ベストフレンド
「蘭!!」
すみれは蘭太郎にかけよった。
「おー……すみれじゃん。久しぶり」
蘭太郎はかなり弱った声で言った。
「久しぶりじゃないよ!! せかっく会いに来たって言うのに、何でこんなことになってんの!?」
「なんか……よく分かんねー……」
「バカじゃないの!!」
「でも、死ぬ前にすみれに会えてよかった……」
「死ぬなんて言わないで!!」
「そんなに、怒るなって。久しぶりに会えたんだから、もっと楽しく話そうぜ……」
「楽しくって……こんなときに、バカだよ」
すみれは耐え切れなくなり、涙を流した。
「すみれ、泣くなよ。もう、大丈夫だから。何も心配いらねーって」
蘭太郎はすみれの手を握った。
「大丈夫じゃないじゃん」
「なあ、すみれ。最後に俺の頼み聞いてくれる?」
「なによ」
「すみれの笑顔が見たい」
「こんな時に笑えるわけないじゃん」
「俺な、すみれの笑顔に何度も助けられたんだよ。辛い時も落ち込んだときも、いつもすみれが、笑顔で俺に話しかけてくれたから……」
「……」
「だから、すみれの笑顔見れたら、今回も大丈夫になれる気がする」
「ばか」
「頼む……」
「……」
すみれは戸惑いながらも、蘭太郎に微笑みかけた。
「……かわいい」
「蘭、私ね……」
すみれは蘭太郎の手を強く握りながら、自分の気持ちを伝えようとした。
「すみれ……今まで……ありがと、な……」
すみれは自分が握る蘭太郎の手から力が抜けていくのを感じた。
「蘭太郎!!」
蘭太郎の母親が泣き崩れた。隣で医者は、冷静に言った。
「残念ですが、ご臨終です」
「蘭……。蘭が、好きだってやっと気づいたのに。ばか」
すみれは蘭太郎の手を握りながら、ただただ呟くだけだった。
蘭が天国に行ってから、早くも半年が経とうとしている。おばさんに頼んで、蘭の自転車をもらった私。どこへ行くにも、今ではこの蘭の自転車を愛用している。今でも時々夢を見る。朝、玄関を開けるとそこには蘭が自転車に乗って待ってて、「すみれ!! 早くしないと遅刻するぞ」って言うの。それで私は「うるさいなー」なんて言いながら、自転車の後ろにまたがって、自転車は走り出す。それでいつも目が覚めちゃうけど……。それでも私は悲しくなんかない。蘭はずっと私の中にいるって信じてるから。
「蘭!! ちゃんと私の事見守ってよね!!」
今日も私は、蘭の自転車に乗って走り出す―――
はい、これで終わりです。
ちょっと無理矢理感あるんですけど、
読んでくれてありがとうございます。