148~私は気ままでいたい~
いつもお読みいただきありがとうございます。
居眠り女主人公、怒りのまま、暴走中。
馬車が走り抜ける。
どこまでも蝗害のせいで、私の!大切な!コメが!なくなってる。
大切なことなので…ということは言わないけども!
私が求めていたものをことごとく食べつくしていく、この虫たちをどうしてくれよう。
いや、それよりもだ。
感じている。
その魔力。
ここに、今、ダンジョン核がある。
正しくは、そのひとかけらがあるといえるのだと思う。
ダンジョン核は、ばらばらになることはないけども、ダンジョンの各層の運営として、小さなかけらみたいなものを作っていくのだそう。
それをひとつづつ破壊して、全部の層を踏破していくのが、プレイヤーのダンジョン攻略だから。
だからこそ、ダンジョンキラー。
新しいダンジョンを次々と作ってもらうために、プレイヤーはダンジョンを破壊していく。
それがゲーム内の楽しみでもあったから。
運営さんは大変だったのだろうけども。
ああ、もしかしたら、仕事で忙しいのは、ほかのワールドでも、同じことをやっているプレイヤーがいるのかもしれない。
階層にあるダンジョン核のかけら、と呼んでいるものを壊すと、その階層のボス部屋まで一気に行ける。
それをしらみつぶしに探すのが、プレイヤーのダンジョン攻略でもあるんだけど、この世界では、その魔力を感じているから、それを追いかけているところ。
移動している。
その魔力をおって、ウーマを走らせる。
私自身は、御者台。
魔力感知した場所に、魔法を放つ。
・・・また逃げられた。
空だったり、地面だったり、木の間だったり。
田んぼの中だったりもする。
そこに向かい、魔力を放出しては、舌打ちを繰り返す。
ゲームとは違って、逃げるからだ。
「少しは冷静になれ、アイリーン」
いつの間にか横に運営さんが来ていた。
冷静も何も、あんたがこのダンジョン核を作ったんでしょう。
「ほかの者たちが、何が起きているのかわかっていない。チームで来ているのだから、チームの者たちと意思疎通を図るのも、プレイヤーとしての務めだろう」
うっ。
確かにそうだけど・・・
でも、やっぱりこのダンジョンは許されない。
私が目覚めてから、パンやパスタばかりの食事に、どれだけ辟易しているか、だれもわからないからだ。
コメ、みそ、しょうゆ、の美味しい世界が、目の前で壊されていくのは耐えられない。
でも私は、アラサーだ。
大人にならなければ。
「ごめん・・・」
「わかればいい」
「無理だわ」
うん。
無理だわ。
私はここで自由に気ままに生きていたいんだから。
ウーマが走り抜ける。
景色が変わらない。
・・・ん?
先ほどの田んぼは、私が魔法で穴を開けたところだ。
冷静になろう。
同じところに打ち込んだ?
いや、ちょっとずれているのか。
でもあの辺りに、再び移動したということは・・・
いやいやいや。
今までも、穴が開いたちょっと近くのところに打ち込んでいると。
ということは、あの範囲が、ダンジョン核が移動するために何かがあるということ。
次はあそこ。
そのつぎは・・・
「ウーマ、次の地面で決着をつける、少し緩めて」
魔砲弾を撃ち込んだ。
次はもっとでかいのを撃ち込む予定だ。
半径どれほどの距離に、ダンジョン核が移動できるのかわからないけど、大穴を開けてやる。
隣で運営さんがため息をついているけど、知らない。
両手に意識を持っていき、巨大な魔砲弾を作り上げた。
投げつける。
・・・やったか。
ダンジョン核のかけらが、そこから動いていない。
砂煙の舞う中を降り立つ。
小さなガラスの破片のようなものが、そこにある。
手でつかむとすぐわかる。
ダンジョン核のかけらだ。
魔力で閉じ込め、馬車に戻る。
ああ、今は眠い。
魔力の使い過ぎ。
起きたらこのかけらを処分しよう。
クッションに倒れこんで、もう・・・ねむい・・・
お読みいただきありがとうございました。毎週水曜日更新しています。
誤字脱字報告、評価も、いつもありがとうございます。
不定期連載で、違うお話も書き始めました。興味があったら読んでみてください。
「追放王子と生態系調査人」
https://ncode.syosetu.com/n4898ho/




