108~ああ、あんたか~
お読みいただきありがとうございます。居眠り女主人公、起きてます。
前話でメイちゃんの言ってた、プラント母さんがとらえたものの話です。
メイちゃんに知らされて、プラント母さんの様子を見に、拠点に戻る。
何を捕まえたんだろう、プラント母さん。
ここに入ってくることって、魔獣はできないはずだし、そもそもこんな道を通る人っていないと思う。
冒険者ならともかく、商人はもっと安全な道に行くはずだから。
拠点は雨。
本降りだな。
外に出たくないのだけど、プラント母さんを呼ばないといけない。
窓を開けて、きょろきょろすると、プラント母さんの触手がやってきた。
本人?もやってくるのが見える。
よかった。
プラント母さんには何もないな。
ここに入ってこられるようなものだから、プラント母さんに攻撃していないといいと思ったけど、大丈夫そう。
とらえたものって、何だろう。
「プラント母さん、ただいま」
触手の返事が返ってくる。
「何かとらえたんだって?」
いうが早いか、檻をこちらに寄せてきた。
中には、人の形をしたものが見える。
うつぶせていて、震えてる。
なにこれ。
「・・・だれ?」
その声に反応して、それはこちらを見る。
「「あ」」
びっくりした。
こいつ、どこかで会ったよ。
・・・あれだ、おっさん子供だよ。
「おま・・・おまえ・・・アイリーンじゃないか。た・・・たすけてくれ」
「ああ、うん。プラント母さん、これ、知り合いだから放していいよ」
中に入っていたのが、エルフ族のおっさん子供なのには驚いたけど、あれからどれくらいたったのだったかな。
なんでこんなとこにいるんだろう。
雨でびしょぬれになりながら、服もボロボロで震えているし、顔色もあまりよくないな。
「メイちゃん、中で休ませて」
「かしこまりました」
きっとかいがいしく面倒見てくれるだろう。
プラント母さんは、なんでこれをとらえたんだろう。
「プラント母さん?」
どうやら、説明してくれるらしい。
おっさん子供から、私の魔力気配がしたが、私が周りにいないので、不審に思ったのだそう。
ああ、そうか。
おっさん子供に渡したマジックバッグには、私の魔法陣が付与されているからな。
「あれは私があげたのよ。大丈夫、奪われたとかじゃないからね」
私がマジックバッグをあげた人を教えておくか。
そうでなければ、たまたまここに来た人をとらえてしまうかもしれない。
いつか、プラム郷で育った冒険者になる、あの子たちが、ここに来ても大丈夫なように。
そして今度からマジックバッグも、メイちゃんかシツジローくんに作らせよう。
ドールの魔法付与だと、誰かの魔力というものが見えないらしいから。
あ、そうだ。
プラム郷の人たちに作り方教えて、それも売りにすればいいよね。
値崩れしてもいいと思う。
誰もが持っているものなんだし、プレイヤーとしてはね。
ただ、どれくらいの大きさができるかだよね。
人それぞれだろうなあ。
プラント母さんが納得して、また雨に当たりに行っている。
いい風景だ。
さて。
おっさん子供に、事情を聴くか。
中に入ると、おっさん子供は風呂に入れれれているそうだ。
その間にメイちゃんが、温かい飲み物を作ったりしている。
服はボロボロになっているので、王都中央部に買いに走ってもらう。
上がる前には洋服一式も靴も用意できた。
我が家は土足禁止だから、靴は玄関に置いてあるけどね。
上がってきたおっさん子供を風魔法で乾かし、ソファに座らせる。
すかさずメイちゃんがスープを出してきた。
「あっつ」
勢いよく飲むからだ、馬鹿者め。
「それで?なんであんたここにいるのよ」
一息ついたようだし、聞いてみないとね。
「いや、お前こそなんでここに?」
「ん?ここは私の家だからよ」
「は?」
「私のことはいいから、あんたのことよ、ええとたしか・・・タリラリランだっけ?」
そんな名前のはずよね。
「だれだ、それ!タリヤだ」
あ、惜しい。
「俺は故郷のエルフの里に戻る途中だよ」
まだついてなかったか。
「冬の間は動けないからな。やっと出てこれるようになって、王都を抜けて、この国境の森に入ったら、プラント種が前より多くなっていた。何とか隠れながら進んでいたんだが、みつかってな。おいかけられた」
プラント種。
プラント母さんの子供たちだと思うのだけどね。
「それで急に開けた道に出たと思ったら、もう追いかけてこなくて、道なりに進んだらここに出たんだ。そしたら、プラント種の親玉が・・・」
「親玉?」
「外にいる、あの大きなクインだよ!」
プラント母さんのことか。
「外のプラントは、私の使役獣ですー。親玉じゃありませんー」
ほんと失礼なおっさん子供だな。
「お前あれを使役しているのかよ。化け物か!」
やっぱこいつ失礼だわ。
「で、外のプラントにつかまったと」
話しはすすめないとね。
「一瞬であの檻に閉じ込められた。中では魔法も使えなかったし、オレは食糧になるんだと思ったら絶望的だった」
「はあ?プラント母さんは、あんたなんて食べないわよ。あんたがそのマジックバッグ持ってたから、たすかったのよ?」
「は?これか?お前がくれたやつだよな」
「そうよ。わたしの魔法がかかっているから、プラント母さんは保護したのよ」
外は魔獣が多いし、危ないからね。
それで、メイちゃんに知らせてくれたのだろうし。
「そうだったのか・・・」
「まあ、言葉が通じなかったのも怖かったでしょうし・・・森の中のプラントは、使役獣じゃないけど、プラント母さんの子供だから、もしかしたら、あんたをここに誘導しようとしたのかもね。あんた、私の気配するものを持っているんだし」
きっとそうだと思う。
ここの森のプラント種は、いいこばかりなのだ。
「そ・・・そうか」
大きく息をつくおっさん子供。
緊張が解けてよかったよ。
「今日はもう疲れたでしょ、しばらく泊まってく?」
「いや・・・」
「一泊くらいしていきなさいよ。国境超えるんでしょ?」
「ああ・・・」
「決まりね。プラント母さんに頼んで、案内のプラントかしてもらうから、無事に出られると思うよ」
「案内のプラント?」
「プラント母さんの子供。プラント母さんの言うことは聞くからね」
「クインのこどもという認識なのか・・・」
なにかしら。あきれている気がするわ。
「森の出口までおくらせるからね」
「ありがとう」
今日は、おっさん子供もいるし、ここで寝泊まりだな。
使役獣たちは迎えに行かないとだし、シツジローくんには、サカイ送ってもらわないとだけど、せっかく昼寝したのに疲れたなあ。
もう夕方だし、ご飯食べて寝たいわ。
メイちゃんは、いろいろな手配している。
おっさん子供は外見ているし、私もサクッと動いて、早寝だな。
あー。一日が短い。
お読みいただきありがとうございました。毎週水曜日更新しています。
誤字脱字報告、評価も、いつもありがとうございます。
今回出てきたタリヤは46話に出てきています。忘れたころに出す感じですね。
存在忘れかけてましたが。
不定期連載で、違うお話も書き始めました。興味があったら読んでみてください。
「追放王子と生態系調査人」
https://ncode.syosetu.com/n4898ho/




