高そうな男性店主だ。
「なんだね」
「癒し草探しているのだけど、もっといいのないですか」
「これ以上のものなどない」
え?ほんとに?
ゴミしか売ってないの?
「ポーションが欲しいのか。そちらにあるだろう」
店の奥に薬棚があり、そこにポーション瓶が並べられてる。
ポーションもどきだ。
「いや、こんなごみじゃなくて、癒し草」
ゴミ売りつけられても必要ないし。
「失礼なことを言うな!」
怒鳴られた。
いや、これがごみじゃなかったら、何がごみよ。
「すみません」
あやまっておくか。それが大人の対応だ。
しかし、癒し草ないのか。
いや、枯れているのはあるんだけどさ。
これ以上はここに用はないなぁ。
「まったくこれだから近頃の若いもんは・・・」
何か文句言いだしたよ。
めんどくさ。
「あー、じゃ、買取とかしてませんか」
「ものによる」
ものによる、ね。
ううーん、作った下級ポーションでいいか。
五本出しておけば文句ないよね。
「これです」
下級ポーションを出す。
「ふん・・・これは・・・本物のポーション・・・」
疑わしそうな表情から驚きに代わる。
本物しか持ってないよ。
しかも、それ、盗賊に使ったものの残りだし。
「なぜ、こんな小娘が…」
小娘言われたー。
確かに、見た目小娘だけど、中身は三十路のおばちゃんです。
「盗んだのか!」
なぜそうなる?
「私が作ったのだけど?」
「うそをつくな。小娘に作れるようなものじゃない」
なんだと!
偽物しか作れないくせに、何て言い草よ。
「だれか!守衛連れてこい」
偉そうな店主の声に置くから何人かが出てきて、外に走り去っていく。
しかも、扉のとこにも何人か張り付いた。
ここってこんなにも人がいたのか。
「すぐに守衛が来る。ここは門も近いからな」
守衛って、門番さんたちか。守衛長さんが来てくれるといいなぁ。
と思って待ってたら、守衛長さんが来た。
「やはり君か。どこかの小娘がポーションを盗んで売りに来たとかいう訴えだからな」
「盗んでませんし」
「わかっている。プレイヤーだから自分で作ったのだろう。店主には言っておく。もう行きなさい」
「ありがとね、守衛長さん」
もうこんな店には来ないわ。
気分悪いし。
今停まっている宿のことを守衛長さんに教えて、店を後にする。
寄り道なんてしないで、ジューノ雑貨店に行けばよかったわ。
ジューノ雑貨店。
この商店街では一番大きな店舗を誇るという。
確かにほかの店舗の五軒分くらいある。
木造だし、三階建てだ。
店舗兼住居なのかな。
入り口は、開かれている。
入ってすぐは、なぜか野菜とかおいてある。
棚には食器や生活用品も並んでいる。
雑貨屋さん・・・なのね。
私のイメージと違ったわ。
「いらっしゃいませ」
獣人の女性だ。
きつね獣人さんだ。美人だなぁ。
「何かお探しですか」
「ここなら調味料があると、店主のジューノさんに聞きまして」
「まぁ、主人の知り合いの方でしたか。あいにくまだ行商から帰ってきてません。申し訳ございません」
ん?主人?
「あの、もしかして、奥さまですか」
「はい。主人が帰ってくるまでは私がここを仕切らせていただいております」
ええ!
狸獣人の奥様はきつね獣人だった。
意外だったわ。
「すごいですね。・・・あ、それで、調味料などをいただきたいのですが」
動揺している場合じゃないわ。
おいしい食生活に欠かせないものを手に入れに来たのよ!
「調味料はこちらでございます。今はあまり多くはありませんが、主人が行商からから帰ってきたら、ほかにも増えましょう」
うっ。
もう全部買い取ってしまいました、それは。
「ここにあるものはぜんぶください」
調味料は大切なのよー。
買っておかないと、家に戻っても次にいつ来るかわからないし。
どこかにポータルの出口作っておこうかしら。
そのあとは少し話をして、今停まっている宿屋を教えて、去る。
うん。
味噌とか醤油が手に入らなかったけど、塩や胡椒はあったし、何とかなるか。
「ほかに何かあるかしら」
「スレイプニルの様子が見なくてもいいいのか」
「様子・・・って、シツジローくんが連れてきているウーマの様子?」
いつのまにかシツジローくんがウーマを連れて遠くからきている。
やはり馬車馬を預けているところでは、運動が足りないわよね。
「お嬢さま、少々問題が発生したので、引き取ってまいりました」
「そう。やはりおうちのほうに帰しましょうね。走り回りたいのでしょうし」
ポータルで返して、ウーマは好きに走らせればいいかな。
「そのあとでお話が」
「宿で聞くわ」
何やら問題が出てきそうだけど、お出かけはおしまいね。
夕方になって、人通りが余計に多くなった気がする。
宿の酒場も人が多いな。
さて、どんな厄介ごとなのだろうか。
まだまだ続きます。




