135~なんで問題が起こるのよ~
あけましておめでとうございます
新年一発目でございます。
今年もよろしくお願いします。
居眠り女主人公は、面倒なことは考えない人です。
「大変なことになった」
がるがるさんから、プラム郷の冒険者ギルドを通して連絡が来た。
ので、今、王都中央部の冒険者ギルドのギルド長の部屋にいる。
がるがるさんが頭を抱えていて、ため息しかついていないので、話しだすのを待っているところだ。
時は少しさかのぼって、一刻ほど前のこと。
準備が終わったので、翌日にはダンジョンに行くために、プラム郷の冒険者ギルドを訪れた。
クロークさんが、ついた途端に駆け寄ってきたのだ。
どうやら、うちに来ようとしていたらしい。
がるがるさんからの緊急の通信が入ったとか。
毎日のように、スズランのこと聞いているくせに、なんなのよ。
それで、すぐに王都中央部のギルドに来てほしいとかいうから、仕方なく、メイちゃんとシツジローくんとスズランを引き連れて今やってきているというわけ。
ギルド長の部屋に通されて、ずっと、がるがるさんがうなっているのをただ見ているだけ。
サカイはいない。
どこ行ったんだろう。
「大変なことになった」
それしか言えない置物だったか?
「大変なことって何よ」
「きっともうすぐ来る・・・」
またうなりだす。
だから何だっていうのよ。
「パパ、何をそんなに困っているの」
「うん・・・ミュゲ、お前やはり行くのをやめないか?」
「いや」
スズランはきっぱりした子だわ。
どちらに似たのかほんとに知りたいわ。
ノックの音とともに、サカイが帰ってきた。
こちらも困ったような疲れた表情している。
「ししょう・・・いらしてくださったのですね」
「来たけど、何も話さないのよ、なんなの?」
「・・・っはあ・・・とにかく下に来ていただけませんか」
「それで何かわかるの?」
「・・・はい・・・」
歯切れが悪いな。
ほんとに何なのよ。
いつも騒がしいギルドが静かなのも、それが原因なのかしら。
下に行くと、なぜかいつもの冒険者たちが壁際によってる。
中央には…なんでいるんだ?
「よう、アイリーン」
「はあ?また、護衛さん撒いてきたのですか?あなた、王様なんでしょ?」
この国の王様と、サカイ様が椅子に座って、安酒あおってる。
なんなのこの光景は。
「アイリーン殿、ひどいじゃないですか。ダンジョンに行くと、孫から聞きましたよ」
「まご?」
「ブルームですな」
そういえば、孫なんだっけ。
・・・スズランはひ孫?
じじい、いくつなんだ?
「プラム郷のダンジョンに行くけど、それが?」
近くの椅子を引っ張って、同じテーブルにつく。
なぜかすかさずメイちゃんがお菓子を用意してくれて、おっさん二人はそれを食べ始めている。
「わしも連れてってくれ」
「はあ?さっきも言ったけど、あなた一国の主でしょうが」
何言っているんだ、こいつ、よ。
「ダンジョンだぞ!しかも未踏だというじゃないか、行きたいじゃないか」
「いやいやいや・・・」
「わしらでも結構きつい、あの虫がいるダンジョン。あそこに入ってみたいのはやまやまだが、許可が出んのでな」
王様に許可出す奴いないよ、ダンジョンよ?
「アイリーンのパーティに入ればいけると聞いた」
「行政はどうするのよ」
「そんなものは、王をやめればいいだけのこと。息子ももういい年だ。さっさと譲ろう」
「王妃様はどうするのよ。いつ帰れるかも、無事に帰れるかもわからないでしょ」
「一緒に連れていく」
「はあ?」
意味わからん。
いやいやいや。
どういうこと?
「ん?大丈夫だ。正妃はな、実は、隣国のおてんば姫だったよ。冒険者していて、ダンジョンであったんだ」
あ、おっさんの語りが始まりそう。
やめて、長くなりそうだし。
「でももう長く何もやってないでしょ」
「そんなことないぞ?今でも魔獣が出たら乗り込んでいって、爆破させてくる魔女だ」
「まじょ・・・」
「冒険者で爆炎の魔女と呼ばれる二つ名を持つ方が、王妃様ですな」
サカイ様がこっそり教えてくれた。
公然の秘密なのか。
というか、ここって、大丈夫な国なの?
トップが脳筋・・・
「なので一緒に行きたいと言い出してな」
それが困ったことでな、といっているけど、困ってないよね。
むしろ困っているのは、周りの人だろうよ。
「なので、わしと王妃も一緒のパーティーに入れてくれ」
「えー・・・」
別にいきたいって気持ちは尊重するよ。
私はこの世界では非常識というのが売りのプレイヤーだからね。
でも、いいのかなあ。
「明日にはいくんだけど」
「大丈夫だ。冠渡してすぐに行ける」
そんな簡単なものじゃないでしょ、戴冠って。
「どうせもう、ほぼほぼ息子がやっているから、こっそりいなくなってもばれないし、息子夫婦には話してある」
「わしもだ」
「え?サカイ様も?」
「行きたい」
「おじいさま、ダメに決まっているじゃないですか!」
サカイが焦ってる。
そりゃそうだよね。
「わしはこの話が出たときに、すでにお前の父親に譲って隠居の身だし、独り身だから、いいんだ」
いや、よくないよ。
何言ってんだ、このじじいも。
「え、おじい様も行くの?」
「そうだぞ、ミュゲ」
「たのしそう。ししょー、いいでしょ」
ミュゲはうれしそうだな。サカイ家の血が流れているものとしては、一緒に冒険したいのかもね。
「いいよ」
弟子には甘いのです。
「師匠!自分はだめで、なぜ!」
「あんたは、書類仕事があるでしょ。その条件で、スズランがいけるんだから」
「ひどい・・・」
誰がひどいんだよ。失礼な。
だけど、王様と王妃様ねえ・・・
まあいいか。
「出発一日伸ばすしかないかあ。・・・じゃあほら、さっさとパーティ登録しちゃうから、ギルドカード出して」
「まて。王妃を連れてくる」
そういや、いないわ。
「師匠!何言っているんですか!」
「なにって、ダンジョン行くためのパーティ申請?サカイも早く手続きの準備してよね」
めんどくさいから、もう、何でもいいや。
さっさと終えて、ダンジョン行きたいし。
あー・・・メイちゃんのお菓子、おいしい。
しばらく待っていると、王様が奥様の王妃様を連れてきた。
え?
私は別に首を垂れる気ないよ?
いまさらだよ。
「はじめまして。あなたがアイリーンちゃんね」
「お初にお目にかかります。・・・王妃様」
「あらいやだ。他人行儀ね。ナタリア・ランギット・グリーンバズスよ。私のことは、リアって呼んで頂戴」
おお・・・
なんてフレンドリーな人。それに、どう見ても若々しい。
え?
いくつなの、この人。
王様、孫もいるんですよね?
それよりも、護衛さんはどうした。
まいてきたのか・・・
「それじゃ、えーと・・・リアさま・・・」
「リアさまだなんて他人行儀」
いや、他人だわ。
「ああ、じゃ、えーと・・・リアさん、は、いいんですか?」
「もちろんよ。魔獣退治も楽しいけど、ダンジョンよ。故郷の国にいたころはダンジョンめぐりが趣味だったのよ」
楽しそうだ。
「そうですか。あ、パーティ登録して、ダンジョンへの同行の手続きを」
これで何とかいけるかな。
がるがるさんが真っ青になって頭抱えているけど、自分の国のトップを恨んでね。
ああ、でも、また、布買ってこないとね。
三人分のふかふかクッション、メイちゃんに急いで作ってもらわないとね。
運営さん、帰ってきてよ。
ちょっと寂しいな。
お読みいただきありがとうございました。毎週水曜日更新しています。
誤字脱字報告、評価も、いつもありがとうございます。
不定期連載で、違うお話も書き始めました。興味があったら読んでみてください。
「追放王子と生態系調査人」
https://ncode.syosetu.com/n4898ho/




