サ行妨害の思惑
おのれ、これは大変だ。
不可欠な音を使えなくなるということは、まことに辛く痛いものだ。
どれもこれも吾輩に問題があったからなのだが。
ある春の放課後のことであった。
吾輩の通っている部屋があの連中に乗っ取られていた。これだけでも吾輩の怒りは何とも止められないほどであったのだが、彼らが言うに、
「妨害、この妨害が我らの任務であるのだ。君はこれから、この音を使ってはならない。この決まりで一本ノベルでも書いてみたまえ」
よく言ってくれたものだ。今でも腹が立って酷い。なのに、吾輩はこう答えた。
「よかろう。書けたら部屋は返却が行われるのだな? いやぁ滑稽、滑稽。吾輩に不可能という言葉はないのだ」
と、吐き、吾輩はとりあえず体育館の前でこの文を書くことに決めた。
「こんなところで、なにをやっているんだ?」
空手部にいる我が友の三浦が声をかけてきた。
「部屋を奪われてな……。ここで戦いの為の文を書いているのだ」
「呆れたもんだ。また奴らに喧嘩を売ったのか」
「今回はあちらから攻撃をかけられたのだ。負けてはならない戦いがここにあるのだ」
彼は呆れたような顔で吾輩から離れていった。
吾輩の語彙能力を頼みに何とかこの文を書ききって、奴らを打ち破りたい。これだけの為に吾輩は、この紙に書いているのだが、限界が近づいてきているようだ……。
ここまで必要な音だとは思わなかった。だが、ここで折れては文芸部部長の肩書きが、ダメになる。吾輩はダメ人間ではないのだ!
ここで吾輩は思い立った。彼らの本拠地に殴り込みに行こうと。
これで彼らと戦い、勝てばもう何も怖くない。きっと問題なんか何もないだろう!
吾輩はゆっくりと歩み、彼らの本拠地に辿り着いた。
「頼もう!」
吾輩は声を上げた。
「君らの無駄な行為はもうやめだ! 我ら文芸部に不可能はないのだ!」
ドアが開く。
「あっ文芸部の部長か。部長は今、文芸部の部屋にいるよ」
「わかっている! 君らの頭領が居ぬ間にここを乗っ取ろうと思い来たのだ」
「だめだ、困る」
「る、ルーレット!」
「と、とにかくお帰り」
「り、リコヴァ湖!」
「こりゃダメだな……」
「な、ナシ!」
「あっ」
「あっ」
ということで、吾輩はサ行妨害同好会に完全敗北したのであった。
本文中にさ行ざ行を発見したらご報告お願いします。。。
※11/16 2か所修正。