ランチタイムは大切な時間
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
「お待たせしました、激辛四川風麻婆豆腐です」
料理を運んできてくれたウェイターさんがフタを取ると、煮える油と花椒の香りが立ちのぼる。
いやが上にも食欲を増す暴力的なその香り!
思わず顔がニヤケてしまう。
向かいに座った同期の歌保ちゃんも、目を細めてうれしそうだ。
「ありがと~!ではいただきまーす!」
「頂きます♪」
ちゃんと手を合わせてから、小ぶりな土鍋の中でフツフツと煮えたぎる赤黒いのをレンゲですくい、まずはそのままおクチへと。
ご飯にのせるのはふたくち目からって決めてるの。
「熱っ!!辛っ!!」
「熱そうね、ふーふー」
ガッつく私と違い、歌保ちゃんはゆっくりと冷ましながらお豆腐とご飯を上品に口へとはこぶ。
美人って何をしてても絵になるな~
ちょっと羨ましく思いながらも、しっかりとエネルギー補給につとめる私。
太る? そんな事どーでもいいの!!
食べなきゃ体がもちませーん!
.......
.....
...
ここは会社の近くにあるちょっと良いホテルの一階。
その片隅にある小さな中華レストランだ。
メインのおかずを選んだら、ご飯ととろみの付いた玉子スープ、それにサラダと搾菜が食べ放題。
さらに食後のコーヒーまで付いてるとあって、ランチタイムにはいつも大勢のお客でごったがえしている。
今日のおかずは「胡麻ダレたっぷり棒々鶏」か「激辛四川風麻婆豆腐」。
おしとやかな歌保ちゃんも、今日はガッツリ麻婆豆腐をチョイス、少し意外だわ。
「ちょっとご飯のお代わりを.....」
「はぁい、いってらっしゃーい」
食べ放題関係はお店の片隅にセルフサービスコーナーがある。
いちいち来るのが面倒なので、ご飯を大盛に盛る。
で、小皿に搾菜を盛り盛り。
そんな私を見て、スーツにネクタイのどっかのサラリーマンがギョッとした顔。
はい、このぐらいペロリですが.......それが何か???
あとでサラダもお代わりしようっと♪
.......
.....
...
席に戻る。
あ、しまった!
ご飯を盛り過ぎて麻婆豆腐がのらないや(苦笑)
仕方がないので交互にモグモグする。
時々レンゲをおはしに持ち替えて、細切りの搾菜をコリコリ。
「ショウコちゃん、今日も忙しそうね?」
「分かる?.......まぁ分かっちゃうか、電話であんだけ大声出してればねぇ.......」
「私は事務処理だけで宇宙人さん達と直接お話することはないけど、ショウコちゃんのお仕事っていわゆる最前線だものねぇ」
「そ、そうなのよぉ.......しかも上司があの課長だからさぁ」
「日来課長の部署はいつも大変そうね?せめてたくさん食べて元気つけてね」
「うぅぅ......歌保ちゃんってば優しい......お嫁さんにほちぃよぉ......」
しょうもないことを言いつつ、搾菜で最後の一杯をかき込む。
熱いのと辛いので汗が出てきた。
あとでお化粧ちゃんと直しておかないと(汗)
「お先にご馳走様。さてと、ショウコちゃんもコーヒー飲むでしょ?ついでにもらってくるわね」
「ムグムグ.....ふみまへぇん!!」
さすがに歌保ちゃんは三杯目は食べないみたい。
そりゃそうか!
.......
.....
...
「ふうっ!ごちそうさまあ!!」
「はいご馳走様。お腹一杯になった?」
「うんっ!コーヒーありがとね」
二人して食後のアイスコーヒーでひりつく舌を休ませる。
歌保ちゃんはフレッシュだけをたっぷり入れ、私はフレッシュとガムシロをダブルで。
と、歌保ちゃんがバッグから小さな瓶を取り出し、手のひらに錠剤をふた粒のせ、お冷やでゴクンと飲み込んだ。
ちらっとラベルが見える。
あれ多分、会社の取引先だ。
「ん?......ああこれね。このお薬、ショウコちゃんが作ったやつじゃない?」
「どれどれちょっといい?」
瓶を見せてもらう。
成分を確認する。
「うん、これ多分そうだね。正確に言うと、私が関わってるのは一次加工までだけど」
「そうなの?」
「うん、最終調整はこのラベルの製薬会社がやってるから」
「でもこれ、凄く良いのよ。さすがはショウコちゃんね」
「そ、そお?」
「うんっ!!」
美人の歌保ちゃんがにっこりと笑う。
きらきらしたお目々と、その破壊力のある笑顔がカワイイ!
なんか照れるなぁ.....
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