147~こ・・・これは~
お読みいただき檻画等ございます。
居眠り女主人公、ダンジョン攻略中。三層目です。
毒沼フィールドから、次の場所へ移動。
おお。
青空広がる、田園風景のフィールド。
そう。
田園。
何とここにはコメがあった。
入ってすぐ、私は呆然としたわ。
まさか、黄金に輝く稲穂が首を垂れ、風にそよいでいるのですから!
ああ、日本人ならわかってもらえるでしょうか。
コメが欲しいとずっと嘆いていた私の気持ちを。
今すぐに刈り取って、持ち帰って・・・
ああ、でも、乾かしたりとか、精米とか。
私にその技術はない。
でももしかしたら、運営さんが、農業に詳しい人の何かを持っているかもしれない。
ああ、涙が出てきたわ。
やっと会えた。
お米。
「ねーちゃん、なんで泣いているの?」
「エイト・・・、これがコメなのよ。私の食べたかった・・・」
言葉にならない感動だわ。
「これは刈り取れるのかな」
「アイリーン、ここはダンジョンだ。刈り取ったらドロップ品になるだけじゃないのか?」
「ああ!そうだった・・・」
そんな・・・
もし、ドロップしたものがコメじゃなかったら・・・
どうしよう。
刈り取るのも考えるなあ。
「ちょ・・・ししょー!」
はっ!なに?
コメの世界に浸ってたわ。
「な・・・なに?」
「あっちの空が、くろっぽく・・・・?」
?
なに?
いやな予感がする。
馬車と周りに結界。
すぐに虫の羽音。
え?
虫?
そうだ。
ここは虫ダンジョン。
・・・・まさか!
一瞬で黒い虫の大群。
黒じゃないかもだけど。
結界に当たるけど入っては来れないけど、向こう側が見えない。
しばらくしてやっと見えるようになった。
「え・・・?」
私のコメが・・・ない?
先ほどまでこうべを垂れていた美しき稲穂が、どこにもない・・・
「う・・・運営さん?」
何が起こったの?
え?
なんで?
「先ほどの大群が食いつくしていったのだろう。・・・蝗害という」
「こ・・・・こうがい・・・」
聞いたことある。
イナゴだかバッタだかが、稲穂をダメにするって。
え?
いまの・・・が?
「私のコメは・・・」
「先ほどの虫の集団が食べつくしていったようだ」
は?
今の、あの黒い虫が?
いや、黒じゃない。
バッタ?
イナゴ?
「ふ・・・ふ・・・・ふざけんなあ!」
殲滅してやる。
私のコメを食べつくしたあいつら、許さん。
このダンジョンも許さん!
怒りで体が震ええるわ。
ダンジョンキラーというのが、プレイヤーの別名だと、このダンジョンにわからせなければならないようね。
「私のコメを、こんなにするなんて・・・」
ああ、もう怒りでいっぱいだわ。
私からコメを奪おうなんて、ダンジョンとしては未熟だってこと覚えて起きなさいよ。
「こんな、コメの残骸の世界を行かなきゃいけないなんて・・・」
走り出した馬車の中で、泣きそう。
ウーマはボス部屋に向かって、ではなく、私が指示したほうへ進む。
絶対にこのダンジョン、許すものか。
お読みいただきありがとうございました。毎週水曜日更新しています。
誤字脱字報告、評価も、いつもありがとうございます。
不定期連載で、違うお話も書き始めました。興味があったら読んでみてください。
「追放王子と生態系調査人」
https://ncode.syosetu.com/n4898ho/




