190~面倒ごとは勘弁してほしい~
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アイリーンの人の名前を覚えられないのは、ここでも発揮されています。
この郷の専任冒険者は、マークとビイトだけではない。
あの二人を指導してくれる冒険者さんもそうだ。
その冒険者さんに今日は呼ばれている。
腕の人・・・だったか。
名前忘れちゃったわ。
「俺たちの個人名覚えなくてもいいから、冒険者チームの名前だけでも覚えててくれよ」
違うらしい。
何だったかなあ。
「鋼鉄の腕、だ」
あ、近いものがあった。
「で?その、腕さんが、なんの用?」
私からは、そんな用事がないからね。
「実はさ、このマジックバッグのことなんだけど」
時間経過なしのバッグか。
何か問題でもあったのかな。
「冒険者の知り合いが、欲しがっててさ。プラム郷のマークはいっているだろう?そこで売っているのかと問い詰められてな」
「問い詰められたって、売ってないけど?」
「そうなんだよ。でも、郷のマークがあるということは、郷に何か関連しているところからもらったんだろうって」
いや、まあ、確かに、プラム郷の名前を広めるために作ったようなものだから、それは嘘じゃないよね。
ただ、マジックバッグは作れる人がいないのが問題なんだよね。
「時間経過なしの商人馬車程度の大きさでいいなら、すぐできるけど・・・」
そういう問題じゃないよねえ。
きっと、売り出してほしいという要望でもあったのだろうから。
腕さんが言うには、マジックバッグは、結構な金額するらしい。
腕さんたちに渡したのは、郊外の畑一枚分の大きさだったかな。
でも、出回っているマジックバッグって、時間経過ありの、背負子程度でも、金貨15枚はするのだとか。
そんなの、役に立つの?
でもどうやら、マジックバッグ自体が、ダンジョンでしか手に入らないから、手に入れたものは、買取に出さないのだとか。
なので、時々、手放さなくてはならなくなった財産の中に入っていることがあり、それがオークションに出るのだという。
「そうなんだ」
よくわからないけど、腕さんの知り合いの人は、もっと大きなのが欲しいってことだよね。
「腕さん、聞いていい?もし、プラム郷で、腕さんが持っているくらいのマジックバッグを売り出すとするよ?いくらが相場かな?」
「バ・・・バカか!こんなすごいの売り出したって、一般冒険者が買える額じゃないのわからねえのか!」
「でもその人は欲しがっているんでしょ?」
「そいつだって、俺たちと変わらんから、あまり金はないよ」
「そうなんだ・・・マジックバッグ自体、そんなに出回らないのかなあ」
プレイヤーはみんな持っているものなのに。
空間魔法もあるから必要ないけどさ。
「なのに欲しがっているってことは、何か特出した才能でもあるの?」
「いや、わからん。ソロ活動しているから、もしかしたら、荷物があまり持てないからかもしれん」
「そっかあ。・・・わかった。とりあえず、商人馬車くらいのでいいなら作るよ」
「代金は、こちらが勝手に決めていいのか?」
「この郷の税金の足しにするから、安いのはだめ」
あくまでプラム郷のためのものだからね。
「・・・う~ん。金貨50枚にでもしておくか」
「20枚で売ってあげなよ。・・・考えたのだけど、プラム郷で売り出そうと思うから。その時は同じ大きさで30枚かな」
「いや、それだと、どうしてそいつが安く手に入ったのにって話になってこじれるから、そいつからも金貨30枚なら売ってやるといっておく」
「・・・わかった。さっそく作るから、一日待ってて」
めんどくさいけど、プラム郷でマジックバッグの売り出しの先駆けにしましょうか。
あ、でも、これもリアさんたちに相談しておかないとうるさそうだし、相談しにいかないとなあ。
面倒ごと引き受けた気がするな。
まあでも、売れないだろうなあ。




