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第九話 仕事と恋愛、どっちが大事?

私、水戸奈津子は、今幸せの絶頂にあります。


母にすすめられて会ったお見合いの相手、高田敦さんは


イケメンで大人で優しくて、最高の男性。


その最高の男性から、会ったその日に気に入られて


現在交際中。


たまに幸せすぎて、明日死ぬんじゃないか、とか思っちゃいます。


今日も仕事が終わって夜は彼の車でディナーへ。


そして夜景の見える山へドライブ。最高!


私がバックヤードで、踊っていると後ろから声を掛けられた。


「やけにご機嫌じゃねーか。いいことあったか?」


「あ、店長!聞いて聞いて、今日、仕事終わったらデートなんですぅ。」


私は腰に手を当ててスキップした。


「嬉しいのはわかるけど、浮かれすぎて失敗するんじゃねえぞ。」


ふん、何とでもお言い。最強幸せ水戸ちゃんには、今はどんな言葉も


受け流せる余裕があるわ。


仕事が終わり、帰ってすぐにシャワーを浴びて、デートに来ていく服を


クローゼットの中から引っ張り出して選んでいた。


やっぱり敦さんに合わせて、ちょっと大人っぽい装いにしないとねー。


ウフフフン♪


夕方7時に彼が迎えに来た。


そして、家族では決して行かないような、おしゃれな隠れ家的なお店で


上品なディナー。


ファミレスみたいに、いっぺんにごっちゃり料理が並ぶわけじゃない。


一品ずつ運んで来られるので、あまりにも腹ペコで行くと恥をかく。


がっつくようなお店ではないので、多少家でつまみ食いしておいた。


「ねえ、奈津子さん。僕は君と結婚を前提にお付き合いしているつもりなんだ。」


敦さんが急に真剣な目で私にそう言ってきた。


私はドキドキして、赤面してしまった。


「僕と結婚したら、君には家に居てほしいんだ。経済的に決して君を困らせないから。」


そう言われて、私は一瞬はっとした。


私が、仕事を辞めて専業主婦で家に居る。


なんとなく、あまりピンと来なかった。


私が黙っていると


「ちょっと早まりすぎたかな。いいんだ、ゆっくり考えて。」


敦さんがそう言った。私は何故戸惑っているんだろう。


次の日、私はぼんやりと昨日の敦さんの言葉を考えていた。


すると後ろからバンと背中を叩かれた。


びっくりして振り返ると佐久間が立っていた。


「おはよう。何ぼんやり突っ立ってるんだ?」


「ああ、ちょっと考え事を・・・。」


佐久間がキョトンとした。


「なんか元気ないな。今、ラブラブ交際中なのに、何か悩みでもあるのか?」


私は黙り込んだ。ちょっと間をおいて


「実はね、敦さんが、結婚したら仕事は辞めて家に居て欲しいって言うの。」


と言った。佐久間は、そっか、と言ってしばらく気まずい間があった。


「で?水戸はどうしたいの?」


「えっ?私?」


「そうだよ。ようは水戸がどうしたいか、だろう?」


「わ、私は・・・・。」


「なんか水戸らしくないな。歯切れが悪い。


要するに、自分がどうしたいかだよ。


お前の人生だろ?他に誰が決めるの?」


「私は、この仕事が好き。本当は辞めたくない。」


「じゃ、決まり。彼氏に仕事続けたい、って言えばいいだけの話だ。」


佐久間が笑った。


今までのどんな笑顔よりも素敵だった。


私はなんだか、ドキドキしてしまった。


なんでドキドキするんだよ。私の彼は、敦さんだろ。


なんか、今日の佐久間、かっこいい。


次の日、敦さんに仕事を続けたいという旨を伝えたけど


話は平行線を辿った。


敦さんが、私が家に居ることにこだわり続けるのは


自分が幼い頃、母がいつも仕事に追われ忙しくて


寂しい思いをしたから、だそうだ。


子供にはそんな思いをして欲しくないということだった。


私はやはり、仕事を続けたい。


二人の間に少し溝ができてしまった。


そして、あろうことか、私はあの佐久間に相談した日から


佐久間の姿ばかり目で追ってしまうのだ。


これはいったい、どうしたことだ。


私、どうかしてる?

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