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第二十一話 奪還1


「……ドラちゃんを使ってどうするつもりですか?」

「まず、ドラちゃんは魔力探知が出来る。それで、エルフたちが住む森を見つけ出して、場所によってはそこに向かう。そこで、二人を助け出して、すぐにあんたたちが向かう予定の場所に合流する。これなら、すぐに終わらせれば間に合うだろ?」

「……そうですね。魔王様に話してみたら、どうですか?」

「……あれ、意外と素直なんだな。実は気になっているんじゃないか?」

「いえ。あなたが間に合わなければ、あなたの友達を殺せば良い。……どうせ、何も守れやしません。私からすれば、無駄な時間がなければそれで十分です」


 睨み付けてくる彼女に頭をかくしかない。

 かなり難しいが、出来ないとも思っていない。

 城内へと歩いていきバルナリアとともに入ったのは、会議室のような場所だ。

 見慣れた顔は、魔王くらいだ。それ以外にも、実力者と思われるような魔族たちがそこには待機していた。

 あんまり、下手なことを言うと、大変な目にあいそうだ。


「……それが、例の人間ですか?」


 魔族たちが品定めするようにこちらへ視線を向ける。

 軽く頭をさげてから、魔王の近くへと歩いていく。


「魔王……ドラちゃん貸してくれないか?」

「どういうことだ?」

「えーと――」


 できれば周りには聞かれないほうが良いだろう。小声で話をすると、魔王は眉間に皺を刻んだ。


「……貴様、勇者は良いのか?」

「そのための、ドラちゃんなんだよ。あいつさえいれば、あんたたちの目的の場所にも必ず間に合うはずだ。……ドラちゃんを使うつもりだったか?」

「いや……私はそもそも戦場には向かわない。だから、ドラちゃんに乗れるのは貴様だけだから……それは良いが」


 しかし、なかなかゴーサインがでない。

 こうしている間にも時間が過ぎていく中で、バルナリアが一歩出る。


「魔王様。彼は二つを救いたいと言ってます。時間に間に合わなければ、勇者のほうも殺して構わないとも言っていますし、好きにさせてはどうですか?」

「……バルナリア。おまえにも部隊を任せるつもりだが、不特定の要素があっても良いのか?」

「ええ。構いませんよ」

「……なら、良いか。人間、今からおまえに自由時間を与える。ここからやることは好きに選べ」

「よしっ、魔王様、バルナリア、ありがとな!」


 片手をあげてすぐさま部屋を飛び出す。魔族たちの視線が少し気になったが、指摘している時間もない。

 去り際にバルナリアの馬鹿にしたような笑みが印象的だったが、あんな風に手助けしてくれたのだから感謝しかない。

 庭へと出た瞬間、肩を掴まれる。


「よっ、さっきバルナリア様と言い合っているところ、聞いたぜ?」

「ひゅ、ヒューズ!? おまえも戦場に行くのか!?」

「オレは町で待機だ。それで? どうしたってそんなに慌てているんだよ?」

「……ちょっと、友達が誘拐されちまって。今助けに行くんだよ」

「助けに? 大丈夫なのか? 確か、敵には勇者もいるんじゃなかったか?」


 すでに騎士にも話は行っているようだ。

 こくこくと頷いていると、ヒューズは顎に手をやる。

 と、ヒューズは明るく笑って俺の背中を強く叩いてきた。


「いってっ! これから戦闘するかもしれないって大事な体に何するんだよ」

「てめーが情けなーい顔してっからだ。ちったー自信を持ちやがれ」


 ヒューズが厳しく睨んできた。

 ……そんな顔をしていただろうか。

 だとしても、仕方ないとも思っている。こんな切羽詰まった状況、今までに一度も体験したことはない。

 この後、命のやりとりをするときも出てきてしまうかもしれない。

 考えても正しい答えは出てこないため、沼にでも飲まれているような気分になる。

 そんな思考を破るように、再び背中を叩かれる。


「自信持てよ。てめーはこっちに来てから随分と強くなっている。仮に、戦闘が必要になってきても、自分のできることを自覚して、自分のできる範囲で頑張れば良いさ」

「……ま、結局はそうだよな」


 できないことはあがいても出来るはずがない。


「ありがとな。決心ついた。んじゃ行ってくる」


 一つ拳を作り、すぐに向かおうとしたところで、彼が口を開く。


「……何か、手伝えることはあるか?」

 

 ヒューズがそんな申し出をしてきてくれ、俺はぽりぽりと頬をかいた。

 何か……そこで一つ思いついた。


「ヒューズには、ある店を調べてほしいんだ。その店は、エルフたちを管理している男が運営しているんだが……」


 店の場所をざっくりと説明すると、だいたいわかってくれたようだ。


「オレの友人たちに声をかけて、町内は徹底的に調べさせる。一応、エルフ二人の特徴を教えてくれ」

「一人は……小さな子どもくらいの少女で、名前はテーレだ。もう一人はすらっとした美人なエルフで、ちょっぴり目つきが怖い。名前は……知らんけど、メイド長だから本人に聞けばわかると思う」

「わかったよ。そんじゃ、オレもさっさと見回りに行ってくる。気をつけろよ、戻ってきたら何か奢ってやるから」

「おっ、本当か!? うまい飯を期待してるからな!」

「へいへい。てめーも、金を稼ぐようになったら酒でも奢ってくれよ」

「そんな日が来るかなぁ……?」


 金を稼いでも魔王に納める羽目になりそうでならない。

 竜舎に入ると、何人か残っていた調教師に声をかける。


「おう、どうした!」

「魔王様に許可はもらってる! 今すぐにドラちゃんを借りていく!」

「ほぉっ、んじゃちゃちゃっと用意するかね!」


 ドラちゃんの近くまで行くと、すぐに体を起こした。


『まさか夜に会えるとはな。それでどうした我が眷属よ』

「ドラちゃんの素晴らしい力を借りたいんだ! 手伝ってくれ」

『ふふん。それで、何をすれば良い?』

「エルフの魔力を探知できるか?」


 ドラちゃんの背中に乗ると、空へと上がる。

 夜の飛行は初めてであり、先が良く見えないために不安もあった。


『さすがにそれほど限定的なことはできないな』

「なら、どこかの森に魔力反応はないか?」

『ふむ。ここから少し行った場所の森にその反応があるな。……なるほど。高度な結界で探知を妨害しているようだが、まあ我くらいならば破れるな』

「そこがたぶん、エルフの隠れ村で……ならそこに向かっている魔力とかは分かるか?」

『ちょうど、森に走竜が入って行ったな。魔族の反応が……四つだ』

「くっそ……森か。ドラちゃんさすがに走竜だけを狙って攻撃はできねぇよな?」

『それは難しいな。この森を焼き払っても良いのなら、やってみるが……』

「や、やらなくて良い! その森近くまで行って俺を下ろしてくれ!」

『大丈夫か? 一つの魔力反応が不気味だ。戦闘になった場合は、気をつけろ』


 ドラちゃんが一気に地上へ迫り、放り投げるように体を下ろしてくれる。

 魔法でも使ってくれたのか、着地の際に怪我はない。

 体を起こし、森を真っ直ぐに見据える。……迷わずにいけるだろうか。

 じっと見ていると、森の中に薄い光の球が出現した。ひ、人魂?


『我の魔法だ。それを頼りに道を行くとよい』

「ありがとな! ドラちゃんはどっかで休んでてくれ! また戻ってくる!」

『わかった。……し、死ぬなよ? 我悲しむからな?』


 ドラちゃんの情けない声に、ぐっと親指を立てて返事をする。

 森の中を駆けていく。ドラちゃんの魔法は分かりやすく、足を止めずに進むことができた。

 やがて、森の中にドラちゃん以外の光が見えた。

 森の中の駆け足は、結構体力を持っていかれたな。ちょっとばかり休憩をしてから、慎重に進む。

 到着した村内には、誰の姿もない。それもそうか。もう夜も遅い。街灯もないこんな村じゃあ、良い子じゃなくても寝るか。

 つまり……外に出ているのは、良い子じゃないってことだ。


 背後に気配を感じ、僅かに抜いた剣で受ける。

 衝撃を受け流し、首を捻る。

 全身が鎧の……身長的には男と思われる大きさ。

 大男の大剣をかわし、身を低くしてスライディングのように滑り込みながら足の関節を切る。

 ……加減していたら俺が殺される。

 だから、せめて致命傷にならない場所を狙っての一撃だったが、予想外に感触がなかった。

 まるで、中身がないかのように。

 そして、大男はまるでダメージなど喰らっていないかのように、剣を振り下ろした。


「……と、とと」


 間合いを見切って避ける。

 ……意外に、動きは雑だ。自分の持っている力を自慢するかのような……そんな感じだ。


「おやおや。まだ生きているとは思いませんでしたよ」


 陰からやがて出てきたのは、この前の男だ。

 男はくすくすと笑いながら、余裕のある笑みとともに拍手をしている。右手には金に余裕があることを自慢するように、宝石のついた指輪がたくさんついていた。

 彼の背後には、小人のような鎧をつけた何かがおり、テーレとメイド長を捕まえていた。

 こちらに気づいた二人が目を見開いたが、口をぐっと押さえていた。


「冗談だろ? あんな大雑把な動きで、俺を倒せるかっての」

「ほう、そうですか」


 くすくすと笑っていた男は、右手を腰にあてる。

 同時に俺の背後にいた大男が、ゆらりと体を動かす。

 振り下ろされた剣を横に転がって避ける。

 なぎ払われた一撃によって、近くの木がなぎ倒される。

 それを切り刻み、回し蹴りのようにして木を吹き飛ばす。

 大男は、それらを受け止めて体を僅かによろめかせる。

 その体へと掴みかかりるように距離をつめて、剣を振りぬく。

 今度は腕の関節を切ったが、やはり斬った感触は一切なかった。


 ……こいつ、中に何もいないな。

 ホラーゲームとかで出会ったら、ちびってしまうが、今はむしろ好都合だ。

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