117~エイトの登録~
いつもお読みいただきありがとうございます。
居眠り女主人公、今回は、エイト君の冒険者登録に付き合っております。
秋も深まったころ、ギルドの職員もそろい、プラム郷のギルドが始動した。
これで、冒険者さんたちも、この近くで買ったものは換金できるし、考えてみれば、この近くのダンジョン、まだ誰も踏破してないんじゃないかな。
ダンジョンは浅そうに見えるけど、どうなのかわからないし、私にはザコだけど夏に出てくる蛍のレベルを考えると、厳しいのかもしれない。
一階層にいるものがあふれてくるって話だから。
あ、がぜん興味出てきた。
いちど潜ってみようかな。
でも、最初から虫だしなあ。
私は虫は嫌いです。
宿に泊まりに来ていた冒険者さんたちも、ここにギルドができてすぐ、換金始めているし、それで宿の美味しい料理さらに食べようと、泊まるのが長くなっている。
いいことなんだけど、ほかに行きなさいよ・・・
ここでは、武器屋防具は、なおせないんだよ、まだ。
でも今日は、そんなことはどうでもいい。
なぜかというと、プラム郷の住人の冒険者登録の日だからだ。
兄のほう。
エイト、だったな。
今、目の前にいる。
弟のほうはまだ年齢が達していないから駄目。
マークもだ。
エイトの冒険者になるための許可は、きちんとご両輪に取った。
いいかな?っていったら、なんなく許可くれたんだけどね。
「いいかね、エイト君」
「はい、師匠」
いや、私、あなたの師匠じゃないから。
「今から、冒険者登録行くから、ついてきなさい」
「はい!」
いい返事だ。
まあ、門の外に出るだけだし、なぜかジャムさんもサカイもくっついてきているし、弟のほうもマークもナナもいる。
「今日の登録は、エイトだけだよ」
「だって、姉ちゃん、オレだってみたいー」
中に入りたいらしい。
まあいいか。
弟のほうも許可は取ってあるしね。
「ナナはまっていようか?」
「ナナもいくー。ナナはいつかぼうけんしゃになるの」
うん。
反対。
ナナは、冒険者にはしたくない。
「マーク、ナナ泊まっていられるわね?」
「えー。ビイトも行くのに、なんでおいていくんだよ」
このおこちゃまたちめ。
「ギルドには怖い冒険者だっているかもしれないよ?」
「来年にはいくんだし、いいじゃん」
口の減らないおこちゃまだよ。
「師匠、自分がみてますから」
サカイ・・・
役に立つかわからないというのに。
まあ、いいか。
違うところとはいえ、副ギルド長。
権限はある。
ジャムさんもいるから何とかなるだろうか。
「私たちから離れないようにね」
「「「「はーい」」」」
返事だけはいいおこちゃまどもめ。
ギルド内は、どこも同じだって言ってた通り、入ってすぐは、いすやテーブルが並んでいて、待っている人たちの場所だとわかる。
壁際にはボードがあり、そこに依頼が張られている。
始動したばかりでもう依頼?と思うだろうけど、冒険者ギルドのボードはいくつかあって、基本ボードといわれているものには、同じものが貼られているそうだ。
低ランクの者たちへの、採取依頼がそれにあたる。
年中依頼と呼ばれるものだ。
あとは、地域性のある依頼。
これは、その冒険者ギルドによって違うらしい。
ここのは・・・
誰だ、依頼したやつ。
もう、いくつか貼ってあるよ。
だけど今日はそれには興味ないから、ムシムシ。
ちょっと奥に進んで、カウンター。
いくつかあって。
冒険者登録のカウンター。
依頼を受けるカウンター。
報告用のカウンター。
買取カウンター。
きちんと分かれている。
よく見たら字案内が書いてあったわ。
私たちが必要なのは、登録カウンター。
きょろきょろしているおこちゃまたちを連れ、そこに向かう。
幸い、今いる冒険者さんたちは、宿に泊まっているので、みんな顔見知り。
だって、しょっちゅう宴会に呼んでいるから。
プラム郷は宴会大好き。
「すみません、登録したいのですが」
カウンターの女性に話しかける。
「ようこそ、プラム郷の冒険者ギルドへ。こちらの書類に目を通して、ご署名お願いします」
明らかに面倒くさそうに対応。
ここに来るの嫌だったのかもしれないな。
「おいおい、ねーちゃん、そんな態度はないだろう。あんた、仮にも受付嬢だろうが」
後ろから、冒険者さんたちが文句を言ってくる。
いいっていいって。
こんな田舎じゃいやな人もいるだろうし。
「ありがとね、気にしないから」
「アイリーンさんよぅ。舐められちゃ駄目だぜ?」
「いいって。それより、ちょっと場所貸してほしいわ。このこの登録だから、書類に目を通させて、署名させるから」
「そうかい、悪かったな」
「ありがとね、今日はこの子の登録で宴会だから、広場来てね。ほかの人もね」
みんなに向かって言う。
エイトの登録がきちんとすんだら、お祝いだ。
うおーっって、野太い声がする。
ほんとに宴会好きな人ばかりよね。
「ほら、エイト、座って」
「はい」
エイトに渡された書類、というか、紙一枚よね、これ。
これで何を詳しくわかれと?
あとで説明があるのかな?
「エイト、待ちなさい。ちょっとクオークと話してくるから」
サカイがエイトが読もうとしたのに待ったをかける。
険しい表情だ。
ほかの職員に話しかけ、何か言ってる。
「ね・・・ねーちゃん・・・」
「ああ、気にしなくていいよ。クロークさんが来るから、待ってようね」
子供たち四人とも不安そうだ。
態度が悪すぎるのも困りものよねえ。
ほどなくクロークさんが来た。
サカイと何やら話をしていて、受付嬢が変わる。
後ろにつれていかれたようだけど・・・
私たちには関係ないわね。
「先ほどはすみません、受付変わらせていただきましたので、改めてカウンターにお越し願えませんでしょうか」
「エイト、行っておいで」
促す。
あとは説明してくれるだろう。
ジャムさんがエイトのそばについているし。
近くで座って説明を聞く。
冒険者ランクや、依頼の受け方、依頼失敗の時のペナルティなど、いろいろ説明されている。
あと、登録料。
これは私が渡しておいたので間に合っているはずだ。
冒険者になるための試験もあるらしい。
当たり前か。
「ねーちゃん、採取試験がある」
「それは自分で持ってこないとだめだよ。わたしたちは手伝えない」
「うん。・・・ここでとってきちゃダメかな?」
「何が依頼物なの?」
「薬に使える植物」
何その、ざっくりとしたもの。
いろいろあるけどね、確かに。
そして、いやし草、プラム郷にあるものね。
だけど、これは森で探してもらわないとね。
ここにすんで、森の浅いところは子供たちも行っているし、植物の見極めもできるようになっているしね。
「森に行かないとだめよ。試験官もいるのでしょう」
「うん。・・・行ってくる」
ああああああ。
心配だけど、ここで待っていないとだめよね。
「ボスがついていってくれるそうだから心配するな」
ジャムさんにこっそり言われたけど、ボス、魔獣だから、試験官さんが驚いちゃうでしょ。
ああ、でも、見つからないようについていってくれるかな、頭いいしね。
二時間ほど待ったら、エイトも戻ってきた。
その間は、やきもきしながら、待っていたけどね。
あと、クロークさんが最初の受付嬢を連れて謝罪にも来たけどね。
森の入り口まで試験官がついていき、そこから一人(幼い子を一人で行かせるなんて!!)。
森の浅いところにいろいろ生えて居たようだから、すぐ終わったらしい。
ボスが視ててくれたから危険もなかったらしい。
エイトはボスの存在に気付いていたのね。
「合格したよ、ねーちゃん」
真新しい冒険者カードに、ランクHの文字が見える。
Hから始まるのか。
まだ11歳だったものね。
「これから、プラム郷の冒険者として頑張ってね、今日はお祝いだよ」
「うん」
よかった。
ほんとによかった。
落ちる心配はしてなかったけど。
夕方、広場にみんな集まった。
エイトの冒険者としてのお祝い。
宿に泊まっている冒険者さんたちも招く。
これからうちのエイトをよろしくお願いします。
冒険者ギルドの人たちも、何人か来ている。
ほんと、よろしくお願いします。
お読みいただきありがとうございました。毎週水曜日更新しています。
誤字脱字報告、評価も、いつもありがとうございます。
不定期連載で、違うお話も書き始めました。興味があったら読んでみてください。
「追放王子と生態系調査人」
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