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第五話 ライバル店グッドライフとの攻防

その日は、店長がいつもにも増して不機嫌だった。


「今日の店長、二割増しくらいの仏頂面っすね。」


パートの藤本が言ってきた。


藤本は大柄で太めで、一日の50%が無駄話でできている。


「原因はこれだろう。」


休憩室のテーブルに1枚のデカデカとしたチラシを、主任の梶原が投げてきた。


「今日からグランドオープン、しかも、うちのすぐ近所。」


「これ、グッドライフじゃないっすか!大手じゃん!うちを潰しにきたー!」


私は場の空気を読めない。


脳みそで思っていることが、すぐ口から流れ出てしまうのだ。


「マジでヤバいっすね。」


藤本も言った。


「今日は客、全部持ってかれるぞ。」


主任の表情が曇る。


「大丈夫ですよ!だって、グッドライフとはうち、毛色が違うじゃないですか!


グッドライフと言えば、インテリア系でしょ?うちは、ハード系。


チェンソーや電動ドリルをじゃんじゃん売ればいいんですよ!」


私の能天気な発言に主任はため息をついた。


「じゃあ、水戸は普段チェンソーやドリルを買う?」


「・・・・・いいえ。あ、でもうちは、アフターもしっかりしてるし。


修理なら、矢口くんがバリバリ出来るじゃないですか!」


「ぜんぜん答えになってないけど。」


「うっ・・・・」


わがナイス菅井店に、暗たんたる雲が翳ってきた。



その日の店の売り上げは、その月の最低だった。


しかも、その後も不調は続き、さらに悲劇は襲う。


なんと、近所に、もう一軒、大型電気店までが出店してきたのだ。


商品のラインナップは当然、ホームセンターなどより充実している。


店長は頭を抱えた。


「うちも負けないように、何かイベントをやらなければ。」


店長は本部に提案書を出し、バイヤーに問屋に働きかけてもらい


特売目玉商品の値段交渉を依頼した。


「よし、調査に出かけるぞ。」


店長が副店長を引き連れ、グッドライフに密かに探りを入れることにした。


「グッドライフより、安くてよいものを、お客様に提供するんだ。」


店長はそう息をまいて、出かけて行った。


その日の午後、店長と副店長は意気消沈してスパイから帰ってきた。


「安い、安すぎる。うちであの値段に対抗できる気がしない。」


珍しく弱気になっていた。


そんなおり、あるお客さんが鼻息荒く、うちの店をたずねてきた。


「あのグッドライフって店、サービス悪いよー。あそこで買った商品なのにさ、


部品を取り寄せられないって言うんだよ。ナイスさんだったら取り寄せてくれるんじゃ


ないですかねーなんて言うんだよ。だからこっちに来たよ。


あんなサービスの悪い店、二度と行かないからな。」


そうだ、うちのモットーは、可能な限り、お取り寄せをいたします。


サービス第一、お客様の立場に立って考えるがモットーなのだ。


「もちろん、当店でお取り寄せいたします。当店では、アフターもお任せください。


技術者が常駐しておりますので、修理もすぐに対応できますよ。」


私は普段しない、飛び切りの笑顔をお客さんに振りまいたのだ。


その後、グッドライフのグランドオープンセールが終わり、


徐々にお客さんの足もこちらに戻ってきた。


「グッドライフ、安いのは最初だけだったなー。


しかも、やたら人が多くてほとんど商品が見れなかったよ。


それに比べてナイスは広くて、専門的な物も置いてるからいいね。


わしら、年寄りってのはね、こだわりがあるから。


店員さんのクオリティーも高いし、やっぱこっちのが落ち着くね。」


そんな声を聞けて、私は嬉しくなった。


徐々に客足も元に戻ってきて、つぶれるかもしれないという懸念は


杞憂に終わった気がする。


ぼんやりそんなことを考えていると、店内入り口から


これ見よがしにグッドライフの制服と見られる服を着た男性が二名


入店してきたのだ。


ほー、堂々と制服を着てくるとは、いい根性してるじゃんか。


スパイなんて姑息な真似しやがって。



あれ?待てよ?



そう言えば、うちもスパイが二名、偵察に行ったのか。


お互い様ってとこか。


さぁ、グッドライフさん、今度はどう出てくる?


楽しみにしているよ。


かかってこいや。

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