卒業式と緑の滴
5話試しにUpします。人気が出そうだったらのんびり作ろうと思います
### 卒業式と緑の滴
2050年3月12日、東京は新たな春の訪れを告げる温かい日差しに包まれていた。卒業式を控えた紅蓮誠は、学校の教室で友達と笑い合いながら、心のどこかに不安を感じていた。彼の机の上には、卒業証書と一緒にこれからの未来に向けた期待が詰まっていたが、手元にある一つの緑色の滴が全てを変えてしまうとは、誰も予想していなかった。
その滴は、彼の机の袖にもたれかかっているうちに、突然、ぴちんと音を立てて落下した。それを見た瞬間、誠の心臓が大きく跳ねた。滴が机に触れた瞬間、眩い光に包まれ、彼の周囲の景色は歪んでゆく。やがて彼は、目の前に現れた不思議な緑色のスライム状の迷宮に吸い込まれた。
「ここは…どこだ?」誠は周りを見回した。彼の立っているところは、まるで異次元の世界にいるようだった。周囲は揺らめく緑色の光に満ち、壁は柔らかなスライムのように変化し、地面はまるで生きているかのように波打っていた。
「これは夢だろうか…でも、こんなにリアルな夢は初めてだ。」彼は不安と好奇心の入り混じった気持ちで一歩踏み出した。その瞬間、近くの壁が浅い声で響いた。「選ばれし者よ、何を求めるか?」
誠は思考をめぐらせた。この迷宮はただの夢ではない。彼はそれを感じていた。家族にも友人にもこのことを言えない。しかし、彼だけではなく、この世界には他にも何か特別な存在がいるはずだ。
迷宮を進むと、裏切りと秘密がひしめいているのが分かった。彼は不安を押し殺し、さらに進むことにした。「きっと、出口はある…」
その頃、彼の妹・紅蓮莉子は、誠が帰ってこないことを気にしていた。彼女もまた、兄が大好きで、彼のことを守りたいと思っていた。しかし、その思いはすぐにちぎれた。母・真弓と父・大悟は、彼のことを気にかけながらも、忙しい日常に追われていた。
誠はこの迷宮の中で、自分の内面的な葛藤や、兄妹の絆を考えるようになっていた。果たして本当にこの場所は、誠が卒業式を迎えるための試練となるのだろうか。彼は決意を固めた。「妹を、家族を、守らなければ。」
迷宮の奥深くに進むにつれて、彼は自分自身の力を試される場面に遭遇する。やがて、彼はその中で出会った不思議な存在たちと共に、迷宮の最深部へと向かうこととなった。
果たしてこの冒険が、2940年の枠を超えて、兄弟の絆をどのように変化させるのだろうか。そして彼は、無事に現実の世界に戻れるのだろうか。卒業式の日、彼が見つける真実とは――それは、彼の心の中での成長と、家族への新たな理解が待つ道標であった。