告白
その日の放課後、蘭太朗はいつものようにすみれを教室まで迎えに行った。
「すみれ、帰るぞ。」
「はいよ。じゃあね、雪。」
「バイバイ。」
雪はすみれに手を振った。
学校を出ると、すみれは蘭太朗の自転車の後ろに乗った。蘭太郎はすみれが乗ったのを確認すると、自転車をこぎ始めた。
「聞いてよ。雪がね、蘭と付き合っちゃえばって言うんだよ。」
「へー。」
「そんなのないよね。私達、ただの友達だし。」
「ただの友達なのか?」
「うん。あ、ただのって言うか親友? ベストフレンド? そんな感じじゃない?」
「……あっそ。」
蘭太郎は小さくため息をついた。
「蘭は何かおもしろいことあった?」
「べつに。おもしろいことってか、悩みが増えたよ。」
「悩み? 私に話してみ。」
「言えねーよ、バーカ。」
蘭太郎はそう言うと、自転車のスピードをあげた。
「きゃー、危ないよ!!」
すみれは叫びながら、蘭太郎の腰に手を回して蘭太郎にしがみついた。
「すみれ!! 俺んち寄ってけ。」
蘭太郎は少し大きめの声で言った。
「何でー?」
「宿題手伝え。」
「えー、ヤダよ。」
「毎日毎日送ってやってるのは誰だ?」
「……しょうがないなー。」
すみれは渋々了承した。
「はい、着いた。」
自転車は蘭太郎の家の前で止まった。といっても、隣はすみれの家だ。
「送ってくれてありがとう。じゃっ。」
すみれはそのまま自宅へ向かおうとしたが、蘭太郎に腕を掴まれた。どうやっても蘭太郎から逃げられないと思ったすみれは、しょうがなく蘭太郎の家へ入った。
「おじゃましまーす。」
「あら、すみれちゃん。」
迎え出たのは蘭太郎の母だった。
「どうしたの今日は?」
「蘭の宿題手伝ってあげるんです。」
「いっつもありがとね。蘭太郎、後でお茶持っていくからね。」
「はいはい。行くぞ、すみれ。」
二人は蘭太郎の部屋へ向かった。
「宿題って何でてるの?」
「漢字のプリント2枚。1枚やって。」
「ったく。」
すみれは蘭太郎からプリントを受け取り、早速取り掛かった。
しばらくお互い何も言わず黙々とやっていたが、蘭太郎が沈黙を破った。
「お前さ、俺のことどう思う?」
「は?」
すみれは手を止めて、蘭太郎を見た。