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紅蓮誠の現代ダンジョンーダンジョンが出来て100年ー  作者: ギャボ
## 【第1章 始まりのスライム・ダンジョン】(1~25話)
9/10

第9話 家族会議、そして決意

3話目

# 第9話 家族会議、そして決意


グラファイト事件から一週間が経った。溶けたリビングの修理も終わり、紅蓮家にはようやく日常が戻ってきた。しかし、この一週間で家族の関係は大きく変わっていた。


「さて」大悟がコーヒーを飲みながら切り出した。「改めて、きちんと話し合おう」


夕食後のリビングに、家族4人が集まっていた。誠はこの日を待っていた。全てを正直に話し、家族の本当の気持ちを聞く時が来たのだ。


「まず、僕から謝りたいことがあります」誠が口を開いた。「ダンジョンのことを隠していて、本当にすみませんでした」


「謝る必要はないよ」真弓が優しく言った。「あなたなりに考えてのことでしょう?」


「でも、結果として危険な目に遭わせてしまった」


大悟が腕を組んだ。「確かに危険だった。だが、結果として家族全員で乗り越えることができた。それが重要だ」


莉子が兄の肩に手を置いた。「お兄ちゃんが一人で頑張ってたこと、私たちも知らなくてごめんね」


誠は家族の理解に、改めて感謝の気持ちでいっぱいになった。


「それで」大悟が本題に入った。「今後、俺たちはどう関わればいいんだ?」


「実は」誠が資料を取り出した。「アメジストさんから、家族チームでの活動を提案されています」


資料には「紅蓮ファミリー・ダンジョン研究プロジェクト」と書かれていた。


「ダンジョンマスター一家として、政府の研究に協力してほしいという内容です」


真弓が資料を読みながら言った。「私の化学知識も活かせそうね」


「お父さんの技術力も必要だと思います」誠が父を見つめた。「ダンジョンの設備管理や安全対策で」


大悟は少し考えてから答えた。「正直に言うと、息子がそんな重要な仕事をしているなんて思わなかった。でも、自衛隊時代の経験が役立つなら、喜んで協力する」


「本当ですか?」


「ああ。ただし、条件がある」


「条件?」


「安全第一。どんなに面白い研究でも、家族の誰かが危険にさらされるような真似はしない。それが絶対条件だ」


誠は力強く頷いた。「はい、約束します」


真弓も発言した。「私も参加したいわ。魔力の化学的性質なんて、とても興味深い研究テーマですもの」


「お母さんの知識があれば、きっと新しい発見があると思います」


莉子が手を上げた。「私はまだ中学生だけど、何かできることある?」


「もちろん」誠が妹の頭を撫でた。「君にはモンスターとのコミュニケーションの才能がある。それはとても貴重な能力なんだ」


「やった!私も立派な研究者になる!」


大悟が笑った。「まさか一家総出でダンジョン研究をすることになるとは」


「でも」真弓が少し心配そうに言った。「私たちも認定探索者の資格を取る必要があるのよね?」


「はい。でも、アメジストさんによると、ダンジョンマスターの家族には特別な優遇措置があるそうです」


「どんな?」


「筆記試験は免除。実技試験も簡単な内容で済むそうです」


大悟が安心した。「それなら何とかなりそうだな」


「いつ試験があるの?」莉子が尋ねた。


「来月の予定です。それまでに基本的な知識を勉強しておけば大丈夫だと思います」


真弓が提案した。「それなら、毎晩少しずつ勉強会をしましょう。家族みんなで」


「いいね」大悟が同意した。「俺も新しいことを学ぶのは久しぶりだ」


誠は感動していた。家族全員が自分の夢を支援してくれる。こんなに幸せなことはない。


「ところで」大悟が質問した。「この『紅蓮探険隊』っていう名前は?」


「あ、それは僕が勝手に考えた名前です」誠が照れた。「家族でチームを組むなら、カッコいい名前があった方がいいかなと思って」


「紅蓮探険隊…悪くないね」真弓が微笑んだ。


「私、この名前気に入った!」莉子が興奮した。


大悟も頷いた。「よし、それなら正式に『紅蓮探険隊』として活動開始だ」


その夜、家族は具体的な役割分担を決めた。


誠:ダンジョンマスター兼隊長

大悟:技術・安全管理担当

真弓:魔力分析・化学担当

莉子:モンスターコミュニケーション担当


「バランスの取れたチームですね」真弓が満足そうに言った。


「でも」大悟が付け加えた。「お互いの専門分野を尊重して、無理な指示は出さない。チームワークが一番大切だ」


「そうですね」誠が同意した。「僕はまだ15歳だし、みんなから学ぶことがたくさんあります」


翌日から、紅蓮家の生活は大きく変わった。朝食前に30分、夕食後に1時間の勉強会が日課となった。


「魔力の基本単位はマナ。1マナは約100ジュールに相当する」真弓が教科書を読み上げた。


「ジュールなら分かりやすいな」大悟が反応した。「工学でよく使う単位だ」


「お父さんの技術的な視点と、お母さんの化学知識があれば、ダンジョンの仕組みをもっと深く理解できそうです」誠が感心した。


莉子は自分なりにモンスター図鑑を作り始めていた。「スライムさんは、優しく話しかけると喜ぶ。大きな音は苦手」


「いい観察眼だね」誠が妹を褒めた。


一週間後、アメジストが家族の様子を見に来た。


「皆さん、順調に準備が進んでいるようですね」


「おかげさまで」大悟が答えた。「家族で勉強するのは、思った以上に楽しいものです」


「特にお父様の技術的なアプローチは、我々にとっても新鮮です」アメジストが評価した。「ダンジョンを工学的に分析する視点は、これまでにない発見をもたらすかもしれません」


真弓も嬉しそうだった。「魔力の化学的性質についても、まだまだ未解明の部分が多いんですね」


「はい。だからこそ、奥様のような専門家の参加を期待しているんです」


莉子が手を上げた。「私のモンスター図鑑も見てください!」


アメジストは莉子の手作り図鑑を丁寧に見てくれた。「素晴らしい観察記録ですね。特にスライムの感情表現についての分析は、専門書にも載っていない発見です」


「本当に?」莉子が目を輝かせた。


「ええ。お嬢さんの観察力は、将来の研究に大いに役立つと思います」


誠は家族がそれぞれ評価されているのを見て、改めて「紅蓮探険隊」の可能性を感じた。


「ところで」アメジストが別の話題を切り出した。「来月の認定試験の日程が決まりました」


「いつですか?」大悟が尋ねた。


「来月15日の土曜日です。ご家族全員、同じ日に受験していただけます」


「同じ日なら安心ですね」真弓が言った。


「はい。しかも、ダンジョンマスター候補者の家族ということで、特別に誠さんのダンジョンを使った実技試験も可能です」


「僕のダンジョンで?」誠が驚いた。


「慣れ親しんだ環境の方が、皆さんの実力を正確に測定できると思います」


家族は顔を見合わせて頷いた。


「それなら、ぜひお願いします」大悟が代表して答えた。


試験まで残り3週間。紅蓮家の勉強会はさらに本格化した。


「ダンジョン内での緊急事態対応について」大悟が自衛隊時代の経験を交えて説明した。「まず状況把握、次に安全確保、そして対策実行。この順番を守ることが重要だ」


「化学物質の取り扱いも同様ね」真弓が付け加えた。「魔力結晶の分析では、安全な手順を守らないと事故につながる」


誠は両親の専門知識の深さに改めて感動した。「お父さんとお母さんがいれば、どんな困難も乗り越えられそうです」


「でも」大悟が息子の肩に手を置いた。「一番頼りになるのは、お前のダンジョンマスターとしての直感だ。機械や化学では測れない、生き物としての感覚を大切にしろ」


「はい」


莉子も成長していた。「スライムさんたちの気持ちが、なんとなく分かるようになってきた」


「どんな風に?」誠が興味深く尋ねた。


「嬉しい時はぷるぷる震えて、悲しい時は動きが鈍くなる。怒った時は…まだよく分からないけど」


「すごいね。僕も最初はそんな風に覚えていったんだ」


試験の一週間前、家族は最終確認を兼ねて、全員でダンジョンに入った。両親がダンジョンに入るのは、グラファイト事件以来2回目だった。


「改めて見ると、本当によくできているな」大悟が感心した。


「設備の配置も合理的ですし、安全対策も十分考えられています」真弓も評価した。


第2層では、スライムたちが家族全員を歓迎してくれた。グラファイト事件の時よりも、明らかに懐いている。


「みんな、私たちを家族だと思ってくれているのね」真弓が微笑んだ。


「そうだと思います」誠が答えた。「ダンジョンは、そこにいる人の気持ちを敏感に感じ取るんです」


莉子がスライムたちと遊びながら言った。「みんな、すごく幸せそう」


「家族みんなでいるからかもしれませんね」


大悟が息子を見つめた。「誠、お前は本当にダンジョンマスターに向いている。だが、一人で全てを背負う必要はない。俺たちがついているんだから」


「ありがとうございます、お父さん」


「これからは『紅蓮探険隊』として、みんなで力を合わせよう」


「はい!」


試験前夜、家族は最後の家族会議を開いた。


「明日は緊張するかもしれませんが」誠が切り出した。「家族みんなで受ける試験なので、きっと大丈夫だと思います」


「そうね」真弓が同意した。「これまでの勉強会で、十分に準備できたと思う」


大悟が付け加えた。「結果がどうであれ、俺たちは家族だ。お互いを支え合っていこう」


「うん!」莉子が元気よく答えた。


「それでは」誠が立ち上がった。「『紅蓮探険隊』の正式結成を宣言します!」


「おー!」家族全員が拳を突き上げた。


こうして、紅蓮家は新しいステージへと向かう準備を整えた。個人の夢だったダンジョンマスターへの道が、いつの間にか家族全員の冒険になっていた。


明日の試験を通過すれば、本格的な「紅蓮探険隊」としての活動が始まる。15歳の少年の小さな発見が、家族の絆をより深め、新しい可能性を切り開こうとしていた。

実はDジェネシスのスピンオフも作ってみている。世界感が同じで、登場人物は紅蓮誠なんの許可も取っていないのでUpするか?迷っています。アドバイスを受け付けます。


歌を作りました良かったら聞いて下さい。


https://z9hksv.csb.app/

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