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ワールド・ガイア  作者: 水野青色
103/281

103~子供たちの進路~

いつもお読みいただきありがとうございます。

居眠り女主人公寝てません。

前話の続きです。

ぶつぶつ小言を言っている二人のことは無視して、子供たちを待つ。

この世界は子供でも働きに出るし、なんてったって、10歳になると奉公先や仕事を決めていかないといけない。

だから子供たちもきっとそれくらいになるだろうから、先を聞かないといけないし。


ここに住み続けてくれるとかならいいけど、この集落には仕事といえるほどのものはない。

稼ぐこともほぼできないし・・・。

宿はなんでか繁盛しているようだけど。


食事がおいしいとの評判が、ささやかれ始めているらしい。

ジューノさんが言ってた。

ジューノさんが住んでいる門番街でも、そのうわさが流れているので、そこの宿屋が、うちの宿の料理人を引き抜こうという話もひそかに出ているらしい。

ジューノさんは早耳だ。

だけどここの集落のおじいちゃんおばあちゃんが料理人だし、レシピはほかに教えてはいけないとか何とかって、おじいちゃんおばあちゃんが言ってた。

その辺の事情は私には理解できないけど、でもその人たちがほかに移りたいというのなら、それを止めることはできないと思う。

みんな私に感謝しているから、移らないみたいだけど、勧誘された人もいたとかは聞いた。


異世界の事情はよく分からない。

だからといって、運営さんに聞いても、それはきっとわからないんだと思う。

仕方ないことだ。

メイちゃんとシツジローくんを勧誘した人もいたらしいけど、即お断りしたという。

当たり前だけどね。

ここの住人ではないんだから。


ぼんやりしていると、マークが兄弟と自分の妹のナナと、スズランを連れてきた。


「おじょー様、連れてきたぜ」

「ありがとう、マーク。さて、えーと・・・何て名前だったかな、兄と弟」


私は二人のことを兄のほう、弟のほうと呼んでしまっているので、名前が覚えてない。


「あー、もう、アイリーンねーちゃんひどいよー。僕は、ビートだってさんざん言ったじゃん!」


弟のほうが言う。

兄弟は、私のことは、ねーちゃんて呼んでくれるんだよね。


「そうだった。・・・兄のほうは、エイトだったね」


エイトビートって覚えてたはずなのに、すぐ忘れちゃう。


「そうだよ、アイリーンねーちゃん。どうしたの?オレ、仕事中なんだけど」

「エイトはもう仕事しているんだ?」

「うん。畑手伝ったりとかだけど。オレ、11歳だから、仕事決めてかないといけないし」


エイトは11歳だったのか。

それじゃ、本来なら、あの時は仕事を決めて家族から離れることも考えいないといけなかった時期なんだろうけど、あの状況じゃ、家族とともにいたほうがいいよねぇ。


とりあえず、いつの間にか来たメイちゃんが、テーブルセットとおやつを、門の中に用意してくれたけど、ここじゃあね。


「おうちのほうに会議所あるでしょ、そこに移ろう」


サカイとジャムさんも連れて行こう。

二人にも意見聞かないとだし。


会議所というか、みんなが集まる集会所。

今いるのは、私含めて9人。


スズランはここの集会所は初めて入るらしく、あちこちきょろきょろしている。

畳が珍しいのかな?


メイちゃんがかいがいしく、おやつとお茶を用意して、また外に出ていく。

ナナが早速おやつを食べ始めている。

かわいいわ。

ジャムさんもサカイもスズランもナナと同じ席でお菓子を食べて話をしている。

私はほかの三人を促して、少し離れた席に座る。


「さて、ここに来たのはね、兄のほうと弟のほうとマーク、君たちに聞きたいことがあるの」

「なに?ねーちゃん」

「弟のほう・・・ビートは何歳?」

「僕は9歳」

「マークは?」

「9歳」

「ナナはねぇ、4さい」


にっこにこのナナが遠くから会話に入る。

獣人の手も一応指が5本あるけど、4になってないかわいさがある。

うんうん。

ナナにはまだ早い話だね。


「エイトはもう働きに出るんだったよね?」

「そうだけど、ここでずっと畑とかしたいし、でも、外の世界も見たいし、どうしたらいいんだろう」


父親のポルムも、母親のサリーも、この村で仕事をするように言ってくるらしい。

恩があるのだからと。


「エイトはさ、ここで冒険者になる気はない?」

「え?」

「まだここには冒険者ギルドもないし、でも、11歳なら登録はできる。いずれ大きくなって外の世界に出ることはいいと思う。でも今は、ここの集落で冒険者になって、しばらくは畑やったり狩をやったりして生活する気にはなれないかな?」


世界を知ることはいいことだと思う。

だけど、ここはいずれはなくなってしまうかもだし、もしかしたら住人が増えて繁栄するかもしれない。

この集落を専門とした冒険者が一人でも欲しい。


「いいの?父さん母さんは、畑手伝ったりとかで暮らしてほしいみたいだけど、オレはほかも知りたいんだ」

「無理にここに縛り付けたいわけじゃないんだよ。確かにここで生活してくれるのはいいけど、それで夢を捨てても欲しくない。ビート、マーク、これはあなたたちにも言っていることなの」


子供が巣立っていくのは当たり前なんだと思う。

ここに若者が育たなかったのも仕方ないし、10年弱で立て直しが本当にできているかわからない。


「ねーちゃん、オレ、冒険者になりたい。でもここの畑とかも大好きなんだ」

「うん。だからね。エイトが冒険者登録して、冒険者として狩をしたり、ここにいるときは畑手伝ったり、宿を手伝ったりでもいいと思うの。ジャムさんやあなたのお父さんが門番できなくなったときに、門を見てくれてもいいし、絶対にここにいるってことじゃないんだよ」

「ほんと?」

「うん」


エイトはきっと、まだ逡巡しているのだと思う。

12歳には成人の世界で、でもまだ11歳だ。

私の常識じゃ子供なんだから。


「お、なんだ、エイト。お前、このプラム郷の冒険者になりたいのか」

「プラム郷の冒険者?」


ジャムさんが聞き耳を立てていたようで、口出してくる。


「そうだ。プラム郷専属で、もちろん、出た依頼によっては遠くに行くこともあるけど、基本はここに帰ってくるのが前提だ」


ジャムさんが説明してくれる。

専属冒険者。

たいていの場合は、登録した時の冒険者ギルドに縛られることが多いから、なり手が少ないが、エイトのように故郷で専属冒険者の登録をする者もいるという。

その街や集落の冒険者が、その場所のルールを教えてくれるらしい。


「でもまだここには冒険者ギルドないよ」

「ああ、それは、ほら、そこのお嬢さまに言えば、すぐに作るだろ」


こちらを指さす。

失礼な。


「両親に相談して、考えるんだな。専属冒険者は、結局その場所に縛り付けられるようなものだから」

「うん。ジェヌさんありがとう」


ずっと考えていたことが現実味をオボテ来たことに、表情が引き締まったみたい。

よかったね。

でも、ほんとの話はここから。


「ビートとマークはまだ一年あるから、ゆっくり考えなよね」

「「うん」」


二人の返事もよい。

きっといい子たちに育ってくれると思う。

それを期待してる。

この集落の未来はまだわからないからね。

お読みいただきありがとうございました。毎週水曜日更新しています。

誤字脱字報告、評価も、いつもありがとうございます


不定期連載で、違うお話も書き始めました。興味があったら読んでみてください。


「追放王子と生態系調査人」


https://ncode.syosetu.com/n4898ho/

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