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璃理恵の翼  作者: 植村夕月
第1章 璃理恵に穿たれた楔
14/31

13、Research1

   Research1


「雀崎殿、くれぐれもお気を付けいただきたい」

「ご心配ありがとうございます。影平殿のお言葉を胸に刻み付けておきます」

 アタシは、璃理恵が死んだことと瘴気の関係について大熊院影平と意見交換した。ある程度の情報を整理し終えたアタシは、大熊院家当主にお礼を述べると、正座していた膝をくじして立ち上がる。そして居間を辞した。

 彼は門前にてアタシを見送った。

こわい印象があったけど、話してみたら案外優しそうな人やったなあ。あんなダンディな感じの人、結構好きかも知れんわ。

 アハハ( ゜∀゜)……。


 瘴気とは山より水を伝って流れてくる不浄なもの。

 山の小川とか結構綺麗な水が流れてて、触ってみたらとても冷たくてキモチイ。貴よ印象が強いし、本当にその通り。ただ、一部は何らかの影響によってその聖なる水に不純物が混じり込んでしまう。

 でも基本、水は汚れを流す。

 悪い部分は手を加えれば、勝手に治ってくれる。

「そんなわけで、アタシさ、夕方に瘴気濃度の計測をこの町のいろんな場所で試してみようと思うんや。どやろか」

 アタシはガラケー越しからとある人物に問いかける。

 瑞々しい商品な声をした少女の声が耳に還ってきた。姿が素晴らしくきれいなうえでこんな綺麗な声まで持っている。アタシも妬ましいわ。

『そうですね。瘴気が最も高まるのは、この世とあの世の境があいまいになる夕暮れ時ですし、一度しっかり行ってみるのも悪くはないでしょう』

 電話越しの少女から聞こえる声は元気がなくなっているようだった。

「えらい疲れているみたいやな。どないしてん?」

『ああ、いえ、大したことはありません。それよりも私の方からもお願いいたします。少し手が離せない状況でして、大変助かります』

「うん、じゃあ」

 アタシは通話を切った。

 電話越しの少女は、アタシからしてとても苦手だ。苦手な理由はいくつかあるけど、まず気になる男性がいたとしたら、所かまわず誘惑するのだ。それがこちらからしてみていられないほど恥ずかしい。次に猫かぶり。まあ、この点に関しては少なからずアタシも否定できないからいい。

 ただ、どうしようもなく残酷なところがあってそこだけは無理。

 私は台所でグラスに水をくむ。それを一気に飲み干してから壁にかけてある時計を見た。今はまだ二時半。あと一時間後には、瘴気測定を各地で行っていく。


 アタシは地図を片手に璃理恵の体が発見された公園の入り口で佇んでいた。

「此処は相変わらず高いかあ。まあ、予想通りやな」

 地図に黒マジックでバツ印を付ける。

 

スーパーマーケット、商店街に駅とその周辺、日が暮れるまで時間的に可能な限り歩いて見て回った。住宅街も。璃理恵がいた公園の半径五百メートルを調査。結果地図はバツ印だらけとなった。どこもかしこも瘴気まみれ。

 アタシもこれにはさすがに酷いと思った。

あくまでも公園を中心に五百メートルの範囲でこうなっている。このような状態がどこまで広がっているのか調べておきたいがもう時間が残っていなかった。

アタシは歩道橋の真ん中から、走り去っていく車を眺めていた。瞳には赤い太陽が映った。

大熊院は何を考えとんや。

自分らの拠点がある街で、高濃度の瘴気があちこちから噴出しているのにちゃんとした手を打ってへんやんか。

アタシは最後にいつも通っている学校を調べることにした。

休日故に、誰一人いなかった。アタシは監視カメラが付いていない場所を探す。そして人が通っていないのを確認すると、塀より敷地内に侵入した。グラウンド、中庭、体育館を覗いて、そして校舎内へ入る。

学校内をすべてチェックした後、アタシは壁に拳を殴りつけた。

「こんチクショウめ。無茶苦茶やないか」

 アタシはポケットから携帯を取り出す。コールしてもなかなか出ないので、イライラが募っていた。

『もしもし、雀崎さん。どうしました?』

「どうしましたって、瘴気調査に関してや。あんた電話もうちょっと早く出ろ」

 アタシは電話の向こうにいる少女に八つ当たりした。自分の予測を遥かに超えた状況にどうしたらいいか混乱していた。

『す、すみません』

「あ、いや、アタシこそごめん。ちょっとどうしようもなくてな」

 アタシは壁にもたれかかり、ズルズルとへたれこむように床に座った。

『今、細かいお話はできますか? もし可能でしたら、お願いします』

「うん、まずは想定よりはるかに酷かった。さじ投げ出したいくらい。特にアタシが通っている学校、言葉では語りつくせんほどひどいわ」

 アタシは言葉にするのも疲れて、しばし黙っていた。すると電話口より、力のこもった声が放たれた。

『――大丈夫、大丈夫です。すぐに私が向かいますから』


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