126~見覚えあるおっさんが来た~
お読みいただきありがとうございます。
居眠り女主人公、王都中央部の家でまったり。
冬も本格的になってきた。
寒い。
私は王都中央部の家にいる。
まだこちらのほうが、寒さが弱い気がするから。
私は寒いのが苦手。
冬眠は・・・人間だからなのか、できないのよね。
<いや、できるだろ、アイリーンなら>
あ、運営さん!きいていたわね!
できないったらできないの!
あ、なんだか笑い声が聞こえる。
そんなとこで笑っているなら、仕事終えて戻ってきなさいよ。
こたつで寝転んでダラダラしていたら、メイちゃんがお客だと知らせに来た。
「ここに通して」
私が出ていくつもりはない。
入ってきたのは、前にも見たことあるおっさん。
・・・だれだっけ?
「お嬢さま、国王陛下でございます」
「ああー」
そうだった。
サカイ様と一緒にきたおっさんだ。
・・・この人も護衛付けないでよく来られるわよね。
こたつにあたりまえのように入るし。
「どうしたんですか」
敬語?
そんなものは前世に忘れてきたわね。
「この前、サカイが、プラム郷で祭りに参加したといっておってな。どうして呼んでくれないんだ」
「呼ぶも何も、あなた、王様でしょ。気軽に呼べないでしょ」
何言っているんだ、この王様。
「こうしてこっそり出てくるくらいは簡単なんだぞ」
「それって、護衛の方々を撒いてきているんですよね?いいんですか?」
「まかれる護衛が悪い」
確かに。
そんな護衛じゃ、役には立たないな。
「わしもイッセーシュリンプ食べたかった」
それが目的か!
「サカイ様に持たせましたよ。分けてもらえばいいじゃないですか」
「奴はイッセーシュリンプが好物なので、分けてくれぬ」
「ああー、はいはい。残っているのを、もたせますよ」
「ちがう!すぐに食べたいんだ。・・・いいかね、アイリーン、王城には、毒見係というのが複数いる。まずは作ってすぐ、その次は持ってくるもの、並べるもの、口に入れる前にさらに一人。その者たちが食べて残ったものを口にするのだ。それまでに、おいしいところはほぼ失われ、冷め切った食事が提供される。もちろん命にかかわることだからと、配慮されているのだから、文句を言ってはいけないが、まったくおいしくない」
それはまずそうだ。
はっきり言って残飯食べさせられているようなものだよね。
ここの王様、大変だ。
「わかりましたよ。・・・メイちゃん、作ってきてあげて」
「かしこまりました」
イッセーシュリンプを取り出して、渡す。
三十尾ほどでいいよね。
あと、トライデントタウロス。
もう、肉の塊だけど。
祭りで使って、プラム郷にも置いてきて、さらに残ったからね。
今年は食べつくす人たちも、そんなにうえてなかったようだし。
しばらくたわいない話、というより、おっさんの愚痴を聞いていると、おいしそうなにおいが漂ってきた。
様々なイッセーシュリンプの料理が、こたつテーブルに所狭しと並べられる。
ご飯の時間だから、いいよね。
「ここには毒見いないからね」
「おお!いいただこう」
焼いただけのイッセーシュリンプを、強引にわしづかみして、食べ始めるおっさん。
熱い!とか言っているけど、嬉しそうだな。
私は自分の一人前を食べ終わるころには、おっさんのおなかの中にのこりが全部入ったようだ。
シュリンプのからしか残ってないよ。
肉も何枚食べたのか。
「そんなに飢えているの?」
王様なのに?
「うまいものは、いくらでも入る。気を使って食事するよりも、こうしてたくさん食べるのは、いつぶりだったか。サカイと戦場を回っていた時は、食料の取り合いもしたものだ」
朗らかに笑いながら話しているけど、何やっているんだ、あのおっさんもこのおっさんも。
食後のデザートに、メイちゃんがケーキを持ってきた。
イチゴではなく、プラントルビーが乗っているし、間にもプラントグレープが挟まっている生クリームのショートケーキだ。
ナッツも入っているな。
「こ・・・これは・・・」
おっさんが目を見開いているけど、私は食べる。
イチゴショートも食べたいなあ。
うん。
ブドウのショートケーキもおいしい。
「こ・・・こんな貴重なものを」
「嫌いなら食べなくていいよー」
「いや、いただく」
おいしいものを食べているときの顔って、おっさんでもいいものだね。
「ほかの家族にも、こんな温かくてうまいものを食わせてやりたいものだ」
「一気にはお断りだけど、奥さまくらいは連れてきなさいよ。うちなら、いるときは、ごちそうできるし」
「いいのか?」
「私はプレイヤーだからね。毒で国王暗殺なんてしないよ。するなら、国全部ぶっ壊すって」
手を振りながら言うと、そうだなって、おっさん納得。
いやいやいや。
納得すんな。
「お嬢さま、お客様です。・・・サカイ様です」
「ああ、こちらに通して。・・・ケーキも出してやって。私と王様の分も」
「かしこまりました」
下がりながら、そっと、強力消臭剤を部屋のすみにおいていくシツジローくん。
いい配慮だわ。
寒いから、窓開けたくないしね。
サカイ様も来て、ケーキとお茶で、三人で会話。
というか、王様がサカイ様に怒られてる。
なんだこれ。
午後もそろそろ陽がくれるころに二人が帰っていったけど、大丈夫なのかな。
小さなポーチ型のバッグに、ちょっとしたバスケットほどの空間魔法を付けて、プラントルビーのショートケーキをワンホール入れて、王様に持たせる。
サカイ様にもだ。
こっそり、家族と食べてくださいね。
しかし、おっさん臭がひどい日だったなあ。
疲れたから、寝よう。
運営さん、おやすみ。
お読みいただきありがとうございました。毎週水曜日更新しています。
誤字脱字報告、評価も、いつもありがとうございます。
不定期連載で、違うお話も書き始めました。興味があったら読んでみてください。
「追放王子と生態系調査人」
https://ncode.syosetu.com/n4898ho/
不定期すぎて、更新はいつとは言えません。




