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璃理恵の翼  作者: 植村夕月
第1章 璃理恵に穿たれた楔
31/31

30、エピローグ

   エピローグ


 戦いでぶち壊した土塀やら道路やらの修理にかんして、それらすべての責任は影平が率先して背負った。

 俺たちは、影平が赤髪の亡者に操られていたという事情を解した。璃理恵を襲い、その母にすら手を掛けようとした。強いては情報操作も行っていた男だ。そんな奴に璃理恵の復活に際して一切かかわらないでほしかった。

「シグ、頑固になるのも仕方ないと思うわ。でも蘇生なんて業、アタシはともかく愛華でも難しいで」

 専門家二人が、そういうのだから素人の俺がとやかく言うわけにもいくまい。

 

 俺たちは、夕方大熊院邸に招かれた。

 俺たち四人は影平によって奥の部屋へと連れていかれた。蘇生を行う時間をどうしてこんな終末の色合いが濃い時間にしたんだろうか。

「あらゆるものの境界があいまいになる逢魔が時こそ、蘇生に適しているんです」

 と、隣の愛華は説明してくれる。


 部屋には、ふたりの女性が布団の上に臥している状態であった。璃理恵の肉体は青白く、死体のようであった。

 大熊院の儀式によって璃理恵の息は戻った。しかし彼女の意識は戻ることはなかった。


 ・・・


 次の日。

 学校へ行くと、教室の前で雀崎と新宮愛華が何やら話していた。俺は彼女らに手を振った。

「おはよう」

 とりあえず挨拶してみれば、新宮は顔をにぱあとさせる。」

「おはようございます」

 相変わらず可愛らしい笑顔である。やはりこんな美人に笑顔を向けられるとドキッとするのも仕方ないだろうな。うむうむ。

「よっす」

 笑顔の新宮の横には普段と変わらないぶずっとした表情の雀崎だ。まあ雀崎は、普段がこんなだからこそ、時折見せる可愛らしさというものが素晴らしく目に栄えるというものだ。

 雀崎やっぱかわいいな。

「何を考えているんや。なんか変な顔して気持ち悪いぞ」

「気持ち悪いとは何だ、気持ち悪いとは」

 雀崎は勘が鋭いから困るな。

 さて、それより璃理恵のこととあの不健康男について聞かないと。

「新宮が昨日ルートバンカーを黒焦げにしただろ。その時に言っていた七十八回っていうのはどういう意味なんだ?」

「ああ、それはですね。私があの男を七十八回殺しているという意味なんです」

 はっ? 何言ってんのこの人。

 俺はジト目で彼女をみる。まるであれが悪魔かゾンビみたいな言い方だぞ。

 まともに話に取り合わない俺に対して、彼女は頬をぷうッと膨らませた。

「もう、疑ってますね。本当のことですよ。あなただって疑ったはずです。あの男がどれほど動き回っても疲れた様子を見せなかったことを。あれがその証拠です」

「少し言葉が足りないから理解に苦しむ」

 ちょっと意地悪してみると、新宮がぶんぶん振り回して必死にうったえる。

「ゾンビですよ。ゾンビ。ゾンビゾンビゾンビゾンビゾンビゾンビ――」

「ああ、分かった分かった」

 ずっと同じ言葉を連呼しだす彼女を諫める。

 なるほど、アイツが全く疲れないのはそういうことか。そしてちょっとやそっとの傷も大したことはない。雀崎がとても厄介だって言っていたのはそういうことか。

「なるほど、炎を扱える新宮ならあいつを倒せると」

「いくら細切れにしても倒せないなら、灰にしてしまえばいいんです。ただ、ああまでしても何だか倒しきれた気がしないんですよ。本当に、あの男はしつこいんです」

 彼女はやれやれといった様子で、首を振る。


 俺たちが影平の処遇など話していると、教室から松葉杖をついてある女の子が姿を現した。その少女の姿を見ると途端に目頭が熱くなった。ある時を境に突然消えて、再会できたかと思えば、幽霊になった少女だ。

「璃理恵」

「おはよう、時雨クン。久しぶりだね」

「久しぶりって、昨日あってるだろ」

 体の硬直が取れきっていない彼女がよたよたしながらも、こちらに歩み寄ってくる。俺はとっさに走り寄って、彼女を支えた。

 まだ、顔色は優れないようだ。だけど、彼女は依然と違って温もりを取り戻していた。

 かけがえのない存在であることをその手で実感する。

「あんまり無理すんなよ」

「あはは、楽しそうに話してるからついね」

 璃理恵と話していると、雀崎が割って入ってくる。

「ああ、いちゃつくなや。見ててイラつく」

 雀崎に襟首掴まれて、ぶんぶん振り回される。

 やっと普通の学生生活に戻れると思っていたけど、この感じたとそうもいかないだろうなあ。目がクルクル回って、吐き気を催す中、俺はそう思った。


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