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第四話 モンスター・モンスター・モンスター

ある意味、アッガイを着せたことを後悔させた私


水戸奈津子は、朝から窮地に立たされていた。


「おたくで買った扇風機ね、不良品じゃない?


傷があるのよ。」


朝からクレームの電話だ。


「さようでございますか。もしよろしければ、レシートと一緒に


お持ちいただけませんでしょうか?状態を見させていただけたらと思います。」


「えー、不良品なのに、私が持っていくの?取りにいらしてよ。」


「申し訳ございません。ただいま人員が不足しておりまして。


お伺いできる者がおりませんので。いつでも結構ですから。」


「わかったわ。あとで主人が帰ったら持って行くわ。」


そう言いながらも年配のお客さんは30分後に持ってきた。


「つい最近買ったから、箱も持ってきたわ。返品できるんでしょ?」


最初から決めてかかってる。


箱を開けてみて、驚いた。


なんと、箱の内側に、収納時の図が、下手くそな絵でマジックで書いてあるのだ。


まぁ、不良品ならいたしかたない、そう思い確認すると、表面上なんら


傷もなく、テストしたら問題なく回る。


「あのー、どのあたりが、不良なのでしょうか?」


そう言うと、不愉快そうに顔をしかめた。


「よく見てよ。その羽を全部ばらして、内側よ。裏側の塗料が少しハゲてるでしょ?


これがもし剥がれて、うちの孫の目に入ったらどうするの?」


羽を外して、よく見るとほんの1ミリ程度、塗料が剥げている。


私は意味がわからなかった。どうやったらここの塗料がわざわざ剥げて


偶然お孫さんの目に入るのだろう?


それよりは、孫が扇風機の網目に指を突っ込むほうの心配のほうが先だろう。


「メーカーに原因のほうを聞きまして、ご返答いたします。


とりあえず、お預かりしてよろしいですか?」


私の判断ではどうにもならず、そう切り出した。


「えー、不良品じゃない。すぐ返品できないの?」


「申し訳ございません。機能に問題ないかぎり、ご要望にすぐにお応えできません。


一時お預かりさせていただきます。」


私は断固とした態度で譲らなかった。


何でも思い通りになると思うなよ。


その日は後日、メーカーに問い合わせ、お知らせすることを約束すると


シブシブ、お客さんは帰って行った。


メーカーに問い合わせると、その裏のカバーの傷は、塗装のときに


オートメーションでその部分を掴むため、やむを得ず塗料が乗らない部分だ


との説明だった。


その旨をお客さんに伝えたが、納得してもらえない。


困った私は、副店長に相談した。


「それは、たぶんよそで安い商品があったのを見かけたので、


うちのを返品して、そのお金でその安いほうを買おうとしてるんよ。


近所の電気店で、この前激安の扇風機が売り出しに出てたからね。


ガツンと言ってやれ、水戸。」


いやいや、ガツンと言うのは、上司の仕事でしょう!


クソー、薄情者ー!


私はヤケクソで、お客さんにやはり返品は無理だと説明した。


それでも、ああだこうだとゴネるので


「ああ、そうですか。その扇風機に傷があるのは、メーカーの責任ですよね?


当店で売っているものも皆同じところに傷がありますから。


箱に何も書いていない状態であれば、当店で返品をお受けしてもかまわないのですが


当店といたしましても、中古品をお客様に提供するわけには参りません。


当店で、もう一度再販できる状態であれば返品はお受けできますが、今回は


そういうわけでもありません。



もしご納得いただけないのでしたら、ここはメーカーに相談されてはいかがでしょう?


サポートセンターの電話番号をお教えしますね。」


と無理やり、サポートセンターの電話番号を教えて、預かっている扇風機を


取りに来るように伝えた。あくまで返品には応じません、と答えた。


文句あるんならこいや!いつでも受けて立つぞ、このやろー。


すると、ようやく諦めてくれたようで、後日取りにくる、とのことだった。


何でもゴリ押しすればどうにかなるってもんじゃないぞ!


「水戸ちゃん、相変わらず鼻息荒いねえ。お嫁にいけないよ?」


同僚の佐久間がヘラヘラしている。


「ほっとけ!」


私がかみつくと、


「おーこわ。アッガイこわーい。ゲロ吐いちゃうー。」


そう言いながら遠ざかった。



もうそれは言わないで。


せっかく忘れていたのに!



次の日も私はたぶん、モンスターに食われそうになるのだ。


食われてたまるか。


明日も生きてやる!

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