旧第五話「放課後」
沙耶は朝と昼にショックを受けた。圭太郎が自分を避け始めたからだ。
しかし時間が経つにつれ沙耶は腹が立ってきた。圭太郎の告白を断ったことに罪悪感はある。だが恋人の関係になるなど考えたことがなかったし、仕方ないだろう。今までずっと一緒に過ごしてきたのに、幼馴染の縁はあれだけで切れるのかと憤慨していた。
授業が終わると帰りのホームルームがある。それが終われば放課後だ。
沙耶は圭太郎としっかり話をしなければと意気込んでいた。机の中の物をかばんに入れている圭太郎の元に大股歩きで向かう。
「ちょっと圭太郎。話があるわ。一緒に帰りましょう」
「いや、用事があるんだ」
提案を断る圭太郎に沙耶はまた腹を立てた。
「あのさ、昨日のことは悪かったと思うけど、露骨に距離を取りすぎでしょう!」
「いや、本当に用事があるんだ、話は今度にしてくれ」
「ふーん……嘘だったら許さないからね!」
怒鳴る沙耶に対し、圭太郎は困ったように返事をする。
その様子を見た沙耶は本当だと思い、しかし釘を刺してから圭太郎を解放した。
「それじゃ……」
「全く……」
かばんを持ち帰っていく圭太郎を沙耶は不機嫌そうに見送った。
そして周りの注目を集めていたことにようやく気付き、恥ずかしくなった。
靴を履き替えた圭太郎は校門へ向かった。
待ち合わせ場所のそこには既に部長が来て待っていた。
「お待たせしました」
「大して待ってないわ、行きましょう」
二人は連れ立って歩く。それを沙耶は見ていた。




